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既に寮でハーフェン翁主催の前夜祭が三日に亘って催された為か、センガ老人の葬儀当日、会場となった村民会館は、終始穏やかな雰囲気に包まれていた。
単に騒ぎ疲れたとも言う。
センガ老人の棺が安置された大広間で、ギィ青年が挨拶を述べた後、用意された料理と酒を出席者に振舞うだけの、非常にシンプルな形式となっており、
「変な演出は要らん。飲んで食ってお喋りをする場だけ提供して、途中の参加や退出も自由にしてくれ。そうすれば、後は勝手に楽しんでくれるじゃろ。世話になった人達に対する、ワシからのちょっとした恩返しじゃ」
と言う、故人の遺志を反映したものだった。
「なあ、ギィ。この葬儀が終わったら、やっぱり故郷に帰っちまうのか?」
門下生の一人が、ギィに尋ねる。
「はい。最初から実家とは、そういう約束でしたから」
ギィが穏やかな、しかし少し寂しげな表情で答える。
「武芸の名門の跡継ぎも大変だな。センガじいさんが言ってたけど、まるっきり自由が無くて、結婚さえ自分の意志で決められないってんだから」
「自分の人生なのに、自分の好きに出来ないってどんだけだよ。俺ならそんな生き方御免だね」
「な、じいさんが死んだ事は実家に内緒にして、ここにずっといてもいいんだぜ?」
ギィは笑って、
「そんな年金不正受給詐欺の様な真似は出来ません。それに自由なら、もう十三年間、享受させてもらいました。とても楽しい十三年間でした。だからその代価として、これからは自分の義務を果たさねばなりません」
「真面目だな。俺なら、自由を選ぶね」
「ああ、代価なんか踏み倒す」
「けど、それがギィの生き方ならしょうがねえ。気楽な俺達にゃ、想像もつかねえ位大変なんだろうが、向こうに行っても元気でやれよ」
「はい、ありがとうございます」
門下生達は、武芸の名門の血統を持つこの青年に対し、羨望よりは憐憫の情を催していた。
自由は何よりも尊い。
そう思うが故に。




