世界の半分を分け合おう
女神王国領の最南端に来た僕とビアンカと女神王国領の勇者達。
ゲネラール大将と正規軍三千と共に、最南端へ。
最南端の村は既に避難済みだったので被害は無かったが、国境線を守る兵士たちがボロボロだった。理由は、ゾンビ一体が神級モンスター一体と同じ力であるからだ。
皆記憶にある顔だった。要塞で生活してた人達だ。
誰かが要塞で起こった先日の帝国の裏切りという内戦で亡くなった人たちと、要塞で生き残った人達を殺し、両方に神級モンスターの魔核を埋め込んだのだ。こんなことをするのは、一人しか思いつかない。
王国の勇者の仕業だ。
僕はギリッと歯を食いしばった。彼は僕を嵌めて、帝国の要塞へと追い込んだ。もしかしたら、帝国に要塞を襲わせたのも王国の勇者かもしれないという憶測が生まれてきた。
僕らは、四大精霊イフリートでゾンビを焼却しつつ魔核を回収していく。
さすがに女神王国領での正規軍とあって、あっという間にゾンビを燃やし尽くしていく。
要塞に住んでいた3万人を焼却してようやく終わった。
魔核を残して灰になったので、魔核を埋葬していく。
ゲネラール大将が尋ねる。
「アルコバレーノ殿、要塞の兵達はこれで全部か?」
「要塞で暮らしていた家族を含めて全部ですね。いや、一部足りないですね」
「そうであるか。なんと非常なことをするものだ。王国の勇者というのは」
「今度こそ要塞の人達がゆっくり眠れますように」
僕らは手を合わせた。
「みーつけた❤」
「王国の勇者!」
要塞の壁を壊して、王国の勇者が現れた。
「そろそろ魔力が尽きた頃じゃないの! 主人公くん!」
「あんたも転生者か!」
勇者の片手剣を僕の大剣で受け止める。
「へえ、オリハルコン装備か! それも奪っちゃおうかなあ」
片手剣を受け流すとそのまま短剣で僕の腕を落としに来る。
僕はウンディーネを呼んで酸の雨を降らす。
王国の勇者は、短剣をグルグル回し酸を弾く。
僕は次いでイフリートを召喚した。イフリートの『青のフレア』で王国の勇者の短剣を溶かす。
「ハハ、脆い短剣だなあ!」
王国の勇者は炎の剣を空間魔法から取り出す。
炎の剣はイフリートの『青のフレア』を吸収して青い剣に変わる。
「きみの炎を返すよ。ほらッ!」
青い剣が僕の腕を落とす。大剣が一緒に落ちる。
「アルコバレーノ!」
ビアンカが白魔術で僕の腕を生やす。
僕は生えた腕で大剣を握り直し、王国の勇者に頭上から大剣を叩きつけた。
王国の勇者の身体の下半身が埋まる。
僕はノームに『泥沼』の魔法を使わせていた。
「くそッ!」
僕は王国の勇者の首と胴を切り離す。
しかし、
勇者の首が生えてくる。
「な~んて、ねッ!」
王国の勇者はシルフの魔法を使い宙に浮く。
「俺にも四大精霊が使えるんだよ!」
「お前さー!俺を舐めてるだろー!」
僕は身体強化で雷のスピードで動く。同じスピードで王国の勇者が動いた。
「この世界に生まれ変わってさー! 世界征服したいと思ったら主人公が邪魔になるじゃんかー! じゃあ、努力するよねー!」
「前世の俺の知識で出来るだけの努力をしようと思ったわけよー!」
「そしたらさー! 転生者がごろごろいるんだぜー! どうなってんだよ、ほんと」
「わがまま王女が聖女とか言われてるしよー! 魔王が女神って言われてるしよー!」
王国の勇者が早すぎて僕は返事をする余裕がない。
「チッ! 全力でも着いてきやがるか」
「お前も思った以上に厳しい人生過ごしてきたみてーだな!」
僕もまたシルフの魔法で宙に浮くと、王国の勇者の上から大剣を叩きつけて地面に落とした。
「ぐはッ!」
大剣を胸に刺す寸でのところで止めた。
「くそッ!」
僕は勇者の心臓に止めを刺した。
煙のように消える王国の勇者の身体。
「今回は私たちの負けよ」
水晶を持った女と大きな盾を持った男が目の前に立っていた。煙が水晶に吸い込まれていく。
「今度は王国の勇者が直接あなたを倒しに来るわ。赤目ごときに負けないんだから」
「まあ、そうだな。今回は負けを認めてやる」
