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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆95◆

 センガ老人の葬儀を明日に控え、遠方からの弔問客が続々と村に到着する。


 リコルドに少し遅れて、チマー夫妻も寮を訪れた。


「ついに、あのご老人も逝かれましたか。下手をすると、私共の方が先になるかと思っていましたが」


 七十代後半にさしかかったフート・チマーが、あまり洒落にならない事を言う。


「遠い所からお越し頂いて、ありがとうございます、フートさん、タッシェさん。お二人共、お元気そうで何よりです」


 そう言って、ギィは老夫婦を棺のある管理人室に案内した。


「いやいや、どうも日に日に体調の衰えを感じます。息子夫婦は良くしてくれますが、寄る年波には勝てないと見えますな」


 フートはそこで言葉を切って、少し笑い、


「もっとも、こんな弱音を吐いていたら、センガさんに笑われてしまうでしょうね」


 部屋に入り、棺に横たわるセンガに、


「センガさん、あなたいい死に顔をしておられますなぁ。私共もあなたの様に、最期は苦しまずに、眠る様に死ねたらいいなと思いますよ。あやかりたいものです」


 と、しみじみとした様子で語り掛けた。


 フートに限らず、高齢者達がセンガの棺の前に立つと、お別れの挨拶が、いつの間にか、自分達の「ぽっくり往生祈願」になってしまう傾向が見られた。


 他に「健康長寿祈願」、「ボケ封じ祈願」も大人気だ。

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