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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆47◆

 それからの一週間、リーガはザントの部屋で一緒に寝泊まりし、稽古に励む日々が続いた。


 ザントが道場を去る前日、ヴェレも道場を訪れ、夫と息子が稽古している間、居間でちゃぶ台を挟んでクリスと話し込んでいた。


「でも、リーガ君を一人で武芸修行させる事に、よく賛成したわね。てっきり猛反対するものとばかり思ってたわ」


 クリスがヴェレに言う。


「本当言うとね、あまり賛成じゃなかったの。夫が正気に返って、ようやく一家三人が揃ったと思ったら、今度はリーガが抜けてしまうなんて」


 ヴェレは少し悲しそうに微笑み、


「また取り乱して、あなたに泣き付くと思った? クリス」


「ええ」


 ノータイムで返答するクリス。


「ふふ、正直ね。でも、もう大丈夫」


「強くなったわね」


「そうじゃないの。ここにはもう何度も来てるし、これからも今まで通り会いに来るから。それに何より、あなたがここにいる事が心強いのよ、クリス」


「知り合いがいると、安心出来るのは確かね。それでも、幼い子供を手放すのは勇気が要ると思うわ」


 クリスはそう言って、その傍らで遊び疲れて眠そうなアリッサを見た。


「ふふふ、おねむの様ね。アリッサちゃん」


「毛布を持って来るわ。少しお昼寝させましょう。すぐ起きると思うんだけど」


 クリスが毛布を取りに隣の部屋へ行くと、ヴェレはうつらうつらしているアリッサに近寄り、


「アリッサちゃん、リーガの事が好き?」


 アリッサは眠そうな目でヴェレを見上げ、小さく、うー、と唸った。


「じゃあ、引き離す訳にはいかないわね」


 クリスが戻って来てアリッサを寝かしつけると、ヴェレはこんな事を言った。


「リーガをここに置いて行く理由はもう一つ。何となくね、アリッサちゃんが、私にこう訴えてる気がしたの。『私のリーガを連れて行かないで』って」


「まさか」


 クリスは改めて、ヴェレの思い込みの激しさを実感した。特に恋愛関係。

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