表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/35

奪い取ってやる

 帝国のチェーザレ王子、三歳から伝書鳩が届いた。


 内容はざっくり言うと「帝国の暗部になるか」という話の答えを問う文章だった。


 僕は女神様の元に向かった。


 ※※※


 城へ向かうと、顔パスで入れてくれた。


 豪奢な椅子に座る白金の長い髪の見目麗しい女性。女神様だ。


 僕はその前で膝をつく。


「陛下、帝国の王子からこのような手紙を受け取りました」


「あらあら、こんな手紙を私に渡して良かったのかしら?」


「僕は今、女神王国領の民です。帝国からの手紙を陛下に検閲してもらう必要があります」


「そうですか」


「話は女神王国領の好戦派を消してくれとのことです」


「そうみたいですわね」


「では、女神様。この国で一番好戦的な貴族は誰ですか?」


「コンフィーネ子爵ですわね」


「コンフィーネ子爵は、国境線を接している貴族ではありませんか」


「ええ、コンフィーネ子爵は国を思う英傑です。西の公国と長年戦争しています」


「南の帝国と、更に南の王国とは貴方がこの間和平を申し込みましたから」


「後は東の連合国ですね」


 東の連合国には高い山があり、直接行き来するのは難しい。


「西の公国も疲弊しているのではありませんか?」


「ええ、西の公国はここ数年続く飢饉で一揆が起こっているとか。ここ数年難民が押し寄せています」


 あの時のスラムの白目達のことだろうか。いつか公国に帰る時の為に洗礼の儀を拒否するのならば仕方ないと思える。国に帰ると飢えて死を待つだけというのならば、わからないではない。


 南の帝国と王国との和平に漕ぎ着けたが、果たして信用なるものか。


「女神様……」


「はい、何でしょう?」


「南の帝国や王国とは和平が成ると思いますか?」


「一時的には平和が訪れるでしょう。しかし、あの国々は十年に一回は戦争を仕掛けてきますから。長い時を生きるエルフや赤目には毎週のように戦争を仕掛けてくるイメージでしょうか」


「そうでしょうね」


「それで、帝国王子の暗部にはなるのですか?」


「いえいえ、まさか……女神様がやったゲームの中には私が帝国の暗部になる未来もあるのですか?」


「ええ、ありましたわ」


「どんな内容か聞いても?」


「構いません。あなたが王国の姫君と結ばれた場合、人間視点からあなたはこの国を考えていました。そんなあなたが、帝国の王子と通じているのは考えられない話ではありません」


