◆37◆
次の犠牲者になったのは、二階で見張りをしていた二人の男だった。
ヴォーンはパンの詰まった箱を抱えたまま階段を上り、廃山荘の正面側に位置した部屋に入る。
まず一人目。そこには、銃を脇に置いて窓枠にもたれ、こっくりこっくり居眠りをしている男がいた。
正面を窓から見下ろす形で見張っていたのだろう。単調な仕事に加え、警戒レベルが上がった事で、疲労の度合いも大きくなり、つい睡魔に身を委ねてしまった様である。
幸せな夢を見ている様な、安らかな寝顔だった。
ヴォーンはその幸せな夢を妨げないように、足音を忍ばせてそっと近づき、何のためらいもなく、男の無防備な後頭部に鋭い蹴りを叩き込む。
一瞬、上半身が大きく前に傾き、男はそのまま横に倒れた。
悪夢にうなされた様な、あまり安らかでない顔に変化していた。
そして二人目。ヴォーンは部屋を出ると、次は廃山荘の裏手に面した部屋に向かった。
と、ちょうどその目指す部屋から、銃を手にした男が、あくびをしながら出て来る。
「ふぁああ、ん、誰だお前?」
この男も今まで居眠りをしていたらしく、非常にだるそうな表情でヴォーンに問う。
「ポールの代理だ」
そう答えつつ、ヴォーンは箱を持ったまま体をひねり、相手の顔面に素早い蹴りを入れる。
段々面倒くさくなって来たのだろう。もう言葉と行動の整合性を取る努力さえしていない。
大の字に引っくり返った男が動かなくなったのを見届けてから、ヴォーンは二階の他の部屋を一通り調べ、人がいないことを確認すると、箱を抱えたまま、再び一階へと向かった。
教訓その四。
睡眠不足は見張りとお肌の大敵。
いよいよ次にヴォーンが目指すのは、人質が監禁されている部屋である。




