僕とフォルマーレ様②
僕らは帝国要塞まで向かう。
僕らは暖かい服を着込み、馬車を走らせる。馬車は帝国の要塞がある関所へと着いた。
そこで働く人物に僕の知り合いは一人もいなかった。
「通ってよし!次」
前の馬車が要塞の門をくぐって行く。
「む、赤目か……」
「隣のお嬢さんは……」
フォルマーレ様がブレスレットに描かれた王国の紋章を関所の門番に見せつける。
先輩門番が後輩門番の後頭部を鷲掴み、共に90度のお辞儀をした。
「どうぞ、お通り下さい!」
フォルマーレ様は僕に自慢気にブレスレットを見せつけて満足していた。
僕は馬車を走らせる。
要塞を抜けると、2週間後の夜中に帝都に着いた。
帝都は0時を回っているのに、未だ賑やかだった。宿屋は帝都の高級宿屋に予約した。食事を取る為に二人して外に出るが、屋台はあちらこちらで人々が食事をしていた。
「こんな時間まで賑やかですわね」
「何かのお祭りでしょうか?」
「ちょっといいかしら?」
「なんでい」
フォルマーレ様は不用意にも気性の荒そうな男に声をかけた。
「今日はお祭りか何かですの?」
「ブアハハハ!お祭りじゃねえよ。これが帝国の平常運転さ。魔王という脅威が去って平和になったんだ。皆羽を伸ばしてるのさ」
「そうなのですね」
「姉ちゃん美人だな。一緒に飲まねえか。一杯注いでくれよ」
男がフォルマーレ様の袖を掴む。僕は反射的にその腕を握り一本背負いをした。
「僕の大切な人に、触れることは許せません」
男よりも、フォルマーレ様が唖然としていた。
「アルコバレーノ様……」
「てめえ、なにしやがる!」
僕は男4人に囲まれた。僕は冷静にゆっくりとした男達の攻撃を避け、顎に一発ずつ入れていく。
脳震盪で倒れた4人に回復魔法をかける。
「まだやりますか?」
「チッ!酔いが冷めちまったぜ。おい、飲み直しだ」
男4人組はテーブルを離れ、僕らから遠くのテーブルに座った。
僕らは二人、さっきまで男達が座っていたテーブルに腰を落ち着ける。
「屋台を回りましょうか」
「そうですわね。美味しいものが見つかるとよいのですが」
僕らは屋台を巡る。
屋台には肉串から昆虫食まで様々な物が並んでいた。僕らは無難に肉串や唐揚げなどを買ってテーブルに並べた。
「唐揚げがこんなに美味しいとは思いませんでしたわ」
「フォルマーレ様は唐揚げのことを知っていたのですか?」
「ええ、前世で食べましたわ」
「とても美味しいですけど、まさか店主は転生者でしょうか? 僕は唐揚げというものを知りませんでした」
「そうかもしれませんね。ですが、転生者だとしても、気にする必要はないですわ。誰にも迷惑かけず、自分の力で生きている人々を転生者であるとして拒絶することは間違いです」
「いえ、拒絶するつもりはありませんでしたが……いや、そうですね。僕の中に転生者への偏見があったのは確かです。以降気をつけます」
「構いませんわ。王国の勇者には散々やられましたからね。でも、信じてください。私はあなたのことを……愛していますわ」
「僕も……フォルマーレ様を心のどこかで想っているのだと思います……たぶん」
目を見開いて僕を見つめているフォルマーレ様。涙がその頬を伝ったので、僕は指で涙を拭った。
「あ……」
フォルマーレ様は頬を赤くし、固まっている。
「あなたが別世界の人であれ、ゲームのNPCがAIになったのであれ、どちらでも構いませんわ。あなたの気持ちをきっちり伝えて頂いて、とても嬉しいです」
「……えっと、そうですね」
僕は頭を掻く。
フォルマーレ様は再び涙を流す。僕はハンカチをフォルマーレ様に渡した。
「ビアンカと同じくらい愛しています。だから、困ってるんです」
「アルコバレーノ様は女神王国領の貴族になったのでしょう? でしたら、正室と側室がいてもいいと思いますわ。私は側室で構いません」
「フォルマーレ様が側室ですか。一国の女王様に不敬ではありませんか?」
「女王は辞めてきましたと言ったではありませんか」
「そうでしたね」
「……あら、肉串がしょっぱいですわ」
泣きながら肉串を頬張るフォルマーレ様。僕は涙を流して喜んでくれた彼女を椅子を挟んで、後ろから抱き締める。
首に回した僕の両腕を、2つの手でぎゅっと握りしめるフォルマーレ様。
「今日はいい日ですわね」
「月が綺麗です」
「ほんとですわ。あなたと見るから綺麗なのです」
「フォルマーレ様も綺麗です」
「恥ずかしいですわ」
フォルマーレ様は身をよじる。
僕は、フォルマーレ様を抱き締めると、自然と口から出た言葉を噛みしめた。
「フォルマーレ様、ビアンカはエルフです。僕は普通に生きると、あっという間に死んでしまいます。フォルマーレ様も僕と同じ人間です。フォルマーレ様は僕と同じ時期に亡くなることでしょう。そしたらビアンカが一人になってしまいます。だから、もう一人エルフの中からパートナーを選ぼうと思うのですが」
「フフ、もう誰か思い浮かぶ人がいますわ。気にしなくて構いません。アルコバレーノ様はアルコバレーノ様の好きなように生きればよいのです」
フォルマーレ様はにっこりと微笑んでくれた。




