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フェロン大統領が就任してから、エディリア共和国内のテロは激減した。内戦後の復興を重視する地道な政策を推し進めた事が、結果的に過激派組織の摘発に繋がったのだと、世間では認識されている。
整理整頓された部屋の方が、散らかり放題の部屋よりも掃除がしやすい。
人々はそんな事を言いながら、フェロン大統領の手腕を褒め称え、悲惨な内戦の記憶を日に日に忘れていった。
内戦後のエディリア共和国では、「自分の身は自分で守りたい」、という動機による武芸ブームが起きていたことは前に述べた。その余波を受けて、人里離れた山奥の道場にまで、入門希望者が多く押し寄せる様になっていく。
「この分じゃと、もう一棟、いや二棟、寮を建て増しせんといかんのう。稽古場の方も少しガタが来とるし、いっそここらで新築するか」
センガ老人の見積もりに従って、寮が増設され、稽古場も新たに建て直される。
「しかし、治安が回復しつつある今、ブームもいずれ下火になるじゃろう。これ以上、大きくする必要はあるまい」
建て直されて、前より大きくなった稽古場を見上げながら、センガは早くも先の先を見据えていた。
その読み通り、センガが村に来て十年目に門下生の数はピークを迎えたものの、それ以降は減少の一途を辿る事になる。
そんな武芸ブーム事情とは別に、ピークの翌年、ランナウェイ村の郵便局に、一人の新人女性局員が入って来た。
ゲルン・ドナン、十八歳。中学卒業後、村を出て都市部の高校に通っていたが、卒業後にUターン就職したのである。
この女によって、道場の門下生がさらに一人減る事になる。
「祖父は猟師をやってました」
熊、ピンチ。




