僕は冒険者登録をすることになった
僕は冒険者登録をすることになった。
最近王都周辺に魔物が増えているという。
盗賊退治は王国騎士団と共に討伐してきたが、魔物が相手となるのは冒険者たちである。そこは棲み分けてやって来た。それが今まで上手くいってきたのだが、王都周辺の魔物が明らかに増えていた。
「冒険者登録…ですか?」
フォルマーレ王女殿下が答える。
「最近、魔物が増えていると聞いたのです。僕にも何か出来ないかと思いまして」
僕は気持ちを素直に伝えた。
「アルコバレーノ様お一人で、ですか?」
「ええ。そのつもりです」
フォルマーレ王女殿下の目から一筋の涙が流れる。
「私、何か悪いことしましたか?」
フォルマーレ王女殿下が急に泣き出した。
「いや、どうしたのですか?」
「何か起きた時に助け合えない夫婦なんてそんなの悲しいですわ」
「いや、少し思いついただけですし。フォルマーレ様は国の皆に顔が割れていますから、危ないこともありますし」
フォルマーレ王女殿下が滂沱の涙を流す。
「いや、そんなに深刻に考えないでください。フォルマーレ様が望むならお手伝いしてもらいますから」
晴れやかな笑顔を見せるフォルマーレ王女殿下。
「じゃあ、私も冒険者登録に行きますわ」
まあ、フォルマーレ王女殿下が望むなら、僕が守ればいいだけだしね。
僕が部屋で待っていると、フォルマーレ王女殿下は髪を下ろし、平民の服っぽい高価な服を着て現れた。
「平民っぽい服もお似合いですよ、フォルマーレ様」
顔を真っ赤にするフォルマーレ王女殿下。平民っぽい服を褒めて喜んでいいものか多少不安だったが、こんなに喜んでくれるならそれでよし。
「アルコバレーノ様もいつもと違いますのね」
僕は大剣を持たず、片手剣を腰に下げて動きやすいシャツに、頑丈な革のベストを着ている。
一方でフォルマーレ王女殿下は、ゆったりとしたローブを着ており、手に小さな杖を持っている。
「お似合いのパーティーですな」
セバスティアーノがそう評してくれた。なんか嬉しかった。
「さあ、行きますか」
馬車に乗ることなく二人で跳ね橋を歩いて行くのは新鮮だった。
「冒険者ギルドは東区にありますわ」
僕らは東へと向かう辻馬車に乗った。
「ここが冒険者ギルドですわ」
外観は年季の入った大きなホテルのようだが、中に入ると広いホール。そこに並べられている円形の机を埋め尽くす人、人、人。
奥に受付があるので、そこを目指す。するとファンキーな輩三人組が現れて前を塞ぐ。冒険者の洗礼…かと思ったがどうやら違うようだ。
「あーん? お前ら新人か?」
「ずいぶんと小ぶりな剣だが、刃を見せてみな。よし、錆びてねえし欠けてもねえな」
「嬢ちゃんよー。どっかのお姫様みたいな面してんな。こっちはゆったりとしたローブに杖、よく見たら上物じゃねえか。誰かに奪われないようにしっかり持ってるんだぞ。それと、髪は後ろで結んでいた方がいいぜ」
「おうおうあんちゃん、しっかり守ってやるんだぞ。受け付けはあそこだ」
「はい、ありがとうございます」
受付前に来ると、なぜかフォルマーレ王女殿下がむくれた。まあ、目の前の巨乳美女受付嬢のせいだろう。間違いない。
「いらっしゃいませ、冒険者登録ですか」
「はい、二人一緒に登録で」
「では、こちらの用紙に名前を書いてください」
フォルマーレ王女殿下の機嫌がとても良くなる。
「フォル様、どうしてそんなに機嫌が良いのですか?」
「実は、平民が結婚するときは用紙にお互いの名前を刻むのだと聞いたことがありまして」
「それって」
僕の顔は熱さの臨界点を超えて、爆発した。
「フフ、相思相愛ですわね」
お恥ずかしいところをお見せしました。
先ほどの受け付けのお姉さんがやって来て用紙を回収する。
「用紙を書いて頂きましたので、冒険者登録は以上となります。こちらは身分証となる木札です。ランクごとに材質が異なりますので、今回は最低ランクの木札です」
