僕らは10歳になった
読んで頂きありがとうございます。
励みになります。
僕らは10歳になった。
「アルコバレーノ様、準備は出来ましたか?」
僕は制服に着替えた。そんな僕を見て、目をキラキラさせるフォルマーレ王女殿下。黙って僕を見つめる。
「あの…変ですか?」
「とんでもない! 美し…麗しいですわ!」
殿下は顔を真っ赤にしてヘッドバンキングのようにブンブンと頭を立てに振った。僕はクスリと笑う。
「それは僕の台詞ですよフォルマーレ殿下」
僕は王女殿下の片手を取り、ハンドキスをする。
王女殿下が目を回して、顔から煙が上がるように見えたのは気のせいだろうか。
「それにしても、アルコバレーノ様はお母様似なのですね?」
「なぜです?」
「黙っているとお顔がとてもお綺麗な女性のようですわ」
「母に似ていると言われるのは嬉しいです。殿下は紛れもない美人ですが」
「もう、私の話はよろしいですわ」
「そうですか? 10歳で既に傾国の美姫のようですよ」
「アルコバレーノ様も、10歳にして人たらしですわね」
「そうでしょうか?」
僕は腕を組んで顎に手を当てる。
「自覚がありませんが」
そこへ、セバスティアーノが迎えに来た。
「アルコバレーノ様は間違いなく人たらしです」
「セバスティアーノまで」
「私めはアルコバレーノ様に心酔しております。これから幼年学校に入れば、痛いほど証明されましょう。さあ、参りましょうか」
フォルマーレ王女殿下もうんうんと頷く。僕が王女殿下に手を差し出すと、王女殿下はその手を取った。
「では、行ってきます」
※※※
幼年学校は、城よりも小さいが、それでも王都で2番目くらいには大きな建物である。馬車を降りると、僕とフォルマーレ王女は学校を見上げた。
「学校って、随分大きいもんなんだな」
「国内中から貴族の子弟が集まって参りますから、それなりに大きいのです。他国の王族も、留学に来るほどですわ」
「そうなんですね。あれは?」
僕の視線の先には、学校の制服を着た少女が、同じように学校の制服を着た少女に髪を掴まれ引きずり回されている姿があった。
「いじめですわね。助けましょう」
僕らがいじめの現場に向かうと、フォルマーレ王女殿下を見たいじめっ子たちが散り散りになっていった。残された髪を引きずっていた少女と、いじめられていた子だけが残った。
「あなたはこの国の貴族として恥ずかしくはありませんの?」
王女殿下の顔を見た少女が顔を引きつらせる。
「こ、これは、分不相応な平民が私の靴を踏んだのが原因ですわ」
「靴を踏んだ? 本当ですか?」
いじめられていたショートボブの眼鏡の女の子がおずおずと答える。
「はい、靴を踏んだのは本当です。ですが、決してわざとではありません」
「ふん! どうだか!?」
「本当なんです、信じてください」
フォルマーレ王女殿下が互いの顔を交互に見つめる。
「靴を踏んだのはあなたの落ち度です。ですが、ここまでやる必要はありません。謝罪の一言があればよいでしょう」
「私はちゃんと謝りました」
いじめっ子の赤髪の長髪の女は歯噛みする。
「これからは言葉のみで解決するように。良いですわね」
赤髪の長髪の女、カーテシーをして答える。
「王妃殿下の発言です。しかと受け止めました。あなたもごめんなさい。やり過ぎましたわ」
「あ、謝っていただければ…充分です」
「皆さまも、どうかよろしくお願いしますわ! 身分の差で人を虐げるのはお止めになってください。私たちは共に同じ学校に通い、切磋琢磨していく仲間です。一緒に国の為に貢献していきましょう」
「さすが聖女様!」
「見目も麗しく正義感の強い方!」
一部の貴族以外が拍手をする。一部の貴族は、さっさと学校の中へと入っていった。中には舌打ちする者もいたが、誰かは確認出来なかった。
僕は王女殿下に学校へ入るよう促す。
「王女殿下、そろそろ門限です。行きましょう」
