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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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役に立つ娘

ずっと暗かったミラの表情に、笑顔が戻った。

アルベルトとの訓練は厳しいものだったが、ひたすら悪意をぶつけられるだけの家族との時間よりもずっと楽しいものだった。


一日中訓練をしていたい、とミラは思ったが、そうもいかない。

アルベルトも戦線に出たり他の魔法使い候補者を探したりと忙しい。

それでもミラの上達を嬉しく思うアルベルトは、できるだけミラの面倒を見るようにした。


アルベルトが来るとミラは満面の笑みを浮かべ、熱心に訓練をするのでどんどん魔法も上達していった。


だが、異母兄姉のリカルドとローズはそれが面白くなかった。

「平民の子」と馬鹿にしてきた相手が、英雄になりかねないのだ。


***


ミラが訓練を始めて1年近く経った時、その事件は起こった。

ミラは、7歳になっていた。


ミラが魔法を使えることが気に入らないリカルドとローズは、ミラの実母の形見のペンダントを奪って木にかけた。

ミラにとって何より大事なもの、それをミラの身長よりはるかに高い樹木にかけて取れなくしたのだ。


子供の残酷で未熟ないたずらだったが、ミラはかなり魔法を使えるようになっていた。

その樹木の枝に魔法を当て、ペンダントがかかっている枝を落とした。


何ともないようにその枝からペンダントを取り戻そうとしているミラを見て、リカルドは頭に血が上った。

そして、そのペンダントを力づくで奪って走り出した。


「調子に乗ってるんじゃねえよ!」


ミラが悲しんでいる顔が見たくて、リカルドは罵声を浴びせるために振り返った。

その時、バランスを崩して足がもつれた。

リカルドは転倒して坂を転がり、足首がおかしな方向に曲がった。


12歳になる公爵令息のリカルドは必死で涙をこらえたが、痛みに顔を歪める。

喚きたいほどに痛いが、ミラもローズも見ているので声を押し殺す。


そこにアルベルトが訪れた。

ミラがとても大事にしているペンダントーーそれが母の形見だとまでは聞いていないがーーをリカルドが持っている時点で、アルベルトは大体のことを理解した。


「リカルド様とローズ様が、ミラ様をいじめているのだろう」


反撃する方法を教えた方がいいのだろうか、などと考えながらアルベルトがミラに近づいた時、ミラの手が緑色に光っているのを見た。

それは……治癒の光だった。


「まさか、ミラ様は攻撃魔法だけでなく治癒魔法まで……」


この世界の魔法は攻撃魔法と治癒魔法しかない。

そして、治癒魔法を使える者は攻撃魔法を使える者よりはるかに少ないのだ。

何故なら、その力は心が美しい者にしか宿らないから。


「自分をいじめた者が怪我をしていることにさえ心を痛めておられるのか……」


アルベルトはその心根の美しさに感動しつつも、この悪意に満ちた家の中でそれを発揮させるべきかどうかを悩んだ。

だが、それは自分で考えた方が良いと思い直して、アルベルトはミラに言った。


「ミラ、その手をリカルド様の怪我にかざして『レストア』と言ってごらん」


足首を痛めて動けずにいるリカルドのところに、ミラは小走りに駆けていった。

そして「レストア」と小さく言った。


すると、リカルドの足首に緑色の光が灯り、見る見る痛みが引いていった。

リカルドは、痛みがなくなるとペンダントをミラに渡し、礼も言わずに走り去った。


その日の夜、アルベルトからミラが治癒魔法まで習得したことを聞くと、ダモン・タッカー公爵はにやりと微笑んだ。

そして「もう使えるだろう」と言い、アルベルトにこれまでの授業料をかなりの高額で払った。


***


それからは、ミラのもとに父であるダモン・タッカー公爵が笑顔で訪れるようになった。

魔法の力を見せるように言い、その成果を褒めた。


それと同時に、父は魔法を乱用してはいけないと諭した。

「この力は悪用もできるから、私が指示した時以外は使ってはいけないよ」


そして、さらなる呪いをミラにかけた。


「特に治癒魔法は、自分にかけてはいけない。この魔法は他人にかければ薬になるけど、自分にかけると毒になるんだ」


それを言い聞かせた後、父はこう言った。


「明日の戦に一緒に行こう」


7歳のミラは戦の意味こそ知っていたが、なぜ自分がそこに行くのかが分からなかった。

だが、父が笑顔で誘ってくれたのが嬉しかった。

今まで、家族が笑顔を自分に向けてくれたことなどなかったのだ。


そこでミラは、父の言うとおりに魔法を放った。


「次はあっちの方角に全力で攻撃魔法を放て!」

「この騎士に治癒魔法を施せ!」


息をつく間もないほど、ミラは魔法を使い続けた。

だが、魔法を使った後は父が笑顔で「よくやった」と言ってくれた。

髪をクシャッとして微笑みかけてもらうと、ミラは少しでも自分を受け入れてもらえたように思えた。


完全に自分が家族になれたわけではないことは理解している。

それでも、今までより多少はマシだと思えた。


家族で食卓を共にする時も、以前のような地獄ではなかった。

もちろん実母のエリーと過ごした幸せな時間とは比べようもない。

だが、治癒魔法を使ってからリカルドからの罵声が減った。

そして戦に出るようになってから、マリアンヌとローズもあまりうるさく言わなくなった。


アルベルトが来なくなったことは寂しかったが、多少落ち着いた日々をミラは送っていた。


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