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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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国交回復10周年記念式典

記憶の中でただ一人自分を認めてくれていたと思っていた父が嘘をついていた。

このことは、ミラの自我を揺るがしていた。


何を信じていいのかわからない、という気持ちにもなったが、あまりにも周りはミラに優しかった。

自分を受け入れることのない記憶と、幸せで仕方のない現実。


幼い頃はそれを分けて考えることができなかったが、今は何とか別のものだと思うことができる。

侵食されそうになることもあるが、家族やローズの愛に触れると、自分はそんなに虐げられるべき存在だとは思えないのだ。


ただ「平民のくせに」という言葉はなかなか拭えなかった。

ミラは、侯爵家の令嬢なのだ。

へいみん……?

何故そんな罵り方をされるのか。


記憶の中で母が死んだ時、母と一緒にいた温かい部屋から、広くて冷たい部屋に移された。

その時から、平民の子と罵られた。


つまりママは平民だった……?

でも、今のパパは命の重さは同じだと教えてくれる。

やっぱり記憶がおかしい?


ミラは、なかなか記憶と現世の折り合いがつかなかった。

ただ、記憶の方がおかしいと思うことができるようになったことで、それを考える時間は少なくなっていった。

記憶の中には存在しない、本当に自分を愛してくれる人たちとの日々が幸せを感じさせてくれた。


***


ミラが9歳になった時、隣国のラディアート王国との国交回復10周年記念式典が行われることとなった。

これを良い機会として、カシウス侯爵はノエルとミラを社交界デビューさせようと考えた。

式典には両国の多くの貴族が参列する。

そこで自分の子供を披露しようとする貴族は少なくないはずだ。


その話を聞いた時、ノエルもミラも心が躍った。

特にミラは、綺麗に着飾ることが嬉しかった。

ノエルは男の子だし、ローズもお転婆なので動きやすい服装を好む。

だから、なかなか着飾ることがなかったのだ。


その式典に向けて、ドレスを試すことがとても楽しかった。

ノエルはすぐに飽きてしまって、「何でもいいから適当に決めてよ」という態度だったが、ミラはたくさんの服を試着していった。


「どう、かわいい?」


と満面の笑顔で聞いてみても、ノエルはどれを見ても「うん、かわいいよ」と言うだけだった。

実際ノエルは「かわいい~」と思っていたのだが、その違いは分からない。


つまらなくなってローズと一緒に試着をしてみたが、この子もノエル側だった。

当然エドガー・ヴァレンティス侯爵も親友と一緒に子供を社交界にお披露目したかったので、ローズも自分のドレスを決めなくてはいけない。

だが、ローズは「私は何を着てもかわいいから」と無造作にドレスを選ぶ。

本当にそれは、ミラが本気で「かわいい!」と思うドレスだったのでセンスはあるのだが、ドレス選びに熱心さはない。


そしてローズは「ミラも何を着てもかわいいわよ」と言うので、ミラが満足できる相談相手にはなれなかった。

父のカシウス侯爵も頼りにはならないので、結局母のクラリスを引っ張って何十着も試着をし、その感想を心から嬉しそうに聞いていた。


***


式典当日、序盤は多くの貴族が立食パーティーをしたりダンスを踊ったりして親睦を深めた。

そこではミラやノエルと同年代の子供もたくさんいて、子供ははしゃぎつつ大人は粗相のないように気を使う時間が続いた。

それは、ミラにとって楽しい時間だった。

ノエル以外の男の子と触れ合うのはほとんど初めてだったので、ミラとローズははしゃぎ回っていた。


ただ、ミラが「ギラン侯爵家のロジャー様が~、リッチー伯爵家のジョン様が~」などと言っても、ローズは「ノエルより足が短い」「ノエルより顔が長い」などと言うので、あまり話が合わなかった。


そうしているうちに、式典は佳境を迎えた。

そこでは、侯爵家などは式典を見守るモブに過ぎなかった。


大きな舞台には王族や公爵家が立ち並び、カシウス侯爵の家族はそれを階下で見ているだけの存在になった。


両国の王様が握手を交わし、平和を祝う式辞を挙げる。

そこには、立派な威厳を持った者たちが立ち並んでいた。


それぞれに戦を終えた喜びの言葉を紡ぎ合う。

ただ、戦勝国のラディアート王国側の方がやはり大きい顔をしていて、ミラの父が属するロベリア王国は少し肩身が狭いように見えた。


そうして王族の挨拶が終わった後、筆頭公爵家が壇上に姿を現す。

その姿を見た時、ミラの呼吸は激しくなった。


「続いては、ラディアート王国筆頭公爵ダモン・タッカー様からお言葉をいただきます」


その男の声を聞いた時、ミラは肩を激しく上下し、やがて動悸が止まらなくなった。


——記憶の中の父親——


それを確信した時、ミラは意識を失った。


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