王都に着いた
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王都に着いた。
王都は聞きしに勝るほど栄えている。
僕らは大通りの道を真っ直ぐに進むと、王城へと辿り着く。
王城に着くと跳ね橋が下ろされ、青髪ドリルヘアーの幼女が駆けてくる。
「姫様! はしたないですよ!!」
青髪ドリルヘアーの後ろをメイド服のおばあさんが早足で歩いてくる。
「いやよ! 待っていられるわけないじゃない! 私、もう5年も待ってたんだから!」
ドリル頭の子が馬車にまでやって来た。御者が扉を開くと、老齢の兵士がまず下りた。
老齢の兵士に抱きつくドリル頭。老齢の兵士はドリル頭を抱き抱えグルグルと回る。
「ありがとう。マルツォ! わがまま言ってごめんなさい」
ゆっくりと下ろされるドリル頭。老齢の兵士マルツォは臣下の礼をとる。
「ただいま戻りました、フォルマーレ様。あなたの大切な人を連れてきましたよ」
僕も慌てて外に出ようとする。しかし、足場が高くて降りられず、騎乗して先導していた騎士さんの手によって、なんとか無事に馬車から降りられた。
僕も拙いながらに臣下の礼を取る。すると、フォルマーレ王女殿下が、綺麗なカーテシーをして魅せた。
王女に対する僕の印象はこうだ。
「…王女殿下は、エルフ様なのでしょうか?」
周りにいた人々が笑いだす。フォルマーレ王女殿下だけはプクーと頬を膨らませむくれていた。今のカーテシーだけではない。道中馬車内で老齢の兵士マルツォ様から聞いた話を聞いてもなんのことやらわからなかった。知らないうちに国を救った英雄とも呼べる存在が目の前の同い年の幼女だと知り、現実が受け入れられなかった。
「失礼ね。私はおばあさんではないわ」
「いや、あの、そうですね。失礼しました」
エルフが物語に出てくるような実は高齢のおばあさんとは限らないが、怒らせてしまったので素直に謝った。
「それよりも主人公様。あなたがお城にやって来るのを首をなが~~~くして待っておりましたわ」
「主人公?」
「ええ、あなたはこのRPG『学園デスティニー~黒猫の髭~』の主人公様ではありませんか」
この娘は何を言っているんだろう。RPGなんて言葉聞いたことないし、主人公はおとぎ話の世界だし、なんなら主人公は彼女の方ではなかろうか。
国を飢饉から救い、貧しいものに仕事を与えた彼女の方がすごいと思うのだが。
「フォルマーレ王女殿下。僕よりもあなたの方がこの世界の主人公に相応しいと思うのですが」
「あら、それは嬉しい返答ですわね」
王女殿下の前で膝をついている僕を、王女殿下は抱きしめた。
「何はともあれ、あなたが無事でよかった」
顔を真っ赤にする僕。
「えっと、その……」
碌に言葉が出てこなかった。ただただ恥ずかしくて、不敬ではなかろうか。助けを求めて老齢の兵士マルツォを見る。ニヤニヤとにやけているだけで助けてはくれなかった。
「さあ、アルコバレーノ様。まずはお父様お母様に会いに行きましょう」
王女殿下に手を引かれ、僕は謁見の間に案内された。
※※※
僕や兵士のみんなは豪奢な椅子に座る国王陛下と王妃陛下の前に平服し、王女殿下は国王陛下の膝に座っている。
「お父様、この方が勇者様ですわ」
国王陛下は白く長い髭をさする。目を細めて僕を見つめる国王陛下。
「ほう、そなたがこの国の救世主殿か」
「滅相もありません! 僕はそんな大した人間ではありません」
僕はあまりな評価に、おでこをガンッと地面に叩きつけた。
「僕の魔術適性は、貴族の4大魔術に遥かに劣ります! 僕の魔術は、平民の中でも一つも二つも劣る身体強化の魔術です! どんなに鍛えてもリンゴを素手で割れる程度の技術しか身につけられません! 救世主だなんてありえません!」
鷹揚に頷く国王陛下。
「なるほど、確かにそなたの言うとおりだ。しかし、フォルマーレが言うには、勇者のそなたでないと魔王を倒せないらしい。言っておくが、わしはこの国のどの神官よりも、娘のフォルマーレの“予言”が確かであると信じておる」
