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断罪

 世界樹の麓の村へと帰って来た。


 僕らの代わりにビアンカのお父さんが果樹園を運営してくれていた。


「アルコバレーノくん……果樹園って凄いんだね」


「はい?」


「い、一ヶ月で金貨500枚になったよ」


 ビアンカのお父さんが金貨500枚入った袋をおずおずと渡してくる。


 僕はその場で半分ほどの金貨を渡した。


 畑の調子も良いし、ノームの調子も良い。よく手入れされたことが窺える。


「お父さんのお陰で助かりました。受け取ってください」


「こんなに貰えないよ……」


「お父さん、貰えるものは貰っておくこと。ビアンキ家家訓」


「うん。そうだな。なら、貰っておくことにしよう」


 お父さんの調子も良かった。


 ※※※


 村人から収入源を増やすアドバイスが欲しいと言うので、スイーツやお弁当にして売る方法を提案してみた。これが探求者や世界樹の町の人々に受けて上手くいき、村の収入は倍増した。こうして村は一大テーマパークとなっていった。


「女神様も来られてたんですね」


「むう、むぐぐ……」


 女神様は栗鼠のように果物を頬張っており、喋れないでいる。


「むぐぐう……むぐむぐ」


「呑み込んでからで結構ですから」


 僕が女神様にそう伝えると、女神様は顔を真っ赤にして答えた。


「もう……大丈夫です……ンく」


「それにしても、美味しい果物ですね」


「ノームに手伝ってもらってるんですよ」


「鹿の角みたいなのが生えてる子達が、ノームなのですね」


「リンゴを与えると進化するみたいですよ」


「私のノーム達、『現れて』」


 五十匹くらいのノームが現れてくる。


 リンゴをもぎると、一匹一匹に与えていく女神様。一匹一匹のノームに鹿の角が生えてくる。


「あら、皆可愛くなっちゃって」


 ノームは普通のモグラと違ってクリクリとした可愛い目がある。


「フフ、今日はあなたに大事なお話があってきたんです。王国の勇者パーティーは処刑されることになりました」


「まあ、妥当だと思います」


「処刑の日は、今日から三日後の12時、断頭台にて処刑されます」


「処刑の前に、勇者パーティーと会うことは出来ますか? 肝心の勇者がまだ捕まっていませんから」


「ええ、出来ますよ。面会してみますか?」


「はい、お願いします」


 その瞬間、僕の中から感情が消えた。


 要塞のみんな、僕に特に良くしてくれたビスタに白目の奥さんのマードレ、娘のクオーレ。あの三人は無事だろうか? 僕はゾンビになった人達をみんな灰にしてしまったが、彼ら家族は帝国で生きていてくれたらなんて思う。


 僕は激しい怒りと共に、牢屋へとやって来た。


 牢屋に着いてきたのはビアンカと女神様の二人だ。女神様が衛兵を下がらせる。


 牢屋にいた三人組は憔悴していた。


「女神様食事は出されているのですか?」


「食事は与えてません。帝国の要塞は、食糧もまともに取れない大地だと教わりました。同じ思いを知ってもらおうと思いました」


「確かに、配給もぎりぎり生きていけるかどうかだったはずです。彼らが殺した方々の中には、食糧を食べ始める前の乳児もいました。ですが、彼らには食事を与えてあげてください。食べられることが出来ないのは、さすがに辛いですから」


