↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/54

別視点 フォルマーレ

私は王国の女王になった。でも胸にぽっかり大きな穴が空いていた。


父は健在のまま私を12歳で女王にした。


父は忙しければ彼のことは忘れると言った。


私は5歳から10歳の頃が未だに忘れられない。


あの時は何も考えずにいられた。


あの頃は自分の人生で一番幸せだった。


一番輝いていた。


私は未来が分からなくなったあの日、王国の女王を辞める決意をした。


未来が分からないので……攫われた。


先の見えない不安の中で、やっぱりあの人は助けに来てくれた。


「大丈夫ですか? フォルマーレ様!」


頭をそっと撫でられる。


「フフ……」


私は安心して微笑んだら、デコピンをされた。本気でデコピンされれば、頭が吹き飛んでしまう為に、場を和ませようとしているのはわかっているのだけれど、あまりにも痛すぎましたわ。


「わざと攫われましたね?」


わざと攫われるわけがありませんわ。もしかしたら命を失うかもしれませんのに。


「チガイマスーワザトジャナイデスー……」


私を攫ったのは、やはり王国のチェロ・ソーニョだった。


チェロ・ソーニョはアルコバレーノ様の弟だ。そして転生者だ。


チェロ・ソーニョはあくまでもゲームの流れを重視している。


チェロ・ソーニョの放った間者を処刑して、王国から宣戦布告のような書状が届いたのを見ただけで、妹からチェロ・ソーニョに権力が移っているのが分かる。西の公国から逃げ出した貴族連中も絡んでいるのだろう。


私は妹の身の安全を確かめる為、王国に一時帰郷することにした。


アルコバレーノ様との二人旅だ。


二人旅……そう考えただけで顔が熱くなる。


「フォルマーレ様、そろそろ出発しますよ」


今日は世界樹の下のダンジョンで、レベルを上げる日だ。


ダンジョンの一層目早速蟻の女王がいた。


蟻の女王は、迷宮一回にびっしりと卵を植え付けている。


アルコバレーノ様が蟻の女王を倒し、私は蟻の卵をレイピアで一つ一つ串刺しにしていく。


卵にはまだ魔石が無いので、アンデッド化する不安はない。


「フォルマーレ様!終わりましたわ」


アルコバレーノ様はその赤い目で人の能力が数字で分かるらしい。ゲームでは無かった能力だ。


「85レベルですね。まだまだ行きましょう」


アルコバレーノ様は中々にスパルタで、レベルが300いくまで49回も蟻討伐を繰り返した。


「はあはあ、流石に疲れましたわ」


「それじゃあ、最下層に向かいますよ」


最下層には巨大なドラゴンがいた。


私はこれを倒すのかと思ったが、違った。


どうやら道を譲ってくれるらしい。


本能がこのドラゴンを拒絶する。今すぐに逃げるべきだと。


しかし、ドラゴンは私を襲わなかった。


階段を下りると、そこには魔法陣があった。魔法陣の上に立つと、服がオリハルコンのショートドレスへと変わっていく。レイピアもオリハルコンに変わった。


「アハハ、凄い、なにこれ!」


「フォルマーレ様に適した防具に姿を変える仕組みになっています」


地上へ戻ると、アルコバレーノ様が小さな幌馬車を引いて来る。


「これに乗っていきましょう。小さいですが、軽い分スピードは速いです」


フォルマーレ様は中でゆっくりとしていて下さい。


「私も御者台に乗りたいですわ。駄目かしら?」


「構いませんよ。一人で馬車を繰るのも退屈ですしね」


※※※


「……」


「……」


「アルコバレーノ様、何か話して下さいませ」


「……フォルマーレ様は、僕が要塞に行った時どのようなことを考えていましたか?」


「アルコバレーノ様が帝国の要塞に行かれた時ですか?」


「ええ」


「私は……情けない話ですが、ずっと泣いていましたわ」


「泣いていたのですか?」


「あら、意外かしら?」


「ええ、フォルマーレ様は強い人だと思っていましたので」


「強いから放っておいてもよかったって話かしら?」


「いえ、そういうわけでは……」


「アルコバレーノ様がいなくなってから空虚でしたわ」


「それではなぜ、僕を帝国の要塞へと送ったのですか?」


「アルコバレーノ様が赤目になったからですわ。赤目になれば、王国に置いておけば命を狙われます。当時は女神王国領ではなく、魔王国と呼ばれていました。魔王国には赤目がたくさんいます。魔王国と国境を接する帝国の要塞にも赤目とのハーフがたくさんおりました。魔王国には当然伝手は無く。帝国に頼んで要塞に送って頂いたのです。帝国でもまだ差別の少ない要塞に」


「そうですか」


「私も考えていたのですよ。アルコバレーノ様が帝国で生きていられるか? どこに送れば幸せになれるか? アルコバレーノ様が、ビアンカさんを連れてきた時、分かっていても絶望してしまいましたわ」


「……ごめん」


「あ、謝って貰っても困りますわ。アルコバレーノ様が幸せなら、それで良かったのですから」


アルコバレーノ様は申し訳なさそうに言った。


「ありがとう……ございます」


私は背伸びをした。


「うう~ん。もうなんだかどうでもいいですわ~」


「……」


「はい、そこ!無口にならないでくださいませ!」


「何を話しましょうか?」


「とりあえず、アルコバレーノ様が要塞を出た後のことを教えてちょうだい!」


「は、はい!」


ここからまた始めましょう。アルコバレーノ様の隣に誰が居ようと、私がアルコバレーノ様を想う気持ちは何も変わらないのですから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆☆☆☆☆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。