「予言……ですか?」
「うむ。フォルマーレは今までシチリアの水害を予言しておる。フォルマーレの予言から治水対策を行い、村人を避難させてギリギリ被害の拡大を防げた。他には水不足を予言して、ダムなるものを作ったこともある」
国王陛下に頭を撫でられ、くすぐったそうに笑うフォルマーレ王女殿下。
「予言ではありませんわ、お父様。予見です」
「いやいや、王国には勿論治水に長けた者がおり、雨を祈願する呪術師もおる。なにより、水の魔導士もおるのだ。だが、水が足りなくなると訴える者は一人もおらなんだ。お主はそんな状況を確信し、対処までしてしまったのだ。これを予言と呼ばずしてなんと呼ぶのだ」
「私は地形の形や、飢饉のあった年。それらを照らし合わせて、結果を予見したに過ぎませんわ」
「そうじゃな、5歳になったばかりの娘が、様々な事象を研究して結果を予見した。父であるわしでも、予言としか考えられんことをそなたは繰り返しておる。そんなそなたが連れてきた子じゃ。期待したいではないか」
そんなに期待されても、正直僕の手に余る。勇者と言うのはその名の通り魔王と敵対する者だ。僕は救世主なんて器ではない。
国王陛下が再び僕に話しかける。
「面を上げよ。良い面構えをしておる。十年後、お主が魔王討伐に向かうその日まで、そなたを無事に育てようではないか」
どうせ僕に帰る場所は無いんだ。それなら十年間育ててもらって、どうしようもなければ、城から逃げ出して冒険者にでもなればいい。
「僕に力になれる保証はありませんが、よろしくお願いします」
「うむ」
国王陛下は大きく頷いた。
僕は城を一通り案内され、城の中でも王族に次ぐ大きな部屋を用意された。僕はそこで、嬉しい出会いをすることになる。
「おかえりなさいませ」
「セ、セバスティアーノじゃないか」
「はい、王命により参りました」
部屋に入ると、僕をずっとお世話してくれていた伯爵家の執事、セバスティアーノが綺麗な礼をして迎えてくれた。
「ハハ…僕は一人じゃなかったんだね。良かった、本当に良かった…」
僕は緊張していた心身両方が弛緩して、思わず涙した。セバスティアーノが僕を抱きしめてくれる。
「ありがとう、セバスティアーノ」
※※※
朝、セバスティアーノがご飯を運んできた。僕の服を寝間着から着替えさせ、椅子に座らせる。僕はフォークとナイフを手に取り、食事を始める。
「さすがと言うべきでしょうか。王城だけあって朝食から豪華ですな」
「うん、実家とは大違いだね」
「セバスティアーノはもうここに馴染んだみたいだね」
「私の古巣ですから」
「え、セバスティアーノは元々はお城で働いてたの?」
「ええ、アルコバレーノ様には言っていませんでしたか? 私は前伯爵と意気投合しまして、伯爵家でお世話になっていたのですよ」
そうなのか。通りでなんか他と違うと思っていた。なんていうか、伯爵家の使用人の中では随分と気品があるというか、そんな感じだった。
※※※
僕は日課の素振りをする為に木刀を持ち外へと出た。訓練場には、兵士たちが各々早朝から身体を鍛えている。そんな中、僕は兵士たちの視線を集める。
「おい、あのガキの木刀見て見ろよ」
「ああ、あれでまだ五歳なんだとよ」
「姫様の予言の子だからな。あれくらいじゃねえと誰も納得しねえよ」
並みの大人では持つことも不可能な大きな木刀だ。何も王城に来たからと言って新しく使っているわけではない。おじいさまが、三歳の誕生日にくれたものだ。誕生日プレゼントとあって、使わないという選択肢は無く、三歳の頃からずっと振り続けている。
僕にとっては丁度良いサイズの木刀のおかげで、みんな都合よく解釈してくれた。
おじいさま、セバスティアーノと木刀を僕にありがとうございます。
楽しんで頂けたら評価をお願いします。
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