表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/35

愛してる

 僕は翌日、スペッロにお礼を言われた。


 母の病気がみるみるうちに回復していき兄も学校へ通えそうだと。


 スペッロの母は弟が生まれた時、出血多量で植物人間になった。そんな母の意識が戻って、少しずつ歩き始めているらしい。


 そんな話を聞き、僕は笑顔で涙を流し「おめでとう」と言った。


 僕は泣くと頬と鼻が赤くなるので少し恥ずかしい。出来るだけ泣きたくないけど、涙が止まらなかった。


「うん、良かった」


 僕は涙が溢れて分からなかったが、ビアンカの話によると、クラスのみんな全てが恍惚した表顔で僕を見ていたという。


 その日、僕は顔を上げることが出来なかった。


 ※※※


 一応、中学校にも武術という形で戦闘訓練があるらしい。


 武術とは、いわゆる四大精霊を戦わせることらしい。


 闘技場に四大精霊を出す。


 使い手の一番弱い四大精霊同士を戦わせて、経験値を積ませるらしい。


 僕の試合の番がやって来た。相手はビアンカだ。


 僕と近いレベルがビアンカなので仕方ない。


 僕は一番レベルの低いウンディーネを出す。


 ビアンカは一番レベルの高いイフリートを出す。


「はじめ!」の合図と共に、イフリートのファイヤージャベリンが雨後の筍のように、数百本降って来る。


 僕はウンディーネに巨大な水球を作らせ、ファイヤージャベリンを迎え撃つ。


 水球に吸い込まれたファイヤージャベリンは水を沸騰させたが、蒸発させるだけの力は無かった。


「……ん、参りました」                                                                                                


 僕は勝ったが、その能力に驚いた皆はビアンカの健闘に拍手を送ってくれた。


 次は誰とやろうか決めかねていたが、教師がやりたがっていたので、教師に指導をお願いしてみる。すると、快諾を得たので闘技場に教師と立っている。


 僕はウンディーネを出すが、教師はノームを出した。ウンディーネがアイスメテオ(ゴルフボール大の雹)を放つと、ノームは土の盾でこれを受け流した。


 僕は直後、サッカーボール大の巨大な雹を作り、ノームにぶつけると、ノームとイフリートの合わせ技で、溶岩を作り、雹を蒸発させた。


 僕は宣言する。


 「参りました」


 クラスメートからどよめきが起こる。


「先生がダンジョン踏破者に勝ったぞ」


「先生すげえ」


「アルコバレーノくん見てたから霞んでたけど、先生達も一級探求者ばかりなのよね。この学校」


「先生ってやっぱり凄かったんだな」


 調子に乗った教師は、その後も生徒達と試合を行った。さすがに疲れたみたいだったが、全勝だった。


 ※※※


食堂。


「……ん、なんでさっき手を抜いてた?」


「手は抜いてないよ。まさか二人まとめて出すとは思わなかったのと、精霊使いとして、連携技が上手くいかなかったから負けたんだよ。まだ一度に一人しか出せないんだ」


「……むう。意外な弱点」


「……ん。でも召喚の儀の時にはまとめて出せてた」


「戦わないなら出せるよ。けれど、攻撃に使う時には二人以上は制御出来ずに暴走しそうで怖い」


「……なるほど」


「ビアンカは怖くないの?」


「……ん。私は子どもの頃から一緒に遊んでるから慣れてる」


「みんなは召喚の儀の時に初めて出したみたいだったけど」


「……ん。私は精霊達がいないと生きられなかったから」


「そうか。ごめん。女神王国領ではビアンカの村は端の端だったね」


「……ん。精霊がいなきゃ水も飲めないところだから。本当は早く村を豊かにしたい」


「ビアンカの村でも四大精霊はみんな呼び出せるんだよね。村も清潔だったし」


「……ん。精霊を呼べても家事育児にしか有効に使えない」


「……ん。でもアルコバレーノと一緒にいて戦闘が出来るようになった、私はついてる」


「そうだったね」


「……ん、そう」


「冬が来たら、一回村へと帰ろうか」


「……ん。そうする」


 ※※※


 探索者ギルドに帰ってきた僕ら。


「ただいま」


僕が言う。


「……ん。おかえり」


ビアンカが返す。


「夕ご飯食べに行こうか」


