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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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今、持っているもの

カシウス侯爵は、以前は勇敢な騎士だった。

前世でミラが死んだ日も、前線で戦っていたために瀕死の重傷を負った。


だがそこでミラという名の少女に救ってもらってから、命の大切さを考えるようになった。

それからすぐに戦が終わったのには、カシウス侯爵が和平を主張したことも多少の影響を与えている。

戦後のカシウス侯爵は、二度と戦が起きないようにと奔走しているのだ。


カシウス侯爵は、自分の子供たちにもその考えを教え込んでいた。

平和は、命は、とても大切なものだと。


それは、この時代の貴族の中では少数派の考えだった。

自分たちと平民の命の重さは違うし、兵士は使い捨てという考えが主流だった。


しかし、ノエルとミラは父親の教えを素直に受け入れた。

母のクラリスも夫の考えに賛同していたので、それを疑う余地もなかった。


***


そんなある日、ミラの記憶が新たな展開を迎えた。

記憶の中の父は、自分を戦に連れて行ったのだ。


自分は父の言うとおりに魔法を放ち、相手の兵士を倒していく。


「そんなことしちゃ駄目!」


いくらそう思っても、記憶の中の自分は父に褒められたい一心で魔法を止めない。

ミラは、自分の行動に恐怖することしかできなかった。


7歳になっているミラは、多少は記憶と現実を分けて考えることができるようになっていた。

それは、恐怖の対象であるローズという名前の少女が自分を受け入れてくれたことも大きい。

記憶の中のローズが何を言っても、「ローちゃんは味方だから」と思えるのだ。


だから、以前ほどおどおどしたり家族を避けたりすることはない。

だが、まだ自分の頭の中にあるものの正体は掴めていない。

そのため、ミラは「自分の中には悪いものがあるんじゃないか」と思ってしまった。


他人の命を何とも思わず魔法を放つ自分が本来の自分の姿なのかもしれない、などと考えてしまう。

両親やノエルやローズと楽しい時間を過ごしていても、ふとした時にその記憶がミラを曇らせる。

周りに心配をかけないように普通を装ってはいるが、一人になると考えずにいられない。


こんなことは、命の大切さを教えてくれる両親やそれを一緒に教わっているノエルに言えるはずもない。

だから、ローズにおずおずと聞いてみた。


「ローちゃん、戦争で人を殺すのは悪いことなのかな?」


「急にどうしたの、ミーちゃん?」


ローズは、自分が『ローちゃん』と呼ばれるのでそれに合わせてミラを『ミーちゃん』と呼ぶようになっている。

「何か私だけ子供っぽい!」などと頬を膨らませて抗議した結果、ミラもミーちゃんと呼ばれることになった。

そのことも、自分を対等に見てくれていると感じられてミラは嬉しかった。

ローズからすれば、ミラのことは対等どころか怪我を治してくれた恩人だと思っているのだが。


「私のパパは命は何より大切だって教えてくれるの。でも、戦争では人を殺すでしょう?」


「そうねえ、確かに人をたくさん殺すことで王様から褒められてご褒美をもらったりするわね」


じゃあ戦争が起こったら私のパパは褒められないのかな、などとミラが考えていると


「でもうちのパパも『もう戦争が起こらないように努力してるんだ』って言ってたし、私たちは女の子なんだから、そんなこと考えなくてもいいんじゃない?」


とローズが言った。そして


「最近時々考え込んでるのはそのこと?また頭の中の人が変なこと言ったの?」


「うん、そんなところ」


ミラは、ローズが自分のことを気にかけてくれていることを知って嬉しく思った。

また、心配かけないように普通を装っていたのにそれがうまくいっていなかったことも反省した。


そして……やっぱり本当の自分を知られることは怖かった。


そんなミラに、ローズは無邪気に話しかける。


「ミーちゃんって色々考えすぎじゃない?」


さらに続ける言葉。


「何か私の二倍くらい生きてるみたいな感じがするよ」


それはある意味核心をついているのだが、ミラ自身もそのことに気づいていなかった。

でも、初めての友だちであるローちゃんが自分のことをたくさん考えてくれていることが嬉しかった。


ローちゃんも、ノエル兄さまも、お父様もお母様もいる。

記憶の中にはなかったものが、今のミラにはたくさんあった。

そう思えることで、ミラは少しずつ自分を、今を好きになれるのだった。


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