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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆38◆

 人質が監禁されている部屋は、探すまでもなくすぐに見つかった。ドアの真正面に置かれた長椅子の両端に、それぞれ二人の見張りが座っていたからである。


 二階のだらけきった見張りとは違い、その二人の男の表情は険しく引き締まり、視線はこれでもかと言う位に厳しい。


 ただしその厳しい視線は、周囲の状況にではなく、長椅子の中央に置かれたチェス盤に注がれたものだった。眠気覚ましの為に指していたチェスに夢中になっていたのである。


 銃に至っては壁に立てかけられたまま、その存在を忘れ去られていた。


 ヴォーンがパンの詰まった段ボール箱を抱えたまま近付いても、二人は顔を上げようともしない。


 ヴォーンもヴォーンで、二人の横まで来てしばらくチェス盤を眺めていた。


 局面は終盤を迎えており、盤上の駒もだいぶ少なくなっている。かなりの接戦で、両者共に少しも気を抜くことが出来ない様子だ。


「詰んでるな」


 ヴォーンがぼそっと一言呟いた。


「やめろ、何も言うな」

「部外者は黙っててくれ」


 男達は盤面に視線を注いだまま、同時に抗議した。それでもヴォーンは、


「白のナイトで黒のポーンを取れば終わりだ」


 男達が怒りの声と共に顔を上げようとした途端、ヴォーンはその二つの首を刈り取る様に、横から一気に蹴り抜いた。


 二人は意識を失って長椅子から床に転げ落ち、その際にチェス盤を引っくり返した為、白黒の駒が廊下に散乱した。


 教訓その五。


 「勇者」ヴォーンが乗り出した時点で、その事件は詰んでる。

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