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「さて、故郷の国を出たはいいが、どこへ行くかは特に決めておらんかった。そこで、どうせ行くなら危険な所が面白かろうと、内戦が勃発したこのエディリア共和国に潜り込む事にした」
かなり酔いが回った状態のセンガ老人は、さらりととんでもない事を言い出した。
「偽名を名乗り、色々なツテを使って、回りくどいルートを何日もかけて国境を超えた頃、ヴォーンの臨時政府が反政府派をほぼ制圧した、と言うニュースが入って来た。それからすぐに、普通のルートで入国出来る様になり、『ワシらは手間暇かけて、一体何をやってたんじゃろうな』と、ギィと二人して笑い合ったもんじゃ。
「しかし、せっかく作った偽名じゃ。ワシらはそのままずっと、センガ・イーとギィ・ボンとしてこの国に滞在し、動乱後の情勢を間近で見ておった。そうこうする内に、てっきりこのまま大統領になると思っていたヴォーンが、突如、臨時政府を去る。
「大功を立てながらそれを自分の為に利用せず、全ての名誉を捨てて山に籠ってしまうとは、まるで仙人の様な奴ではないか。仙人志望のワシとしては、俄然、このヴォーンと言う男に興味が湧いた。
「ゆっくりとあちこちを見物しながら、ヴォーンのいるこの村を目指した。あの頃はまだ、ギィはこの国の言葉に慣れておらんかったのう。ワシはすぐに喋れる様になったが。やはり言語の習得の秘訣は、間違っていてもいいから、とにかく人とたくさん話す事じゃな」
最後に言った事は妙に説得力があるな、とヴァルゴはこの話好きの老人を見ながら、ぼんやりと思った。
少なくとも自分が泥酔したら、外国語でこんなに流暢に管は巻けない。




