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ダンジョン攻略

 ダンジョン攻略をすることになった。理由は偽勇者パーティーの頼み事からだった。


 神級モンスターを討伐出来なくて困っているということだ。


「なあ、兄貴一回でいいから頼む」


「いいよ。丁度研修も終わったから暇になったし」


 偽勇者パーティーは喜んで僕にハグして来た。女魔法使いのセドゥツィオーネが長めにハグするものだから、ポカポカとビアンカに殴られた。


「……浮気するのが悪い」


「浮気じゃないから。僕ら付き合ってないから」


「……むう」


 ビアンカが真っ赤に目を腫らして、僕のことをポカポカと殴りつける。ちょっと? 本気じゃないか!


「許してビアンカ。ビアンカってば」


「……許さない。私が王女より先に出会っていたら私が婚約者だった」


「ちょッ! それは分かんないから」


「……アルコバレーノ、女の話になると優柔不断なる」


「う、否定出来ない……」


 僕は黙ってビアンカに殴らせることにした。時間が経てば落ち着くだろうと信じて。


「旦那、適当は良くないよ。好きな女がいるならハッキリしとかないとね」


 ハッキリしても怒られるんです。


 顔は殴らないでいてくれたので、多少は気を使ってくれたんだと思う。


「ありがとう、ビアンカ」


「……でもハッキリした返事も聞きたくない」


 ほらね。僕は一体どうしたらいいんだろう。


「兄貴、さあ、行きましょう」


「うん」


 ※※※


 目の前には重厚な一枚岩が左右に二枚ある。高さは二階建ての住宅ほど、厚さは一メートル以上あると思われる。扉の一つは開いていた。


「ここがダンジョンの入口でさあ」


 ダンジョン地下一階はヒカリゴケがある為に薄明るい。しばらくして目が慣れてくると、あちらこちらに魔物の気配を感じる。


 僕は大剣を振り下ろす。すると、三メートルほどの蟻型の魔物が真っ二つに割れた。僕は魔核を剥いでアンデッドになるのを防ぐ。


「さすが兄貴! 神級モンスターをあっさりと」


「え? これで神級?」


「はい、普通の人間には切れないダイヤの堅さを誇るその名も金剛石蟻。ヴァロローゾの剣なら何とか切れやすが」


「うん。女神様から頂いた、この勇者の剣なら切れるよ」


「そうなんだ。じゃあ、ヴァロローゾさんが斬って、セドゥツィオーネさんが魔法攻撃、ピッチョットさんが止めを刺したらいいんじゃないかな」


「それが、金剛石蟻には必ず足長蜘蛛がついて来て、大きな鋏を使ってくるんでさあ」


 カサカサカサカサと音がして、大きな鋏を持ったカニ? が大群でやって来た。僕は大剣を振り回す。それはつむじ風から竜巻となってカニ達を襲った。


 カニは本で読んで知識として知っていた為、カニだと気づいた。


「今のが神級?」


「そうでさあ、一匹一匹が金剛石蟻くらいに堅く群れをなして襲ってくるから神級モンスターなんでさあ」


「なるほどね。ヴァロローゾさんが一匹斬っても間に合わないからってことか。相性が悪いね」


「そうなんす」


「じゃあ、今倒したカニに止めを刺して、魔核を取り除こうか」


「うっす!」


「二階層に進まなくていいの?」


「少しすれば、モンスターがリポップするから大丈夫でさあ。自力で倒せないのに先に進むのは愚の骨頂」


 金剛石蟻は倒しても倒しても穴から這い出して来る。


 僕は自然と微笑んだ。


「みんな、頑張ってるんだね」


 カニにナイフで止めを刺していく三人組。


「……ん、頑張ってる」


「旦那、次リポップしたらあたし達に任せてくんな」


「うん。分かった」


 最後のカニ達に止めを刺すと、しばらくして魔物が穴から這い出してきた。


 勇者が金剛石蟻を真二つに割る。次いで現れた足長蜘蛛カニ達をセドゥツィオーネさんが熱湯の魔法で茹でガニにする。ピィチョットさんがカニからもの凄い勢いで魔核を剥いでいく。


