↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
てぃーえすすいみんらいふ  作者: ぬい葉
第一章:女神の放浪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/12

第七話:打ち上げられた孤独な魚に友達が出来た

「んお、陸だ~」


 あれから海の上で何回か目覚め、その度にまた眠っていたネヨウだったが、この日は違った。

 目覚めたらちゃんと硬い地面があった。

 背後で「ザー」っと波の音がする、どうやら波によって陸に打ち上げられたらしい。


 ネヨウは起き上がって、背後にあるであろう海へと視線を向ける。


「あ、海の色がちょっと変わってる~……あ、空もじゃん」


 海は緑色とも青色ともつかない濁った色に、空は地球での夕暮れに灰色を混ぜたようなこれまた少し濁ったものへと変わっていた。


「どれぐらい時間が経ったんだろう」


 流石のネヨウでもそこそこの時間が経っていることは分かった。だがその詳細な時間はルーラにでも聞かない限り分からない。

 ただ、体感また数千、数億年ぐらいは経っていそうだ。


「さて……」


 陸の方に視線を向けると、視界いっぱいを地面等の岩肌が埋め尽くす。

 やっと海上生活が終わって自由になった、けど。


「……何も無い」


 人も動物も植物も寂しいほどいない。


「……」


 孤独。

 海を彷徨っている時も一人であることは分かっていた、だけど実感はあまりなく、それがどうした程度しか気持ちが湧かなかった。

 だがいざ陸に上がり、見渡す限りが地表や岩々となると、『今この世界には自分しかいない』という事実を否応なく突き付けられ、それが少し……。


「……独りぼっちって辛いんだね」


 前世でも一人でいるときが多かった。だけど龍介との関わりや、何よりも街の音、人が、生物が生きている音がしていた。

 今響くのはただ近くの波の音と、肌を薄く撫でる生暖かい風の微かな音だけ。

 雨も止んでいて、その音はしない。まるで潤いが足りないと言っていそうな地面に、どこか親近感のようなものを覚えることができた。


「……まぁでも、そのうち地球と同じようになるでしょー」


 ルーラは信仰云々の話もしていた、つまり知的生命体がこれから生まれてくるということだろう。

 あの騒がしい日々はいつかまたやってくる。そう考えると少し億劫だが、同時にちょっとした嬉しさもある。

 それにいざとなれば植物なら生やせる。


「歩こう、ちょっとした冒険~。海の近くで寝てまた海に流されたら嫌だし」


 今回はすぐに寝ずに陸の方へ歩く。まあまだこの世界は岩以外何もないだろうけど。


「良い睡眠スポットも探したいし」




「あ、あんなところにデカい山が~……あれは、川かな~」


 あれからネヨウは数時間歩き続けた。


「ウン、ソウダトオモウ」


 小さな相棒と共に。


 甲高い声で言葉を返したのは、ネヨウのモフモフな白い左耳に引っかかるように茎で絡みついて、左前頭部(ぜんとうぶ)付近にその花を咲かせている『スヤスヤ』くんである。

 スヤスヤは三種の花をミックスしてできている。

 花弁が三枚の白いポピー、欠けた花弁の位置には代わりに三輪の白いスズランがあり、更にポピーの右下の花弁に青のカスミソウの花が二輪。

 そしてその混合した花を乗せるように、三つの葉が花芯から三方向へ広がっている。

 喋るが、口は無い。


 あの後ネヨウは、寂しさを心に抱えたままであった。

 結局その寂しさをどうにかしたいと思い、一生懸命頭を捻った。


 結果、喋る植物を作ることを思いつき、すぐさま作成、そうしてスヤスヤは生まれた。

 スヤスヤという名前の由来は、『もっとすやすやと寝られますように』、という自分本位の願いからである。

 デザインなどは前世で見かけた花三つを適当に組み合わせただけだが、思ったよりも纏まっており即興にしては満足のいく出来。スヤスヤ自身も気に入っている様子。


 と、これでネヨウの寂しさはある程度満たされたのである。



 閑話休題。


「ドコマデイク!」


 この誕生したばかりの惑星には壮大な景色がそれなりにあった。まあそのほとんどが岩なのだが。

 隕石でも落ちたのか大きく凹んだ地表、変な形をした巨大な岩、ちょっとした崖、大きな洞穴だったり。

 どれも前世では見たことがない。特に世界遺産などを現地で見たことが無かったネヨウは、そのどれもに圧倒された。


 案外楽しい、とネヨウは感じていた。あら珍しい。


「うーん山は気になるけど、そろそろ長期睡眠したーい」


 とはいえ、この殺伐とした場所をもう長時間歩きっぱなしである。ここまで歩いてネヨウは疲れを感じていた、主に岩ばかりの景色と寝ないことによる精神的な。

 こういう時は数億年程寝て気分をリフレッシュするに限る。あの長期睡眠後の気分の良さがやみつきになるのだ。


 神になって色々と感覚がおかしくなっているネヨウだが、本人は気づいていない。


「山は諦めるとして、せめて川の近くまでは行って寝たいね~、レビューに丁度良さそうだし」


 折角初めて川を見つけたのだ、川の音を聴きながらでも寝ようかと考える。


「いや、海に流される危険……!」


 だがそこでネヨウは前回の睡眠を思い出した。

 海での睡眠、あれは正直苦手である。川の近くだと雨で増水した時にその海へ流される危険がある。そうだ、危ない。


 そうして川での睡眠は止めようと考えたネヨウ。


「カラダ、シバレバイイ」


 だがそこでスヤスヤがスズランを揺らしてそんな提案をした。

 確かに地面や岩などに植物で体を縛っておけば流される可能性は少なくなる。


「……確かに、名案だねー。ありがとうスヤスヤ~」


「ドウイタシマシテ!」


 ということで結局ネヨウは川へと向かった。



「ふぅぃー、川の音が心地よいの~」


「ダネ!ダネ!」


 あれから少しして、ネヨウは目的の川へと辿り着いた。

 川の幅は大きく無く、流れがとてもなだらかで、水の柔らかい音が脳を優しく撫でてくる。


「これに括り付けよう」


 川とちょうど良い距離にあった岩の出っ張りに鎖のような植物を絡める、そして自身の体も同様の物で縛り最後に双方を繋げる。


 これで寝る準備は整った。


「レビューは起きた時に書くとしよう~」


 ネヨウが最近気づいたことだ。

 眠るという行為は目覚めがあってこそのもの、目覚めも睡眠レビューに含めるべき項目なのだ。あの海で実感した。


 ならばレビューは目覚めてから書くのが良いだろう。

 ということで。


「スヤスヤ、おやすみぃ」


「オヤスミ!」


 ネヨウは横になり、ずっと着ている白いワンピースの内側に、膝を入れて猫のように体を丸めた。


 そうしておやすみ宣言。

 左上から聴こえる返事を聞きながらその意識を沈めていくのであった。

スヤスヤのイメージイラストを活動報告に投稿したかったのですが、画像を貼れなかったので、Xに投稿します。ので是非見てください!


スヤスヤ→https://x.com/nuiha_sousaku/status/2087101717129150932?s=20

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。