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スルー夫妻が新婚旅行から戻り、ランナウェイ村でも、お披露目の祝宴が村民会館で催された。
祝宴と言っても堅苦しさは無く、気楽な田舎で行われるやや大がかりなパーティーの様なもので、出席している村民もほとんどが普段着である。
まず最初に、祝辞を述べ終わるまで酒を飲む事を禁止されたセンガ老人がスピーチを行い、同時に門下生代表のレットにより、氷柱割りとビール瓶切りが披露された。
センガは、レットが手刀で切った瓶からビールを注いだ大ジョッキを高く持ち上げ、
「この若き二人の前途に大いなる幸あらん事を願って、乾杯!」
そう叫んで、中身を一気に飲み干した。
「幸あらん事を願ってというより、ようやく酒にありつけてほっとしてる顔だな、ありゃ」
門下生の一人、リコルドがギィ青年に言う。
「今回は、スピーチが終わるまで絶対に飲まない様、きつく言い渡しましたから」
ギィ青年も、ほっとした顔で言う。
「俺は行かなかったが、じいさん、首都では相当酔ってやらかしたそうじゃねえか」
「お恥ずかしい話です。つい、目を離したのがいけませんでした」
「そのおかげで、じいさんの神業が拝めたってな」
「醜態も十分晒したので、評価は差し引きマイナスです」
「一年前に初めて会った時は、武芸好きなただの変なじじいだと思ってたが、まさか本物の達人だったとはなぁ。そう言や、百万人を超える弟子を持つ拳闘術の名門の出とか良く言ってたが、誰も本気にしなかったし」
「あんなのが達人だと知れると、色々な方面に迷惑がかかるので、内密にお願いします」
「お前も、その門下生なのか?」
「一応そうです。でも他流試合は固く禁じられています」
「けど、もったいねえな。実際に色んな相手とやり合わなきゃ、どんどん武芸の腕も錆ついちまうだろうに」
「そうですね。でも、元より皆さんの相手が出来るような腕ではないですから」
「腕ってのは、上過ぎてか? 下過ぎてか?」
リコルドは、探る様な目でギィに問い掛けた。
「私が下です。もちろん」
ギィは穏やかに笑って答える。
「どうも俺達は、お前にうまく騙されてる様な気がする」
そう言って、リコルドは手にしたコップのビールをあおった。




