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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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ライバル

ミラが父親と話しに行くと、ローズとアンナは二人きりでミラの部屋に残されることになった。

以前に二人でそりに乗ったことはあるが、まだミラを介して接触がある程度の二人である。


だからと言って、すぐにここを出て行くのも何となく気が引ける。

何より、二人とも好奇心の強い性格だ。


ここは貴族であるローズの方が、先に口を開いた。


「アンナのお父さんは、どんな仕事をしているの?」


「私の父は農民です。皆様が食べる穀物を作ってるんだと、胸を張っています」


ローズが、このような立場の者と話すことはない。

だから、とても興味深かった。


自分が食べているものを誰がどんな風に作っているのかなんて、ローズは気にしたことがなかったのだ。

虫がつかないように気をつけたり、夏の暑さや台風の時の乗り越え方など、ローズが知らないことをアンナは語った。

ローズは、目を輝かせてアンナの話に聞き入った。


「貴族様はどんな日常を送っていられるのですか?」


少し語り疲れた頃、アンナは何気なく尋ねた。

アンナの語る農民の苦労や頑張りを聞くと、ローズは何となく恥ずかしく思えた。

自分はそんなに一生懸命生きているのだろうかと。


「ダンスの練習や、話術や算術、領地の運営のための勉強とかね……」


だが、アンナも素直に瞳を輝かせた。


「話術や算術は最近私も習ってるんですよ!先生の仰ることは難しいんですけど、ミラ様が後でわかりやすくかみ砕いて教えてくださって……。ダンスや領地運営とか、貴族様は私たちとは違うことを覚えないといけないんですねえ」


「私もミラと一緒に勉強したい……」とローズの中に嫉妬の炎が燃え上がりかけた時、ミラが帰ってきた。


その表情を見ただけで、ミラが「話してよかった」と思っていることがわかる。

「生まれてきてくれてありがとう」というカシウス侯爵の言葉は、ミラを満面の笑みにしていた。


「ミーちゃん、良かったね」


詳しいことを聞く前に、ローズはそう言ってミラを抱き締めた。

アンナも、涙ぐみながらミラを抱き締める。


それが落ち着いた時、三人はミラのベッドでだべり始めた。


「ミーちゃん、私も生まれてきてくれてありがとうって言いたいわ」

「私なんか、ミラ様が生まれてなかったらもう命を落としてますよ」

「そう言ってくれると嬉しい。私も、生まれてきて良かったって思える」


そんな会話を続けながら、ミラは少し気になっていたことをローズに問いかける。


「ねえ、ローちゃんってノエル兄さまが好きなの?」


恋愛経験のない10歳の女の子の無邪気な問いに、ローズは顔を真っ赤にした。


「な、な、な、何でそんなことを……?」


「だって前の記念式典の時、兄さま以外に興味なさそうだったから」


「それは……身近な男性のノエルと他の殿方を比べただけで……」


「それで誰よりもノエル兄さまへの評価が高かったじゃない?」


「あそこにいた殿方がその、あれだっただけで……ノエル様は……その、あの……」


しどろもどろになっているローズを、アンナが冷やかす。


「お似合いじゃないですか。ヒューヒュー♪」


「もう!」


そしてローズがアンナに枕を投げる。

ただここはミラの寝室なので、枕投げをするほど枕はない。

アンナが枕を投げ返し、ローズが反撃をしようとしたところにアンナが襲い掛かる。


「私も混ぜてよ!」


とミラもローズをくすぐり、三人は楽しくじゃれあった。


それがひと段落した時、ローズがアンナに言った。


「アンナ、ミラやカシウス侯爵は優しいからそれでもいいけど、他の貴族はこうじゃないわよ」


「貴族様に対する礼儀の話ですか?


「礼儀というか、平民を人間と思っていないようなのも少なくないってこと。使用人が咳をしただけで鞭で打ったり、スープをこぼしただけで牢屋に入れたりする貴族を見てきたわ。ここにいる時は大丈夫でも、他の貴族がいる時は気をつけなさい」


アンナが物心ついた時には、命は平等だと思うようになったカシウス侯爵が領地を治めていたため、貴族の差別意識に直接さらされることはなかった。

自分たちより偉いとは思っているし、話に聞くことはあったが、そこまで理不尽な存在だとは思っていなかった。


アンナは、少し青くなって「も、申し訳……」


と謝りそうになったが、それをかき消すようにミラが言った。


「だからアンナはずっと私のそばにいてね!私はそんなことしないし、ローちゃんもしないから!」


「あら、私に失礼なことをしたらどうなるかわからないわよ?」


「がさつだの何だのと散々失礼なこと言われて怒らなかったのに、今さら何言ってんの?アンナ、私やローちゃんの前では何も気を使わなくていいからね。他の貴族がいる時は、ごめんだけど気をつけてね」


「あ、あれはミーちゃんのことを想って……。今後は失礼は許しませんことよ!」


「慣れないこと言ってるから言葉遣いが不自然だよ、ローちゃん」


そこにアンナが本気なのか慇懃無礼なのかわからない言葉と共に頭を下げる。


「ローズ様、これまでのご無礼、お許しくださいませ」


「気持ち悪いわね!あんたは今までどおりミラの味方で私のライバルでいたらいいのよ!」


気付けば窓の外は暗くなっていた。

ローズはもともと泊まる予定だったし、アンナもミラの傍を離れようとしない。

三人はそのままミラの寝室で一夜を明かすのであった。


***


その少し後、ラディアート王国では反乱が起こった。

それはダモン・タッカー公爵領の近くだったため、先の戦で多くの功を立てた公爵が討伐をすることになった。


だが、ミラの魔法に頼って勝ってきた公爵は本来それほど戦上手ではない。

反乱軍を攻めあぐねるダモン公爵への評価は、少しずつ落ちていった。



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