「ほら~俺たちが戦っても勝てないんだから早く逃げるぞ~」
影が女と男を吸い込んでいく。
「王国の勇者の仲間だ」
僕が目で影を追うと、影と目が合ったので操ってみた。影が王国の勇者の仲間を吐き出すように出してくる。影もまた腰の曲がった老人のような人物に変わった。
「彼らを連れて帰りましょう」
ゲネラール大将が言った。
「王国の勇者を釣り出すのだな」
「はい」
彼らの瞳からハイライトが無くなり、言いなりの人形が出来た。
「一緒について来てもらうよ」
「「「はい、仰せのままに」」」
「じゃあ、帰りましょうか?」
女神王国領王都に戻って来た。ビアンカや女神王国領の勇者パーティーも勿論一緒だ。
「ただいま戻りました。女神様」
ゲネラール大将が膝をつく。僕とビアンカ、女神王国領の勇者パーティーが後ろに控える。王国の勇者パーティーは牢屋に入れた。
「無事で戻ってきて本当に良かったです。要塞の皆さんはどうでしたか?」
「全滅でした」
「そうですか……それは……」
しばらく全員沈黙する。
「王国の勇者にはそれなりの罰を与えるつもりです」
長い沈黙の中、僕が呟く。
「人質も連れてきましたから」
女神陛下が答えた。
「勇者は仲間たちを取り戻しにくるかしら?」
「勇者一人では世界征服は無理でしょうから」
「世界征服……ですか?」
「はい、勇者が間違いなく話しておりました」
ゲネラール大将が答えた。
「王国の勇者が一番危険かもしれませんね」
王女が返事をする。
僕は呟いた。
「王国の勇者がどこまで本気で考えているかわかりませんが」
手をパンパンと叩く女神陛下。
「考えていても仕方ありませんわ……私たちは深刻な事態にならないよう防ぐだけです」
「解散しましょう。皆さんお疲れでしょう。今日はお家でゆっくりして下さい」
※※※
女神様は、王城の地下牢へとやってくる。そこには、王国の勇者パーティーがいた。
衛兵を下がらせる。
「王国の勇者、そこにいるのでしょう」
女神様は水晶に向かって話しかけた。
「チッ! やっぱりあんたも転生者か」
「『複製魂魄』を使っている時点で簡単にわかりましたわ。あなたも世界征服を目指しているのでしょう」
「やっぱりあんたも目指しているんだな。だったら俺と共闘しようぜ。あんたには世界の半分をくれてやるよ」
「フフ……アハハハッ! それは魔王たる私の台詞でしょう!」
「あんたはやっぱり魔王なのか」
「ゲームの中で女神様なんて聞いたこともないでしょう? 飢餓の無い世の中にしようと思ってますが、全ての人間を救うのは無理ですわ」
「この世界の主人公はやたら強くなってるぞ。それも全部あんたらのせいだろ」
「私達のせいにするのは間違いでしょう。あなたが主人公を帝国の要塞に導いたのですから」
水晶から王国の勇者が現れる。
王国の勇者はパチンッ! と指を鳴らし、王国の勇者の仲間を目覚めさせた。
勇者の仲間の瞳にハイライトが戻り、自我を取り戻す。
「あれ、私達は帝国の要塞にいたはずじゃあ?」
「お前らはこの世界の主人公に操られていたんだ」
「それで牢屋の中なのね」
「ああ、だが女神様の温情によってすぐに出られる」
「待ってください。あなた達を解放するとはまだ言っていませんよ」
「なに? なんか条件が必要なのか? そうだよな。あんた魔王だもんな」
「条件は一つですわ。主人公を必ず私の物にすること。それだけは譲れません」
「あん? 主人公を生かしておくのか?」
「ええ、あんなに綺麗な男性は他にいないでしょう。私のタイプなの」
「物好きな婆だな。主人公は確実にあんたを裏切るぞ」
「それは出来ません。だからこそ、世界樹の麓に彼らの村を移転させましたから」
「村人が人質か、あんたも俺並みの悪人だな」
「せっかくゲームの中に転生したんですもの。楽しまなきゃ損です」
女神と王国の勇者は二人して笑い合った。
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