「詳しく言うと、Dランクが銅Cランクが銀Bランクが金Aランクがプラチナとなっております。それと、現在は存在しませんが、Sランクだと龍の骨が身分証となります」
受け付け嬢の話を聞いていると二人してSランクパーティになる姿を想像してしまった。
「それから、Ⅾランクが王国内の清掃や民間の頼まれごと、Cランクは王都外での薬草など採取する仕事までとなっておりますから、魔物退治はBランク以上になります」
「あら、それでは魔物退治は出来ませんのね」
「いえ、今は魔物が増えてまして、特別に中庭にある訓練場でA級冒険者と戦って頂いて、実力を認められたらすぐにでも魔物退治が出来るようになりました」
「そうですか。ありがとうございます。それでは訓練場に寄ってみようと思います」
「期待しております。いってらっしゃいませ」
巨乳の受け付け嬢は笑顔で送り出してくれた。
※※※
訓練場へとやって来た。そこには受付番号の木札を配る男性職員がいた。
「あなた方は135番目となります」
「135番目ですか? アルコバレーノ様、明日にしますか?」
身長の高い、碧眼の男性職員が声をかけてくる。
「お待ちください。すぐに順番が来るので大丈夫ですよ」
遠目から訓練場を見ると、バタバタと破れて救護室に連れていかれるパーティーの姿が見える。
「どうしたどうした! こんなんじゃ魔物と戦っても死ぬだけだぞ!」
前に並んでいたパーティーが何組も離れていく。あっという間に僕らの順番が来た。
「かなり幼いが、本当に受験するか?」
「「お願いします」」
「よし。手加減はしないぞ」
「はい、どうぞ」
お互いに礼をすると、戦闘が始まった。
フォルマーレ王女殿下が初手でいきなりヘルフレアを放つ。
A級冒険者組の青色ショートボブの魔法使いが、風魔法と水魔法を組み合わせたウォーターサイクロンを放つ。
ヘルフレアを相殺された直後、僕が一瞬でA級冒険者の長い銀髪の剣士に迫ると上段から真っ二つにするつもりで剣を振り下ろす。大振りな攻撃は避けられたが、僕は胴を狙って片手剣を横にし放つと寸止めをする。王女殿下は風魔法と風魔法を組み合わせてウインドカッターサイクロンを放つ途中で魔法陣を消した。
「くッ、参りました」
A級冒険者が膝をついた。僕たちは、魔物退治の資格を手に入れた。
「さすが聖女殿下です。そのお歳であれだけの魔力を行使出来るとは」
「皆さんも凄かったですわ。まさに英雄と呼ばれるに相応しい戦闘でした」
「王女殿下は彼らをご存知だったのですか?」
「何回か謁見の間で見たことがありますわ。龍殺しの称号を持ってますのよ」
フフンと、王女殿下が自慢する彼らに嫉妬してしまった。
「きみが聖女殿下の勇者だね」
「はい、他にも勇者はおられるのですか」
「一応、僕が王国の勇者の称号を持っているよ」
「そうなんですね」
僕は気分を持ち直すと、勇者様に宣言した。
「フォルマーレ王女殿下の勇者の座はお譲りしませんので」
勇者は口を開けてポカンとする。
「フフ…ハハハ! ああ、了解した。聖女様はきみに任せよう。ただし、必ず守りきることが条件だ」
「言われずとも、我が王女殿下の安全は僕が保証いたします」
「若いことは素晴らしいね。根拠のない自信を躊躇なく他人にひけらかすことが出来るんだから」
王女殿下が反論した。
「アルコバレーノ様の実力は本物ですわ。魔王でさえもきっとアルコバレーノ様が退治してくれるでしょう」
面白そうな顔をする勇者が言った。
「いいだろう。勝負をしようじゃないか。僕とアルコバレーノくんどちらかが先に魔王を退治したら唯一無二の勇者を名乗ろう。どうかな? 乗ってくれるかい?」
僕は即答した。
「はい!是非!」
楽しんで頂けたら評価をお願いします。
つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。
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