「陛下はそんな僕を疑いますか?」


「疑いませんわ。もし疑っているのなら、あなたの目をこんなに見つめたりしませんもの」


「十年間の和平の間に、赤目を認めさせる必要がありますね」


「和平交渉はその道のプロに任せるとして。あなたはこの先どう生きますか?」


「ビアンカと果樹園を経営していこうと思っています」


 女神様はクスリと笑った。


「何がおかしいんですか?」


「あなたはこの国の英雄になります。そんな方が、果樹園の経営者なんて可愛らしいことだと思いました」


 僕は無言で女神様を見つめる。


「ごめんなさい。失礼でしたわね」


「いえ、女神様に人間らしいところがあってホッとしていたところです」


 顔を真っ赤にする女神様。


「コホンッ。私も一人の人間ですから」


「そうでした。こちらこそ失礼しました」


 目を合わせて二人で笑い合う。


「帝国の王子もまた転生者でした。彼は僕がどう動くか知っていると思います。女神様は僕が王子の誘いに乗らない場合、どうなるかご存知ですよね?」


 真面目な顔になる女神様。


「あくまでもゲームの中の話ですが、あなたはビアンカを人質に取られて、私を殺すことになるでしょう」


「回避する道は?」


「ビアンカを見放すことです」


「では、僕は殿下を救えませんね」


「ゲームの中では……ですね」


「転生者の王子と話したところ、赤目を差別するようには見えませんでしたが?」


「同じ転生者ですから。悪い方向へは進まないでしょう」


「自分の身を守る為にならどうですか?」


「あなたは私を裏切りませんよ。それに、ビアンカを犠牲にはしません。ゲームの内容とは明らかに変わってしまったからです」


 女神様が文官から手紙を僕に渡すように顎をしゃくる。


「ゲームでは王国の勇者が、魔王国の最南端の村を襲うはずでしたが、南の村は既に王都内にありますし。どうも王国の王女と勇者の仲がとても悪いと聞きます」


「それは、僕にも理由がわかります。王国の勇者は勇者というより外道な方だと受け止めました」


「そうですね。ゲームの中でも悪いイメージしかありませんからね。王国を乗っ取る為に本当の勇者を追放しましたから」


「本当の勇者ですか?」


「はい。あなたのことですよ」


「僕が、本物の勇者……」


「王国の正規ルートでは、あなたと王女が結ばれてハッピーエンドになるのです。それを邪魔した勇者を、転生者である王女が恨んでいても仕方ありません」


「魔王国の正規ルートではどうなのですか?」


「女神王国領なんて言葉は初めて聞きました。私も女神と初めて言われました。そんなルートはゲームにはありませんでした」


 顔を赤くして両手で顔を隠しながら言う女神様。


「自分で女神と言うのは恥ずかしいですね」


「いえ、可愛らしいと思います」


「あら、浮気はいけませんわ」


「あの……そうですね」


 僕の顔が熱くなるのが分かる。


「とりあえず、暗部になることは断っておきます」


「ええ、それがよろしいですわ。何か起きた時にあなたを粛正したくありませんから」


「それでは、これで失礼致します……」


 僕がおいとましようとしたタイミングで、ボロボロの兵士が謁見の間に駆け込んでくる。


「謁見のところ失礼しますッ!」


 ボロボロの兵士が叫ぶ。


「元最南端の村に、ゾンビが押しかけています!」


 いずれも要塞の方から現れたようだという。


 ゾンビ、心当たりがあるのは帝国の要塞の民達だ。


 心臓が機能を失った身体に魔核を埋め込むとゾンビになる。または遺体に魔核を埋めるとゾンビになる。


「数百体をイフリートで焼き尽くしましたが、未だ出現は抑えきらず。正規軍に協力をお願いしたく存じます」


「ゲネラール大将、準備は出来ていますか?」


 胸に手を当てるカイゼル髭の青年が答える。


「はッ! いつでも準備は出来ております!」


「では、女神であるデーアが命じます。最南端のゾンビ達を、土へと返してきなさい」


「はッ!」


 顎に手を当て考え込むアルコバレーノ。


「もしかしたら、王国の勇者の仕業かもしれません」


 女神が問うた。


「なにか思うところがあるのですか?」


「僕が赤目になるほどに追い込まれた魔物のゾンビのスタンビートは、勇者の仕業でしたから」


「それは確かなのですか?」


「はい、本人の口から聞きました」


「王国の勇者は秘密が苦手なようですね」


「僕が死ぬと思っていたんでしょうね」


「では、今回の件もあなたが標的でしょうか?」


「そうかもしれません。王国の勇者が僕が要塞を離れていることに気づかなかったのであれば、僕を確実に殺しに来ているのかもしれません」


「あなたが標的なら、あなたが行ってみますか?」


 驚いた顔をする僕。


「いいのですか?」


「構いません。探求者パーティーとして、ビアンカさんや女神王国領の勇者様たちと行ってきてください」


「一人の方が安心なのですが……」


「いいえ、皆さん強くなりましたよ。これからは、人に頼ることも覚えたらよいのです」


「それでは、これで失礼致します」


 僕は城を出た。


 ※※※


 女神様が一人呟く。


「ビアンカさんには申し訳ないのですが、主人公は私の物にしたいのです」


 フフフと笑う女神様。


 ※※※


 帝国領の居酒屋。女性を数人侍らせる王国の勇者。


「魔王陛下も罪な奴だな。だが、俺も転生者として生きていくには権力が必要だ。この世界の全てを、主人公から奪い取ってやる」


楽しんで頂けたら評価をお願いします。

つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。

<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆☆☆☆☆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