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センガ老人は横になったまま、話を続ける。
「葬儀はワシの死後、三日以上は間を空けてくれ。遠方から来る人の為に、少し余裕を持たせる為じゃ。何しろここは辺鄙な場所じゃからの。お前が昨日言った通り、連絡は瞬時に行えても、人はすぐに駆け付けられる訳ではない」
ギィ青年は神妙な面持ちで、センガの言葉に黙って耳を傾けていた。
「別にワシが死んだ後、誰が来ようが来まいが知った事ではないがのう。じゃが、ワシの死によって、普段滅多に顔を合わせる事もない人々が、一堂に集まる機会が出来る。人間関係が希薄になって来た現代でも、葬儀と言うのは一大イベントじゃからな。懐かしい顔ぶれが揃えば、自然と話も弾むじゃろ。ちょっとしたサプライズパーティーじゃ」
センガは力なく、くっく、と笑い、
「しめっぽい葬儀はご免こうむりたい。もう百年以上生きたんじゃ。大往生もいい所じゃろ。悲しむ事など何も無い。最期は、明るく、楽しく、笑顔で送って欲しい。葬儀などはただの名目じゃ。皆に楽しい一時を提供してやれればそれでいい」
ギィの顔がどんどん曇っていくのに気付き、少しおどけた様に微笑んで、
「ま、今の偽らざる本音を言えば、『死にたくない』の一言じゃ。百を過ぎても、まだこのザマなんじゃからのう。不思議な心持ちじゃ」
目を閉じ、そのまま静かに寝入ってしまった。
そして、その翌朝。
センガは元気溌剌とした状態で寝床から起き上がり、食堂に顔を出した。
「なんだ、じいさん全然元気じゃねえかよ!」
「驚かせやがって。昨日のは一体何だったんだ」
「人騒がせなじいさんだな。そういう事ばっかりやってると、本当に死んだ時、誰も信じねえぞ」
ほっとした門下生達が、老人を取り巻いて、一斉に声を掛ける。
「はっはっは。安心せい、ワシはそう簡単にはくたばらん。一日休んだので、体調がいつもより良い位じゃ。よって今日は一つ、お前達に稽古を付けてやるとするかの」
その日、センガ老人の不敗記録が更新された。




