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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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前世の記憶Ⅱ~前世の終わり

10歳の誕生日の前日、ミラはいつも以上に不安定になっていた。


「ねえ、明日私の誕生日してくれるんだよね?」


「当たり前でしょう?毎年エドガーさんもヴィオレットさんもローズちゃんもやって来て盛大にやってるじゃないの」


だが、ミラの記憶では自分だけ誕生日を祝ってもらえないことが強く印象付けられている。

そして、そのことを勇気を出して告げたことで「それじゃあお祝いをしないとなあ!」と言ってもらえたのだ。


記憶の中のママが死んでから、誕生日を祝ってもらったことはなかった。

明日は初めての自分の誕生日パーティー。

それなのに、なぜか胸がざわついていた。


それは頭の中に突然流れ込んでくる記憶。

それが何なのか、ミラにはわからない。

それでも、今日のそれは今までよりもミラの感情に影響を与えた。

まるで、何かを暗示するかのように。


記憶の中の自分は、明日の誕生日パーティーを心待ちにしてウキウキして眠った。

だが、今の自分は眠れない。

心臓の鼓動が激しくなり、嫌な予感が全身をまとわりつく。


いつもの特別なベッド。

すぐ近くに父と兄と母がいる(さすがにアンナは別の部屋で寝ている)。

誰かを起こして抱き締めて欲しい。

でも、ミラはじっと我慢をした。

記憶の中のミラは、我慢をすることに慣れていた。。


***


次の日。ローズもやって来て楽しい誕生日パーティーが始まった。

ローズはさっそくアンナに対して「私はミラと誕生日が同じなのよ!」と自慢をしている。


ノエルは、手作りの花冠を渡した。

「不器用なのに、頑張ったのね」とローズが茶化すと、ノエルは真っ赤になった。


ローズからはお揃いのリボンが贈られた。

「着るものに無頓着なローズがよくそんなもの選べたな!」とノエルが言い返す。

式典のドレスも適当に選んでいたのを知っているミラは、その言葉に笑いをかみ殺した。


アンナは、恥ずかしそうに不格好な手作り人形を贈る。

ローズはからかってやろうと思っていたが、本当に恥ずかしそうにしていたので「結構上手だけど、ここの縫い取りをもっと丁寧にすると仕上がりがきれいになるわよ」とアドバイスをした。


もちろんその後、「私のプレゼントの方がミラは嬉しいでしょうけどね!」と高笑いも忘れない。

カシウスから本、クラリスからネックレスが贈られ、ミラは主役として称えられている。


もちろんローズも同じ誕生日だから主役であり、みんなから同様のプレゼントをもらって嬉しそうだ。

ミラも笑顔をたたえているが、少しずつ気持ちが落ち込んでいく。


何故なら、ミラの記憶の中ではその頃魔法で相手の兵士を倒しているからだ。


「そんなことしないで!」


といくら思っても、記憶は変えられない。


誕生日を祝ってくれる言葉も、耳からこぼれ落ちるようになっていく。

ローズとアンナが、そして父と母と兄が、エドガーもヴィオレットもミラを心配する。

このままじゃいけない、とミラは必死に笑おうとする。


しかし……


——————————————————————


記憶の中で、周囲の大人がミラを放置して退却していく。

敵の攻撃がミラを襲い、右脚に火球が命中する。


『やだ、怖いよう、パパ、待って!!!!』

『痛い、痛いよう……』

『嫌だあ、帰って誕生日パーティーしてもらうの……みんなで……パパ……!ママ……』


——————————————————————


ミラは突然泣き叫び、意識を失った。

皆がミラを心配し、ベッドに横たえる。


ローズとアンナは、競うようにミラと手をつなぐ。

そして、お互いとも手をつないだ。


何が起こったのか、誰もわからない。

あわただしく医者が手配された。


ローズもエドガー侯爵も夜通しパーティーをするつもりだったので、当然泊まるつもりだった。

だから、ローズもずっとミラのそばにいられた。


ミラの記憶は、進んでいく。

見知らぬ男に治癒魔法を使う。


いや、見知らぬ男ではない。


「……パパ?」


『僕はもういいから、早く自分に治癒魔法を!』


自分の父親より少し若い外見の男が、自分に必死に語り掛ける。

だが、自分は『自分に治癒魔法かけたら、死んじゃうんだよ……。治癒魔法を使える人は少ないから……知らないのかな……』と思っている。


2~3年前に覆された記憶。それは嘘だった。

自分に治癒魔法を使っていれば……。


その結果は分からない。アンナを治癒した時も、かなり消耗したのだ。

あの状態で、自分を治癒できたかどうか。


そして、今の父親を救えたことは嬉しいことだし誇らしくも思う。

もしカシウス侯爵が亡くなっていたら、今の幸せはなかっただろう。


それでも、黒い答えに辿り着いてしまう。

それは、消すことができない。

ミラの記憶は、繋がった。


「私は……殺されたんだ」


前世ではわからなかった。

幼い時の母しか、愛情をくれなかったから。

愛されたいと願い、役に立ちたいと思った。

役に立つことでしか愛されない、と思い込んでいた。


その結果が……これか。

誕生日を祝ってやると言って戦場に連れ出し、置き去りにした男。

戦場に連れ出されたことは、それまで何回もあった。

そこで自分がやったことも、許されることではないと思う。


だが、なぜあんな希望を持たせたのだ。

記憶の中の自分が、どれだけ誕生日パーティーを楽しみにしていたか。

それを思うだけで、憎しみと悲しみが心を満たしていく。


その希望を、ぬか喜びを与えた男は、前の国交回復10周年記念式典で見た。

ダモン・タッカー公爵……。


涙が、ミラの瞳から滂沱と流れ落ちた。

その手は、ローズとアンナにしっかりと握られていた。


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