四大精霊
14歳になった。
14歳で再び学生になった。
中学校と言うらしい。14歳~18歳が対象だ。
王国の戦争を目的にした教育とは違い、中学校は教育だけに力を入れている。
魔王国領改め女神王国領は、先進的な国家だった。
女神王国領は、王都、帝都からも留学生を募っている。
しかし、留学生が一向に来ないのは、王国や帝国からのイメージが最悪だからだ。
女神王国領は悪であると、僕も過去に教わった。生き残る為なら女神王国領の兵士を命を投げ出して倒せと。
女神王国領では、子どもが子どもらしく、元気にはしゃいでいる。
僕が今日習ったのは、国語、数学、理科、乗馬だった。
乗馬は良く乗るので、事故が起こらないよう必修科目になっている。
「ビアンカの村に学校はあるの?」
「……ん、無い。だから王都の楽しみの一つだった」
「そっか」
「……アルコバレーノは学校あった?」
「僕の国でも、王都にあるだけだったよ」
「……じゃあ、アルコバレーノも学校行ってない?」
「僕も学校に行ってたよ。一応貴族だからね」
「……アルコバレーノ貴族だった? なのに帝国の北の要塞に送られた?」
「そうだよ。僕も赤目になってから帝国の北の要塞に送られたんだ」
「……そう。私はアルコバレーノが帝国の赤目の二代目だと思ってた。……ん。でも強かったのはなぜ?」
「身体強化を極めたからかな」
「……身体強化極めた。なるほど」
「ビアンカは身体強化を馬鹿にしないんだね」
「……女神王国領では、身体強化は獣人がよく使う。魔法よりも純粋な武力があるから敬意を払われる。役立つ職が多いから必然、好意的に迎えられる」
「そうなんだ」
「……ん。アルコバレーノを捨てた王国なんか捨てちゃえばいい」
「正直、迷ってるんだ。王国で一つの駒として戦に出るか。女神王国領で一人の平民として生きていくか」
「……ん、アルコバレーノはもう平民じゃない。ダンジョン踏破で男爵位を貰える。もちろん私も男爵位」
「え?」
「……え? 知らないで踏破した?」
「うん」
「……まあ、今は学校を楽しめばいい。男爵として責任を背負って生きていくのは、速くても4年後の話」
※※※
学校の教室。
僕の周りに女子生徒が寄って来る。僕は女子生徒の質問攻めに、対処しきれず困ってビアンカを呼んだ。
「……この人は私の婚約者。手を出さないで」
「やっぱりねー。いると思ったのよ」
「あれだけ美人なら既にいてもおかしくありませんわ」
金髪だが、懐かしいドリル頭に、僕は胸が締め付けられる。
「……ん、顔色悪いから保健室で寝とくといい」
「でも、これから授業だし」
「……ん。勉強は逃げない」
「分かった、ありがとう」
「……よし、私も一緒に行こう」
「本当に大したことないから」
※※※
保健室内。
ベッドが二つある。
ベッドに横になる二人。
「なんで二人して同じベッドに寝てるの?」
「人肌で温めたらいいと聞いた」
「それは雪山で遭難した時ね」
顔を真っ赤にして、ビアンカは僕の背中に抱きついている。僕はビアンカに背を向けて寝ていた。
放課後、眼鏡に白衣を着た保健室の先生がやって来る。
「すっかり血の気が戻った顔ですね」
「はい、ご迷惑おかけしました」
「子どもが気を使うんじゃありません。じゃあ、皆も帰ったみたいですから、帰りましょうか? 二人で帰れますか?」
「「はい」」
「じゃあ、気をつけて帰ってくださいね」
教室へ戻ると、僕らの席にプリントが置かれていた。宿題のようだ。プリントをバッグにいれると、探求者ギルドへと帰った。
「……ん、今日は私が部屋までご飯を持ってくる」
「お店に食べに行っても大丈夫だよ」
「いいから、病人は寝とく」
「分かったよ。任せる」
「……ん。任された」
「僕は女神王国領で生きていきたい」
「なら、そうすればいい」
「でも、ビアンカとは生きられない」
「どうして?」
「だってビアンカは、エルフだよね」
「むう、どうしてわかった?」
