第九話:仲間より睡眠優先
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『川のせせらぎ睡眠』
【★★★★☆:音が心地よくて目覚めも快適】
眠る時は柔らかい水の音が睡眠に誘ってくれる。
体を括り付ければ特に海に流されることも無く、目覚めは快適。
目覚めたら周囲がジャングルになっていて面白いので是非~。
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(睡眠レビューもばっちり)
しっかり睡眠レビューを済ませる。
しかし、目覚めたらジャングルなど、神にしか体験できないものなのだが、そこはネヨウ。
「探索しようか~」
「タンサク!」
「キュイキュイ!」
「ピューピュー!」
「ガアガア!」
立ち上がったネヨウの声に反応する動物達。ネヨウが名前を付けたのは先着十匹程度だが、その他にも彼女の周囲をうろついている虫や動物がいる。
「それはそうと、これ以上僕の上には乗らないでね」
現在ネヨウの体にはスヤスヤを含めて六匹の生き物が乗っている。
左肩に二匹の小さい鳥型の生き物、青色の【アオノ】と赤色の【アカノ】。
右肩には黒くトカゲのような形をした名を【トンカゲ】。
あとは頭にスヤスヤとモリスと、ナメクジのような灰色の軟体生物、【ヌーメ】。
名前の由来はモリス同様適当である。
と、このように現在多くの小動物がネヨウに乗っており、まあまあ重いのである。
それでもまだ乗りたそうな顔をする動物が数匹いるため、ネヨウはこれ以上は無理と釘を刺した。
「ヒャイ……」
乗ろうとしていた小動物たちは悲しそうな雰囲気を漂わせるも、渋々と言った様子で返事をしていた。
「うん、よろしくね~」
いつの間にこんなに好かれたのだろう、などと思いながらも「さて」と話を切り替える。
「川の方向が変わってるね~」
先程から視界に大きな川が映っている。
恐らくそれは前回眠りについた川である。だがその流れる方向や大きさは大きく変わっていた。
よく聴くと、音は寝る前の柔らかい音から、少し勢いのある音になっている。
(億年でこう変わるんだ)
川の方向や大きさが変わったり、植物や動物も自然に生まれるようになった。
少し、億年という時間を実感した。
(ジカンをジッカン……)
お祝いにダジャレをカマしておく。
「んー、じゃあ川に沿って歩いていこうか」
どこに行くかも決まっていなかったネヨウにとって、その川はちょうど良い道しるべだった、よって一先ずは川に沿ってこの森を探索してみることに。
「みんな行こ~」
「イコー!」
「キュイ!」
各々の動物が返事をしたのを確認したネヨウは、そうしてゆっくりと下流へ歩き出した。
そこからネヨウ達の冒険は長く続いた。
「お~、木の実が沢山あるね~。これは……食べられるね、じゃあ取っていこうー」
道中では木の実が沢山実っており、ネヨウは豊穣の力で食せるものかを判断して自作の籠に入れていった。
周囲の動物たちの食料とするためである。
「うん、日も暗くなったし、ここで寝ようか」
長時間歩き、日が暗くなれば、寝やすそうな場所で睡眠。動物達を守る柵も忘れない。
この日はお花畑睡眠をした。
「あ、みんなごめんね~結構時間経ってたんだ……」
一日で起きるつもりだったネヨウだったが、長期睡眠に慣れて来ていたため、目覚めた時には数年経過していたり……。
ただ動物達からすれば今までずっと寝ていた存在であったため、ネヨウの睡眠が数年程では怒ることも無く。
「わー、竜みたい」
数年越しの探索を再開した先で巨大な黒い竜に出会ったりもした。
その竜は特にネヨウ達に攻撃などを行う素振りは見せず、ただ眺めていただけだったので良かったのだが、周りの動物達が体を震わせて酷く怖がっており、植物を使ってあやす行為をしたりと、ネヨウにとって印象深い出来事であった。
「ギャー!」
「ニュー……」
「喧嘩しないのー」
更に、ちょっとした喧嘩や、道中出会った新参者を追い出そうとする動物を諭したり。
「どう? 似合ってるー?」
「ピュー!」
「キュイ!!」
「ヒャー!」
「ニャー!」
森を抜けて綺麗な花を見つけ、誰かが言ったことを機に花の髪飾りを皆で作ってみたり。
出来た髪飾りは色とりどりの花を編み込んだ、藤の花のように垂れ下がる形のもので、今もネヨウの右の側頭部に付いてある。
「洞窟睡眠も悪くない」
洞窟での睡眠や巨大な木の家を作っての睡眠もした。
巨大な木の家睡眠は動物たちからも好評。
日々数年、時には数十年の眠りにつくということもありながら、ネヨウ達は川に沿って探索を続けて行った。
(楽しい)
「おー、滝じゃーん」
そうして、スヤスヤが言うにはあれから大体百年程が経ったこの日、その川に変化があった。
ちなみに百年と言ってもその十割近くをネヨウは寝て過ごしている、なので百年の実感はあまりない。
それはともかく。
そう、現在視界に映っている川の先は崖であり、所謂滝となっていた。
「今更だけどさ……なんか皆異様に大きくなったりしてるよね。あと寿命とかって無いのー?」
ここまで、途中離脱者は数匹程いたが、その殆どは変わらずネヨウに付いてきている。それどころか当初よりも数が増えている。今では百匹近くの生き物が居るのではないだろうか。
そしてそんな生き物たちは、各々がおかしな成長していた。
その成長は単純に体が大きく育った者や、魔法のような不思議な力を扱えるようになった者など多岐にわたる。例えばモリスは何もないところから風を起こしたり、トンカゲは体が丸太のように大きくなり更に火を噴きだし始めたり、など。
