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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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ローズとの出会い

それはミラが7歳の誕生日を迎える少し前の話。

カシウス侯爵には、心を許し合える親友がいた。


エドガー・ヴァレンティス侯爵。

爵位も同じなうえ、気も合ったので2人はすぐに打ち解けた。

カシウスもエドガーも同じような時期に結婚したので、家族ぐるみの付き合いになった。


カシウスに子供が生まれた時は、エドガーは自分のことのように喜んで酔いつぶれた。

カシウスの二人目の子供ミラ、そしてエドガーの第一子のローズは奇しくも同じ日に生まれたが、ノエルも含めた三人の物心がつく前にエドガーは仕事で遠方に派遣されてしまった。


その仕事が終わり、また今までのように会えるなとエドガーは手紙を送ってきた。

そして、エドガーはカシウスの家に遊びに来た。

もちろん、妻のヴィオレットと娘のローズを連れて。


忙しいエドガーと社交上手なヴィオレットは、とても賑やかだった。

ノエルとミラは始めは緊張していたが、やがて両親の親友に親近感を抱き始めた。


そんな2人に、エドガーとヴィオレットの娘のローズが近づいてきた。


「ごきげんよう、お二人さん。私はローズ・バレンティスよ。お見知りおきくださいませ」


エドガーとヴィオレットも、カシウスとクラリスに負けない親馬鹿だ。

しかもミラのように前世の記憶に振り回されることもないので、当然のように愛されている。

さらにローズの両親はカシウス夫妻より少し甘いところがあるので、ちょっとわがままだった。


だから、二人を自分の好きな遊びに付き合わせる気満々だったのだ。


だが、ミラはローズという名前を聞いた途端に震えあがってしまった。

記憶の中にあるローズは、自分をいじめ抜いていた姉の名前である。

兄は名前が違っていたから、何とか受け入れることができた。

だが、ローズという名前は……ミラには怖すぎた。


ミラは、ノエルの後ろに隠れた。

そんなミラを見て、ローズは苛立った。


「何なんですの、あなた?私が名乗ったのだからあなたも名乗りなさい!それが常識でしょう!?」


その剣幕が、より一層ミラを委縮させた。


「ごめんね、ミラはいい子なんだけど少し人見知りなんだよ」


ノエルが、ミラを庇って言い訳をする。

そんなノエルに、ローズは好感を抱いた。


「そうですのね、それなら仕方ありませんけど」


そう言ってから、ミラに少しきつめの言葉を贈った。


「私だっていい子ですわよ!」


前世での記憶のローズよりも愛らしい言葉だったが、まだミラの心を解すには至らなかった。

ローズは三人でかくれんぼをしようと提案したが、どうしてもローズを怖がるミラを、ノエルは無理に誘えなかった。


「ローズ、ごめんね。ミラはかくれんぼに慣れてないから、少し見学させてあげて欲しいんだ。何回か2人でやろうよ」


ローズは、その申し出を少し嬉しく思いながら


「仕方ありませんわね。ミラとやら、ちゃんとやり方を覚えるんですのよ!?」


口調はやや上から目線だが、本当は仲間外れにしないよう優しい気遣いをしているローズだった。

ただそれとは別に、ノエルにちょっと異性としての好感も持っていた。


ローズとノエルは2人でかくれんぼという、「もういいよ」の声の方向で結構隠れ場所が分かってしまう遊びを数回繰り返した。


そうなると負けず嫌いのローズは、見つからないように鬱蒼とした樹の上に隠れることを思いついた。

自分の身体能力も考えずに。


そしてローズは樹から落ち、足をくじいてしまった。

いくら負けず嫌いで気位の高いローズでも、まだ6歳の女の子だ。

痛みのあまり泣き声を上げてしまった。


それを見ていたミラは、自然と足がローズの方に向いた。


「な、何ですの?」


涙ぐみながら強がるローズを見て、ミラは助けてあげたいと思った。

その気持ちは、ミラの魔力に変化を与えた。ミラの手が緑色に光る。


何も知らないまま、ミラはその手をローズにかざした。

なぜかは分からないままに「レストア」という言葉と共に。

すると、ローズの傷は見る見るうちに治っていった。


「……」


ローズは、少しの間言葉も出なかった。

だが、ミラが自分のために奇跡を起こしてくれたことは理解した。


「……ミラ!!」


そう言って、ローズはミラに抱きついた。

その頃には、ノエルもローズの様子を見に来ていた。


「ミラ、それは……魔法?」


『そんな力は必要ない』という現世での父の言葉がミラの中でこだまする。

だから、ミラは何も言えなかった。


けれど、ノエルの言葉はミラを裏切った・


「凄いじゃないか、ミラ!!」


そして、ローズもミラに言葉をかける。


「ありがとう!ミラ!」


ありがとう……その言葉が、ミラの心を捉える。

もちろん、今までにもその言葉を言われたことはあった。


お手伝いをした時や、バターケーキをノエルに分けてあげた時(ノエルは濃厚で甘いバターケーキが好きで、ミラは甘酸っぱいチーズケーキが好きなのだ)、その他にも何度も。

でも、この『ありがとう』は何となく特別だった。


前世での人生の最期に聞いた『ありがとう』。

まだこの時のミラはその記憶を取り戻してはいない。

だが、ローズの『ありがとう』はミラの心を満たした。


「ローズ様……」


ミラは、一歩を踏み出した。


「様なんていらないわよ!ミラ、私とあなたはお友達よ!ローズでいいのよ!」


それを聞いたミラは、おずおずと「本当にいいの?ロー……ズ?」と言う。


「当たり前よ!ミラ!大好きよ!ありがとう!!」


ミラを抱きしめたまま言ったローズの言葉は、ミラに初めての友人を確信させた。


7歳になってしばらくしてから、ミラの中には前世で治癒魔法を覚えた時の記憶が蘇った。

その時ローズは「それはもう知ってるよ」と、笑顔で記憶を受け入れた。


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