「……ん」


 僕らが部屋の扉から出ると、偽勇者改め本物の勇者達がやって来た。


 勇者達に声をかけられ一緒にご飯を食べに行くことに。


 探求者ギルドの六十階。僕らは旬のご飯が食べられるレストランへと入った。僕らはカボチャのスープを飲んでいる。


 ヴァロローゾさん達に聞いてみた。


「なんかヴァロローゾさん達変わりました? いつもなら肉肉言ってるのに」


「最近、肉という肉を食べ尽くしてしまってね。季節を代表する食べ物が体にいいって思うようになったんだ」


「なるほど」


 なんか納得してしまった。好きな物も食べ過ぎればやはり飽きる。


 給仕が新しい料理を運んで来る。


「子羊のローストです」


「……」


「たまたまだからね」


 ヴァロローゾさんがポツリと呟いた。


 コース料理だから肉も運ばれてくるのは普通だろうに。


 こういうところが放っておけないから……コホンッ、楽しいからこの人たちと行動を共にすることが多いのだ。


「……ん。ヴァロローゾは肉要らない?」


「いや、要るよ。要るから! 前言撤回させてもろて」


 肉を頬張るヴァロローゾ。


「やはり肉は美味いよね!」


 セドゥツィオーネさんはなんだかマダムな感じだ。


「旦那、私はまだ既婚者じゃないからね」


 なぜ、見透かされたのだろう? 謎だ。


 世紀末な男のピッチョットさんが一番丁寧にご飯を食べている。


「兄貴、これでも俺は子爵家の息子だったんですぜ」


 そうなのか。


「やはり見た目じゃ分からないことが多いね」


「「「どういうこと?」」」


 三人は真顔で突っ込んできた。


「兄貴は、王都にどれぐらいいる予定ですか?」


「う~ん。学校にも通い出したし、一度ビアンカの村に戻ったらまた戻って来る予定だよ」


「それは良かった。俺たちまたダンジョン攻略に行こうと思ってまして」


「蟻の巣穴だった方の?」


「そうでさあ。なんか消化不良って言うか。何か引っかかるんでさあ」


「僕も、そう思ってるよ。あのダンジョン攻略は簡単過ぎた」


「そうなんすよ。ドラゴンは兄貴以外に倒せる人間がいるとは思えませんが、蟻の女王を見てやせんので」


「そうだね。リポップするにしては、たくさんの巣穴を作ってそうだし」


「それです。あっしも思ったんですが、巣穴がダンジョン化してましたから」


「「やはり地下に女王がいる」」


 今すぐにでも探索に行きたいくらいだけど、ビアンカの村のことがあるから、探索は後回しだ。


 僕らはとりあえずやるべきことを片付けてから、合流してダンジョンに潜ることを決めた。


「ビアンカ、一度村まで戻ろうか?」


「……うん。蟻、気になる。けど、まずは大事なことを片付けてから」


「そうだね。しばらく休学して村まで戻ろうか」


「……うん。寒い地域に育つ野菜や麦を買っていく」


「じゃあ、明日は学校休んで市場へ行こう」


 ※※※


 部屋へと戻って来た。


 空は真っ暗だが、月が綺麗に出ている。


 ベッドに座る僕、隣に座り、もたれかかるビアンカ。


「……。ずっとこんな日が続けばいいのに」


「僕も、そう思った」


「……なら」


 僕はビアンカの言葉を遮って、言葉を返す。


「僕には、待っている人がいるから」


「……飢え死にするかもしれない、北の要塞に送った人?」


「うん。そう言われるとそうだね」


「……ん、なんて言われてたの?」


「僕が、この物語の主人公だって」


「……主人公? 愛してるとかじゃなくて?」


「うん。愛してるとかじゃなくて、主人公だって」


「……あ…して…る……」


「なに?」


 深呼吸するビアンカ。


「……私は、あなたを、愛してる」


 僕の唇に口づけしてくるビアンカ。


 僕はドキドキして、ビアンカを両腕で抱きしめる。


 僕はそのまま、ビアンカを押し倒した。


 ビアンカは顔を紅潮させて、受け止めてくれた。

楽しんで頂けたら評価をお願いします。

つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。

<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆☆☆☆☆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