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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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84/634

◆83◆

 その夜、センガ老人は晩酌の後、


「どうも気分が優れん」


 と言って部屋に戻り、翌日もそのまま寝込んでしまっていた。


「ギィ、ワシはもういよいよ駄目かもしれん」


 横になったセンガは、枕元で心配そうに自分を見下ろしているギィ青年に言う。


「お酒の飲み過ぎですよ。もう少し休肝日を設けなさい、と言う天からの警告です」


「酒は関係ない。昨晩はあまり飲んでおらん」


 センガはギィから目をそらしながら反論する。


「晩酌の前後で徳利の重さがかなり違っていましたが」


「目ざとい奴じゃのう。まあ、そんな事はどうでもいいが」


「良くありません。大体、いつも言っている様に」

「仮にワシがこのまま死んだとしての話じゃ」


 ギィの説教が始まりそうな気配だったのが、この一言で形勢が逆転し、センガは内心ほっとしながら、側に置いてある携帯を指差して、


「もう村の人達には言い含めてある事じゃが、まずメールでワシの死亡を通知する事になっておる。その携帯の中に『最終メール通知先』と言うグループ名で送信先が全部まとめてあるから、それを使って一斉通知してくれ。ワシが、いつ、どこで、どんな状態で死んだかを簡単に書いての」


 ギィは少し沈んだ表情になりながらも、老人の携帯を手に取って確認した。


「ワシの葬儀については、お前も知っての通り、もう葬儀社と相談して全て段取りも決まっておる。お前はそこに連絡して、日取りだけ決めれば良い。決まったら、もう一度メールでその日時を一斉通知してから、郵便局に行き、掲示板にも葬儀の告知を貼らせてもらえ。後は勝手に村の人達が情報を拡散してくれる。それで下準備はほぼ終わりじゃ」


 センガはそこで、ふっ、と笑い、


「この村のシステムは、ある意味ネットより便利じゃな」


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