寿命に関してもそうだ、今のところ寿命などで死んだ仲間は居ない。
滝を見て、一先ずこの探索に一つの区切りがついたことを感じたため、ネヨウは今まで気になっていたそのようなことを何気なく聞いた。
「ア、ソレハネー」
その問いの答えは全員知っているらしく、沢山の返答があった。
そしてみんな等しくこう言うのである。
『ネヨウ様のお陰です』
と。
ちなみに、いつの間に動物の言葉を理解できるようになったのか、というとネヨウにもよく覚えていない。日々探索していたら分かるようになっていた。
ただ、ネヨウにも思い当たる節はあったりする。
閑話休題。
なんでもネヨウの近くには神聖な力が漂っており、その力が周囲に居る動物達の健康と寿命、そして成長に影響を及ぼしているのだとか。
「確かに、僕って女神だもんね」
次に寝る場所を滝の下に決め、植物の階段でゆっくりと下りながら、ネヨウは自身が女神であることを再認識した。
女神であるためそういう力があっても不思議ではない。ただ問題なのはそれをまだネヨウが認識できていないことだろうか。
「まあ、いつか認識できるでしょ~」
ただ、最近ネヨウは自身の神としての力が年々増していることを感じていた、それは以前までは感知できていなかったことである。
なら、またいずれその漂う神聖な力というのも理解できるようになるはず。
その力が不味いものでは無いと思っているため、ネヨウはそのように能天気に考えることにした。
ちなみに動物の言葉の理解に関しての、思い当たる節がこの女神の力の増加である。
「おー、ちょうど良いところに寝やすそうな岩があるー」
そんなこんなで滝の下に降りたネヨウ達。
滝の激しい、されども心地の良い音を耳にしながら、ネヨウはとある岩に目を引かれた。
すぐさま近寄り細かく寝床検査。
「……すばらしい~」
寝床検査を終え、ネヨウは思わずそう言葉を零した。
その岩は滝の水に濡れることはなく、されども降り注ぐ水を眺めるのに、更に音を聴くのにも最適な位置。
そして岩は平らで大きく、とても寝やすいものとなっている。
「ここで、寝る……!」
そう決めた途端にどこからか眠気が押し寄せてくる。
(あ、この眠気は~)
そこでネヨウはこの眠気がいつもの眠気とは違うことに気が付いた。
それはまるで本能から訴えられているような、感覚としては睡眠不足。
しばらく長期睡眠をせず、その上で豊穣の力を使い倒していたからだろうか。
なんというか物凄く長期睡眠をしたい。
「……みんなー、ちょっと長く寝ても良い?」
長期睡眠をするか迷った、だけどやっぱり長期睡眠をしたいので、仲間たちに聞く。
「ドレグライ!」
元気なスヤスヤの声が返ってくる。
同時に動物達もこちらに視線を向けてきた。
「うーん……数千年ぐらい?」
それはちょっと長い、なんてレベルではないのだが、そこはネヨウ。
一応数千年の睡眠を行うことに対して、周りの動物たちへの心配は多少はあった、もし外の生物から襲われたりしたら、など。
だがそもそも今まで襲われることはなかったし、一番の問題である動物たちの寿命についてもネヨウは特に心配に思っていなかった。
なんたって探索を始めて百年程経っても、皆衰えることは無く、むしろ以前より逞しく生き生きとしているのだから。
だからこそ、ネヨウはこの件をあまり躊躇なく言い出せた。
「ナガイネ!」
「ごめんねー、久々に長期睡眠したいなって思ってさ」
ネヨウの睡眠本能が今も『長期睡眠シタイ!』と叫び散らかしているのである。
だが言い出してからネヨウは、皆に『流石に数千年は看過できない』などと言われる可能性を考えてしまい、少し身構える。
「モチロン、イイヨ!」
「キュイ!」
「ピュー!」
しかしその心配は杞憂のようで、ネヨウの睡眠を妨害する者はこの場には居なかった。
「……みんなありがとー」
数千年程の睡眠を認めてくれる仲間達の優しさに『いい仲間を持った~』と感動しながら、ネヨウは早速寝る準備をすることに。
まず岩の上にふかふかの植物布団と枕を作る。
どちらも柔らかい草木が乱雑に絡まって出来ているが、その手触りは前世での羽毛布団に近い。探索の最中にこれが最強だと気づき、それから寝るときはいつもこうだ。
次にそのベッドに乗る。そして岩の中に植物を植え、生やした蔦で自身の足や胴体を岩に軽く括り付けた。
「うーん、眠る向きは滝じゃなくてみんなが居る陸にしよう……あー、ねむい」
最後に眠る向きと姿勢を整えて、ふかふかな葉っぱ毛布を被り準備完了。
眠り方は見た目相応、猫のように丸まって眠る。ネヨウにとって現在の体では、その姿勢が一番寝やすいのである。
猫耳と尻尾が生えているからだろうか。
「……それじゃあ僕は寝るね、皆起きたらまた会おうね~」
長く眠るからといって、壮大な挨拶は要らない。ちょっと久々の長期睡眠をするだけなのだから。
それに動物たちはみんな仲が良い、今も喧嘩することなくこちらを見ている。そう心配なんて全然いらなかった。
「オヤスミ!」
「キュイ!」
「ピュー!」
「ギャー!」
いつも通り左上から聴こえるスヤスヤの声を筆頭に、全ての仲間がそう言ってくれる。
「うん、おやすみ~」
ネヨウにとっては眠っている時間の方が圧倒的に多かったが、なんやかんやで百年程、共に過ごしてきたのである。
それを改めて認識して、感慨深い思いと暖かさに包まれながら、ネヨウは徐々にその意識を落としていった。
やっぱり睡眠は良い……。
おやすみ。