「なんとなくだけど、出会ったばかりの時はビアンカの本物の耳が見えてたから。幻影魔術が効いてなかった」
「……むう」
「それに、村人がみんなエルフだった」
「……むう、それは盲点だった」
腕組んで考え出すビアンカ。
「……それなら、長寿の薬を探せばいい。エリクサーが作れたんだからきっと作れる」
もしも、駄目だったら、その時は僕が王国に帰ることを了承してもらった。
「……ん。その代わり、今日は一緒に寝る」
「いいよ」
僕らは世界樹の下へ着くまで、野営をしている時はくっついて過ごしていたので平気なはずだが、ビアンカはいつまでも経っても慣れないらしい。
「……ん。鼓動がドクンドクンうるさいから、やっぱり一人で寝る」
「うん、それがいいよ」
ビアンカの鼓動が聞こえてきて僕まで恥ずかしかった。まさか僕の鼓動も聞かれてたんじゃないかと心配になったほどに。
※※※
学校、教室。
体育の先生みたいにジャージを着た男の先生が授業をするようだ。
「さあ、次は魔術の授業です。四元素を使えない人は一人もいませんね」
僕は手を挙げた。
「あの、身体強化しか使えません」
「でもあなたは赤目ですよね」
「後天的な赤目ですので」
「ではまず、魔術適性を調べてみましょうか」
教師が教壇まで僕を呼ぶと、水晶に手を翳された。
僕の魔力が七色に光る。
それは現存する全ての魔法の色だった。
「あなたは魔法を全て修めています。あなたに授業は不要ですね。それでも授業を受けます?」
「はい。僕は自力で使える魔法が身体強化しかないので、他の魔術も使えるようになりたいです」
「フフフ、いいでしょう。もう嫌だって音を上げるくらい、教えて差し上げましょう」
「頑張ります」
「皆さんには、まず四大精霊との契約をしてもらいます」
教室内がどよめく。他のクラスからもどよめきが伝わり笑う者までいる。
「はい、一人ずつ契約していきますよ」
講義室の入口、一番先頭から呼び出される。四大精霊の現れる水晶から中を覗き見ると、四大精霊の顔が見えるらしい。
「ビアンカくん前へ」
ビアンカが呼ばれた。
ビアンカが水晶を触ると、水晶からぶわーと竜巻のように魔力が溢れ出す。
ビアンカは既に四大精霊を使役していたので、改めて仲の良い四大精霊が出てきたのだろう。四大精霊の軽い遊び心らしい。
ビアンカが僕に向かってピースサインをする。僕は拍手で返した。
ビアンカの次は僕だ。
僕が水晶を触ると、ウンディーネが現れ僕の頬にキスをし、イフリートがその手で頭を撫で、ノームが僕に砂をかけ、シルフがそれを払ってくれた。ほとんどの学生の火魔法がサラマンダーだったのに対し、ビアンカと僕だけはイフリートだった。イフリートはサラマンダーの上位互換だったらしい。
「さあ、次は皆さん使役した四大精霊の子達と遊んであげてください」
人魚のような見た目をしたウンディーネが僕を抱きしめ、ワンコのように、キスをペロペロしてくる。
「せんせーアルコバレーノくんだけなんか卑猥なことしてまーす」
羨ましそうにする男子生徒、一方で手で目を覆いながら指の隙間から見ている女子生徒達。
「せんせー。召喚を一方的に破棄するにはどうすればいいですか?」
「召喚破棄は出来ません。四大精霊の子達が満足するまで遊んであげてください」
僕はモグラみたいなノームから抱き寄せられて泥だらけになり、戦士のようなイフリートがブレスを放つと、泥は固まり、ウンディーネが水で泥を洗い、可愛らしい子どものようなシルフが身体を乾かしてくれた。
遊んであげているというより、遊ばれているに等しい。
泥にまみれたり、水で流されたり、炎でサウナをされたり、風で乾燥されたり、四大精霊が満足するまで遊ばれるのだった。
楽しんで頂けたら評価をお願いします。
つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。
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