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アリッサを寝かし付けたリーガが居間に戻ると、今度は自分の母ヴェレが、クリスの胸にすがって泣きじゃくっている所だった。
「おかあさん、おちついて」
リーガはヴェレの所に行き、その背中をポンポンと叩く。
ヴェレは振り返ってリーガをきつく抱きしめ、
「リーガ、あなたのお父さん、あなたのお父さんが!」
激しいパニックに陥った母の頭をよしよしと撫でながら、リーガが目を横に向けると、ヴォーンが何やら電話で話しているのが見えた。
ヴォーンは電話を終えると、ヴェレとリーガの所にやって来て、
「二人共安心してください。たった今、警察への協力の申し出を受理されました。これからザントを取り戻しに行って来ます」
さも何でもない事の様に淡々と、しかし優しい口調で、そう言った。
ヴェレは顔を上げ、ヴォーンをまじまじと見て、
「本当ですか? 本当に夫を取り戻してくれるんですか?」
「はい。もうすぐ警察のヘリが私を迎えに来ます。それで直接現地に行き、ザントを救出して来ますから、どうか落ち着いて待っていて下さい」
ヴェレとリーガの目の前に立っているのは、紛れもなく、四年前の内戦時、救助困難な状況下で幾多の人命を救った英雄だった。
「夫を、どうか、お願いします」
ヴェレは少し落ち着きを取り戻し、リーガを抱きしめたままヴォーンに頭を下げる。
「道場主として、門下生の危機を放っておく訳にはいきません」
そう言って、居間から出て行こうとするヴォーンの背に向かい、
「待て、ヴォーン。ワシらに何か手伝える事はないか?」
センガ老人が声を掛けた。
「では、懐中電灯を持って一緒に外に来て下さい。ヘリの誘導だけお願いします」
「それだけか?」
「行くのは一人で十分です。むしろ一人の方が都合がいい」
「ふむ、何か策があるのじゃな。よし、ギィ、お前も懐中電灯を持って来い。クリスさんはここで、三人の様子を見ていてくだされ」
「分かりました」
クリスは落ち着き払った様子で、センガに返答する。
「ぼくもてつだいます」
リーガが母の手をほどいて離れ、センガに協力を申し出た。
「よかろう。懐中電灯を振るだけなら、お前さんにも出来る仕事じゃな。ついて来い。ヴェレさん、この子をちと借りるぞ」
ヴォーン、センガ、ギィ、リーガの四人は、手にそれぞれ懐中電灯を持って、道場から少し離れた所にある広場まで来た。いつもヴェレ達を乗せて来る自家用ヘリも、そこを発着所に使っている。
「ヘリの音が聞こえてきたら、懐中電灯を音のする方向に向けて振って下さい」
ヴォーンが三人に指示する。
「ちなみに、何でもない時にヘリを照らすと、威力業務妨害で捕まることがあるので注意して下さい」
「今、そういう豆知識はいらんわ」
センガがヴォーンに突っ込みを入れた。




