第十七話:エルフ
「ありがと、イニティーさんのお話、聞いてて楽しかったよ~」
「こちらこそ。長々と失礼しました」
ある程度寝ている間の歴史は知ることができた。
「この後どうしようかな~」
神として信仰されちゃった以上、迂闊には動けない。
気を紛らわす為に櫓上から外の景色を見るも、愉快そうにしているエルフたちが見えるばかりで、却って自分の行動が重いことを実感してしまった。
こういう時はあれしかない。
「少し寝よう」
「神殿に戻られますか?」
すかさず聞いてくれるトンカゲ。
トンカゲは将来、執事服を着ていそうだ。
「うーん、そうだね~。でも見られながら寝るのは恥ずかしいから、仕切りとか欲しいなぁ」
「仰せのままに、準備させます」
そうしてネヨウは神殿に戻り、仕切りとついでに、贅沢だが櫓のと同じ布団も用意して貰って、その日は眠りにつきましたとさ。
ちなみに村長には「お祭り楽しかったよ」と言っておいた。
「おはよう~」
「わー」とあくびをしてネヨウは目覚めた。
薄い木でできた、素朴な仕切りをどかして布団から出る。
「女神ネヨウ様のお目覚めだぁ!」
「……うるさい」
「ハッ、失礼!」
お目覚め早々、お祈りポーズをしていた人たちからの絶叫がうるさく、思わず不機嫌な感じの声になってしまった。
「体感一年の睡眠だね~」
以前よりも睡眠時間の把握ができるようになってきたネヨウ。
今回は一年という割と短い睡眠だった。
「オハヨウ!」
「おはよう、スヤスヤ」
スヤスヤも相変わらずで何より。
「ネヨウ様おはようございます~」
「あ、おはようアオノ」
スヤスヤの次に話しかけてきたのは、青い毛の多いインコのような小鳥、【アオノ】。穏やかで優しい性格の子だ。
「元気そうで何より、アカノも元気?」
【アカノ】はアオノにとって妹のような存在。彼女は鳥型で赤毛の子、実はアオノとは違って、すごく大きく育った。
「お陰様で」
「そう、良かった」
妹に体の大きさで負けたら、コンプレックスになったりすることもあるだろうが、アオノはそんなことはないらしい。
いつも妹の事を誇っている、だからネヨウはアオノのことを「穏やかで優しい子」で覚えている。
ちなみにアカノは優しさはあるが、その体格通り豪快な性格だ。
「今日はどうされますか?」
「うーん、折角だから村を見て回ろうかな」
前回は祭りだけで、村をまともに見ていなかった。
新しい趣味として村の発展を見るというのも、良いかもしれない。
「では僕が案内役となります」
「ありがと~」
視界の端では未だに祈りを捧げるものや、村案内と聞いてソワソワする人など沢山である。
「あ、そういえば」
"人"といえば、とネヨウは言いたかったことを思い出した。
「ここの人たちって『人間』って呼ばれてるんだよね?」
「えぇ、そうですが……」
「提案なんだけどさ。生物名としては良いと思うけど、耳も寿命も長くなったんだし、折角だから種族名みたいな感じで、呼び名変えてみない~?」
「種族名、ですか」
耳が長くて寿命が長い人類。
幼いころ一度やった、RPGでいた『エルフ』がそれに当てはまる。
ゲームの経験はあれ以来無いから、今でもよく記憶に残っている。
「その種族名は、どのような名になるのですか?」
「ボクモキニナル!」
「あ、私も気になります」
「俺も!」
アオノやスヤスヤに続いて、数人の人間たちも声を上げた。
声を上げていない人でも聞き耳を立てるようなしぐさをしている。
「種族名は『エルフ』、どう?」
完全に前の世界からの引用だけど、ここは新しい世界だからセーフ。
「エルフ、良いですね」
「ウンウン」
「エルフ……」
「エルフ!」
「ネヨウ様直々の……!」
「そうですね、後程人間、エルフたちの村長にも伝えておきます。ネヨウ様直々に名付けたと知れば、ここに居る者達のように大喜びでしょう」
(とりあえず受け入れられて良かった~)
提案が受け入れられたことは嬉しい、だけど。
「そんなにかな~?」
神殿内は少し騒々しくなっていた。元気そうで良いのだが、やったことは種族名提案だけで、少しオーバーなリアクションな気もする。
「えぇ、尊敬してやまない方から名を頂ける喜びは、凄まじいものですよ」
さも当然と言った様子で言葉を返してくるアオノ。
「そうなんだ」
ネヨウには、そんな存在が居なかったため、あまり鮮明には分からないことだ。
「……まぁ、じゃあ村案内よろしくね」
「任せてください」
こうして後にエルフという呼び名は村全体に広がることとなった。
神直々の名づけ、ということで、その種族は後に世界でも大きな存在となるのだが、それはまた別のお話。




