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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆46◆

 道場を去る一週間前、ザントは息子のリーガを自室に呼び寄せ、寮生活について一通り説明した。この部屋には、ザントと入れ替わりでリーガが住む予定になっている。


「この部屋に色々と物を残して行くから、それらは自由に使っていい」


「はい」


「電話もそのまま残すから、毎日連絡を入れなさい」


「はい」


「勉強を教えてくれるサダさんの言う事を良く聞くんだぞ」


「はい」


「寮で分からない事があれば、ギィさんに聞きなさい。あの人が実質ここを管理しているから」


「はい」


「父さんと母さんは、一週間に一度ここに会いに来る。だが、寂しくなったら、いつでも家に電話しなさい」


「だいじょうぶ。さびしくないから」


「そうか」


 寂しいのは親の方か。


 ザントはそう思ったが、口には出さなかった。


「おとうさんとおかあさんも、なにかあったら、でんわして。いないときは、るすでんにしておくから」


「ああ」


 ザントは心の内を、リーガに見透かされた様な気がした。


「ヴォーン先生は、何も指導してくれないからそのつもりでいなさい」


「はい」


「センガのおじいさんは、お酒を飲んでいる時に言っている事は聞き流すんだ」


「はい」


「レットさんは、いくら似ていても、面と向かって『熊』と言わないように」


「はい」


「それから……」


 ザントの注意事項は、言われている当人が聞いたら怒られそうな方向に進んで行った。

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