「お優しいのですね?」


「いいえ、僕らがこんな外道に堕ちない為です。お願いします」


 僕は彼らに尋ねた。


「なぜ要塞の人達を襲った」


「あんたを殺す為に決まってる」


「そうじゃない。なぜ僕じゃなくて、他の『人間』を殺したんだ。要塞の人達を操ることくらいなら出来ただろう。なんせ転生者様なんだから」


「『人間』だと。クク…奴らは人間じゃねえ。魔族だ。魔族が何匹死のうが、俺達には関係ねえ」


「じゃあ、魔族からしたらあなたたちは、害虫ですね。駆除対象かと」


「貴様!魔族風情が何言ってやがる!」


 女神様が口を挟む。


「本当に、彼らに食事を与えますか?」


「はい。処刑されるまでは。最後の晩餐ですから」


「では、誰かある!」


「はっ! ここに」


 衛兵が飛んできて女神様の前に膝をついた。


「彼らに食事を」


「は? よいのですか」


「彼らに最後の晩餐を」


「はっ!」


 衛兵は下がっていく。僕も続いて下がる。


 牢屋の中、肉を頬張る勇者パーティー達。


「ククク、女神様はお優しいぜ」


「そうですね。まさかこんな豪勢な料理を並べてくれるなんて」


「わしの最後の晩餐でもよいわ」


 腰の折れた老人が、食事が終わったと共に魔術を使った。


「『影の埋没』……ん? なぜじゃ、魔法が使えん」


 女神様が呟いた。


「あなた達は逃しませんよ」


「なぜじゃ! 勇者とは話がついてたはずじゃ!」


「勇者を魔王が助けると思いますか?」


 勇者が水晶から出てきた。


「図ったな! 魔王!」


「図ってなどいません。最低でもあなたを処刑しないと、主人公は私の元へ来ないことが分かっただけです」


 ※※※


 三日後、断頭台。


 断頭台に送られる王国勇者パーティー。後ろ手に鉄の枷を嵌められている。猿轡もされていた。


 僕は王国勇者パーティーの処刑を見に来た。ビアンカも一緒である。


 女神様が処刑台の上で演説する。声はシルフの『拡声』魔法で大きくしている。


「皆様、彼らは非常にも、私達と身近にあった赤目の要塞を滅ぼすどころか、死後の彼らに神級モンスターの魔核を埋め込んで、あまつさえゾンビ化し私達の国を襲わせようとしました」


「「「なんだと」」」「「「ふざけるな!」」」


「お静かに! 今から処刑をしますが、これは慈悲です。本来なら死ぬまで操って奴隷とします。ですが、私達赤目は白目に対して慈悲を与えるのです」


「白目の偵察隊員はよく覚えておきなさい。私達は同胞を死に追いやった白目に慈悲を与えます。国に帰ったらどうか伝えておいてください。私達赤目は被害者です。そして、魔族なんていないということを。私達は女神王国領、女神が治める土地です」


 世界樹の花々が咲いて降り注ぐ。これは、掌サイズの桜みたいな花だった。


「女神と言われるのは少し恥ずかしいですが、この女神が命じます。彼らに処刑を」


「「「処刑!処刑!」」」


 断頭台が三つ落ちてくる。


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!と落ちた。女と男と老人の首が転がる。最後にドンッと落ちると水晶が砕かれ、そこからは王国勇者のバラバラ遺体が落ちた。


 歓声と共にヒューヒューと口笛が響く。


 僕は安堵した。王国の勇者が目の前で死んだことで、ビアンカや元最南端の村人が襲われずに済んだからだ。人の死に慣れ過ぎたか。怒りも憎しみもそこにはなかった。


 僕は軽く手を合わせる。


「ビアンカ、行こうか?」


「……ん、行く」


「待ってください、アルコバレーノ様。壇上に」


 僕はなぜか呼ばれたので壇上へと上がった。


 僕が壇上へと上がると、場が静まり返る。


「今回この方がいたからこそ、王国の勇者パーティーを捕まえることができ、処刑することが出来ました。この方は名をアルコバレーノ。この女神王国領の勇者様です」


「「「うおおおおおおおおッ!」」」


 と一同がどよめく。


「この方がこの国にいる限り、白目に国が脅かされることはありません!」


「この方がいる限り、この国が滅ぼされるようなことは絶対にありません!」


「私達は王国や帝国と近いうちに戦争を始めるでしょう。それはいつもの戦争ではなく、この大陸を誰が支配するかという戦争です」


「みなさん、怯えないでください。私達は必ず勝ちます」


 女神様は次に偽勇者パーティーもとい、女神王国領の勇者パーティーを処刑台に上げた。


「私達には、白目の味方もいます。彼らもまた勇者と呼ばれる存在です。その実力は、一騎当千です」


「「「おい白目だぞ」」」「「「信じていいのか?」」」「「「でも女神様が勇者だって言ってるし」」」


「疑いたくなる皆さんの気持ちはわかります。ですが、彼らもまた、ダンジョン踏破した女神王国領の勇者様なのです」


「「「うおおおおおおおッ!」」」


「俺は探求者ギルドで見たことあるぜ。依頼をこなしたら、必ず探求者ギルドで飯を皆に奢ってくれる勇者様だ」


「スラムの連中にも炊き出ししてるしな」


「ぼくもご飯食べさせてもらった」


「わたしも」


「あっしも」


「女神王国領には勇者様が二人います。どうか、私達を信じてついて来て下さい」


「赤目と白目が共存出来る方法を探しましょう」


「「「うおおおおおおおッ!」」」


 こうして女神王国領と南の帝国、王国の戦いが始まるのだった。


続きは一週間をめどに考えています。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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