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レットが道場から籍を抜いた次の年は、エディリア共和国の大統領選挙の年でもあった。この選挙で再びミディ・フェロンが圧勝し、その続投が決定される事になる。
大統領本人は続投に意欲的ではなかったが、某国民的英雄の強い要望により、渋々出馬したのである。むしろ出馬させられたと言うべきか。
そしてさらにその翌年、つまりフェロン大統領の二期目が始まった年のある日、センガ老人はギィ青年と、道場の縁側に腰掛けて話をしていた。
「ワシらがこの村へ来てから、もう十三年目か。時の経つのは早いもんじゃのう」
センガがしみじみと言う。
「色々な事がありましたね」
ギィもしみじみと言う。
「世の中も大分変わったのう」
「この国の復興は順調に進んでいる様です。テロ事件もここ数年でかなり減少していますし」
「わずか数クリックで、遠い異国の酒屋から、気軽に珍しい酒が注文出来る様になった」
「は?」
「それにレットが村の運送業に精力的に励んでいるおかげで、注文した商品が早く届く様になった」
「ネット通販の話ですか」
ギィが呆れた様に言う。
「今は小さな個人商店までホームページを持っておる時代じゃが、ウチの道場もそういうのを作ったら面白いと思わんか?」
「作るんですか、ホームページを?」
「いや、ヴォーンが目立つのを嫌がるから作りはせん。じゃが、作るとしたら一つやってみたい事があってのう」
「何をです?」
「よく武芸の流派のホームページに、そこの幹部の顔写真がずらりと載っておるじゃろ、何とか師範とか、何とか会長とかの肩書と共に」
「ありますね」
「そこで、ヴォーン道場のホームページでも同じ事をやるんじゃが、ずらりと並ぶ真面目な肩書の中、ワシの顔写真の所だけ、『ヴォーン道場特別最高名誉永世エグゼクティブ師範』と記載されておるんじゃ。他は至って真面目な構成の中、そこだけ珍妙な肩書が不意打ちをかける。笑いが取れるとは思わんか?」
「いっそ、顔写真を小鳥の写真にでもしたらどうです。ジュウシマツとか」
ギィ青年は冷めた口調でセンガに言う。
しみじみが台無しだった。




