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夜明けのゾンビ  作者: 天本一三


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9月13日

 朝を少し早く起きるようにして、プウと散歩するようになると、意外と外は色んな音がしていることに気づく。鳥やヒグラシの鳴く声、どこかの家から漏れてくるテレビの音、遠くからは電車の音もするし、いつもすれ違う人とは挨拶をすることもある。折々に季節の匂いを感じ、久しぶりに爽快な気分になっていた。

 家に帰ってきて洗面所で手を洗いながら鏡を見てみる。確かに母さんが言うように顔色が悪いうえに、皮膚もカサついている。まあ朝の散歩を続けたら少しはマシになるだろう。

 部屋に戻ってネットを見ると、またちょっとした騒ぎになっていた。最近少し話題になっていた噛みつき事件だが、今日だけで都内で八件起こったというのである。いずれの事件も犯人はその場で確保されているようだが、薬物なのか精神錯乱なのか、まだはっきりとしたことは判らないらしい。が、気になるのはその加害者の中に、先日の噛みつき事件の被害者だった上司らしき人がいることである。

 もしそれが事実なら、またもや噛みつかれた人が今度は噛みつく側になる、というゾンビ映画の典型に当てはまってしまうことになる。ネット上ではそういったゾンビ説よりも、新型の狂犬病の疑いのほうが大きく取り上げられているようだった。しかし現在報道されている話を見る限り、狂犬病だというはっきりとした結果は出ていないようだ。引き続き様子を見る、という発表があったが、なにやら気味の悪い事件なので少し外に出るのが怖くなってきた。両親も青い顔をして心配そうだ。玄関では母さんが親父に気をつけてねと言う声が聞こえてきた。

 そういえばプウに買ってきたシニア用のフードはあまりお気に召さないみたいだ。その証拠にフードを食べずに俺の足に食いついている。まったく可愛い奴だ。

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