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人質が監禁されている部屋は、探すまでもなくすぐに見つかった。ドアの真正面に置かれた長椅子の両端に、それぞれ二人の見張りが座っていたからである。
二階のだらけきった見張りとは違い、その二人の男の表情は険しく引き締まり、視線はこれでもかと言う位に厳しい。
ただしその厳しい視線は、周囲の状況にではなく、長椅子の中央に置かれたチェス盤に注がれたものだった。眠気覚ましの為に指していたチェスに夢中になっていたのである。
銃に至っては壁に立てかけられたまま、その存在を忘れ去られていた。
ヴォーンがパンの詰まった段ボール箱を抱えたまま近付いても、二人は顔を上げようともしない。
ヴォーンもヴォーンで、二人の横まで来てしばらくチェス盤を眺めていた。
局面は終盤を迎えており、盤上の駒もだいぶ少なくなっている。かなりの接戦で、両者共に少しも気を抜くことが出来ない様子だ。
「詰んでるな」
ヴォーンがぼそっと一言呟いた。
「やめろ、何も言うな」
「部外者は黙っててくれ」
男達は盤面に視線を注いだまま、同時に抗議した。それでもヴォーンは、
「白のナイトで黒のポーンを取れば終わりだ」
男達が怒りの声と共に顔を上げようとした途端、ヴォーンはその二つの首を刈り取る様に、横から一気に蹴り抜いた。
二人は意識を失って長椅子から床に転げ落ち、その際にチェス盤を引っくり返した為、白黒の駒が廊下に散乱した。
教訓その五。
「勇者」ヴォーンが乗り出した時点で、その事件は詰んでる。