「そうですわね、さあ、あなたも参りましょう」
平民の女生徒に手を差し出す王女殿下。王女殿下の手を取った少女は惚けていた。
※※※
学園に入ると、クラス分けの為に試験があった。
「これはこれは、聖女殿下。殿下の試験を出来ることを光栄に思います」
「お手柔らかにお願いしますわ」
皆王女殿下には優しいが、僕には厳しい視線を向けてくる。
「本来はそれぞれ4大魔法から一つの魔法を使ってもらいますが、聖女殿下は4大属性+聖属性魔法を使われるのですよね。どうか我々に魔法を見せていただけたらと思います」
「よろしいですわ。まずは何をすればよくて?」
「何でも良いので、属性魔法一つずつをあの魔核にぶつけてください」
「あれが魔核ですか? 大きすぎじゃありませんか?」
「A級冒険者たちが、魔族の地にて魔龍を倒した時のものです。どれだけの魔力をぶつけてもびくともしません。ですが、より強い攻撃を受けると色を変えます。緑が最弱、赤が中級、紫が最上級の色を示します。では、殿下の得意な魔法をぶつけてみてください」
「それじゃあ、いきますわ。ウインドカッター」
魔核が緑色に点滅する。
「ウォーターソード」
魔核が緑色に点滅する。
「アースクエイク」
魔核が赤く点滅する。
「ヘルフレア」
魔核が紫色に点滅した。
試験官の白髭のおじいさんが髭をしごく。
「ふむ、学園の教師でも紫色に染めるのはわしと副校長くらいなのですが…10歳にして、とても強い魔力をお持ちで」
「では、そこのインカパーチェ(無能)。お主の魔法を見せてもらおうか」
「な、校長先生であってもそれは失礼が過ぎますわ。校長自ら試験をしてくれるからと正しい判断を期待してましたが、残念ですわ」
「構いません。それじゃあ、行きます」
僕は大剣をを手に持ち構えると、百メートルは離れている魔核に一瞬で肉薄し、袈裟斬りで真っ二つに割った。デーモンコアは紫色に明滅している。
「なんじゃと…」
校長が目を見開いた。
「…う、うむ、失礼した。さすがは聖女殿下が選んだ勇者じゃ」
周囲がざわめく。その波が本人にまで届いた。
僕はフォルマーレ王女殿下の前に膝をつき、手を取りキスをした。
「僕は期待に応えられたでしょうか?」
王女はフフと笑う。
「ええ、見事な結果ですわ」
「ありがとうございます」
校長が手をパンパンと叩くと、クラス分けをしていく。
僕と王女は最上位のSクラス…ではなかった。いや、王女はSクラスだったのだが、僕は最低クラスであるFクラスになってしまった。
燃えるような赤い髪の男が、机に足を乗せて僕に声をかけた。
「よう、勇者様は俺たちと同じ最下位クラスか」
クスクスと周りから笑い声が伝播していく。
Fクラスには平民しかいない。
伯爵家出身で魔族を倒せる力を持っていても、四大魔術が使えなければ、無能扱いされるようだ。
僕は赤い髪の男を無視して、一番前の席に座る。そこへ、先ほどの男がやって来る。
「よう、俺の名前はロッソだ。アンタの名前は?」
「僕はアルコバレーノだ。よろしくね」
僕はニコリと微笑んだ。
「あんたさあ、四大魔術持ってないんだってな。それでよく学校に入れたもんだ。聖女様のコネってやつか?」
僕は少し沈黙した後答える。
「うーん。そうかもね」
「あんた情けない男だな。認めちまうのかよ」
「四大魔術が使えないのに、四大魔術が必須の学校に受かったんだから。そうとしか言えないよ」
僕はフフフと笑った。
ロッソが僕の顔に拳をぶつけてくる。身体強化無しでも痛くも痒くもない。
「うーん。僕は四大魔術師の倒し方を勉強しに来たんだ。魔族を倒す為にね。その時はよろしく」
「チッ」
舌打ちするとロッソは自分の席に戻って行った。
楽しんで頂けたら評価をお願いします。
つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。
<(_ _)>