「さあ、兄貴、姉御、この足長蜘蛛美味しいですぜ。食ってみてくだせえ」


「「要らない」」


「ほんとに美味いんすよ。このまま放置するのが勿体ないくらいに」


 アルコバレーノが匂いを嗅ぐ。


「うん…確かにいい匂いはするけど」


「足をこうやってもぐんだよ」


 ヴァロローゾさんが食べ方を勧めてくる。僕らは真似をして、カニのむき身を取り出すと、口に含んでみた。


「「美味い……」」


 僕とビアンカはあっという間に食べきってしまった。


「じゃあ、地下二階へ向かおうか?」


「旦那、ついて来てくれるんすか?」


「だって面白そうなんだもん、ダンジョン攻略。三人だけで独占するのはズルいよ」


「アハハ、旦那、うちらが独占してるわけじゃないけどね。一緒に攻略しようってんなら、心強いよ」


「ああ、坊主がパーティーに入ってくれるのなら百人力だ」


「……ん、美味しいもの独り占めはずるい」


「いや、別にこの下に美味しいものがあるわけじゃねえんですが」


「……ん、楽しそうなことはみんなでやった方が楽しい」


「そうですね。無粋でしたぜ、姉御」


 地下二階は空がある密林だった。美味しそうな食べ物があちらこちらに実っている。しかし、そのどれもが食虫植物であり、実った果実を取ろうとすると襲いかかってくる。


 僕は根元から食虫植物を大剣で切り倒していく。そして、果実を採って食べてみる。見た目は桃で何倍も甘さを増した味をしており、とても美味しい。僕は忘れず、食虫植物から魔核を抉り取っていく。


「……あむあむあむ、ごくん。やはりダンジョンは美味しかった」


「うん。美味い」


 食虫植物は近づいた者に鋭い鎌で首を切り落とそうとしたり、よくしなる蔦で鞭のように叩きつける攻撃をしてきた。そのどれもが光速で、並みの人間なら一瞬も生きていられないだろう。まさに神級モンスターばかりだ。


「熱帯の果物から寒い土地の果物まで豊富だね。これが全部敵だって言うんだから、ダンジョンは本当に美味しい、もとい本当に厳しい」


 でも、なんだかダンジョンがこの厳しい土地での食糧庫のように思えて来た。今は世界樹の効果で田畑は実りが多いものの、世界樹が無かった頃の名残りのような気がしてならない。まさに、神級探求者となるよう与えられた供物と、厳しい外の神級モンスターに対抗できる人間に育つように“作られた”ダンジョンだと思われる。


 僕はダンジョン探索よりダンジョン攻略した果ての結果が気になるようになった。


 次の階へ下りる。


 そこは空がある砂浜だった。海まで存在する。次の階層に行くには、水の精霊ウンディーネが必要なんだろう。


「……ん、私が使役してる」


「……我との血の盟約により、精霊を召喚する。いでよウンディーネ」


 人魚のような精霊が姿を現す。


「ビアンカじゃないの? 白目達と一緒?」


「……ん。私の舎弟達」


「なんか人間臭いと思っていたら、人間達がいるじゃない。いつビアンカは人間と和解したの」


「……もともと敵対してない。たまに村にやって来る偉そうな人間の姿に辟易していただけ。弱い犬ほどよく吠える的な」


「これが、姉御のウンディーネでやすか。いやー眼福ですな」


 ほぼ裸のウンディーネの姿を見て僕は慌てて目を閉じた。


 無い胸を強調するように腰に手をやって、胸を反らすビアンカ。


「……どう? 綺麗なウンディーネでしょう?」


「半分以上裸じゃないか」


「……むう。アルコバレーノは見ちゃダメ」


 ウンディーネに、水中でも息が出来るようにしてほしいとお願いしたビアンカ。僕たちは海の中へ入り階段を目指すが、甲イカが毒霧を吐き、エビがクルクルと回って草刈り機のようになり、マグロはサメのような牙を持っていた。


「なんか直感で美味しそうに見えるからこれも食べていこう」


 ちなみに、調味料が無いので美味しくは無かった……。

 

 さらに下へと行く。


 四階はボス部屋になっており、そこにはフレイムドラゴンがいた。フレイムドラゴンは幼獣らしくて、可愛かった。


 ビアンカが「飼いたい」と言い出したのでしばらく可愛がっていると、先に来ていた沢山の探求者達は、この赤ちゃんはみんなのアイドルだからと懇願され、離れがたいが次の層へと向かったのだった。


 次の階層は日差しの強い砂漠だったので一度外へ戻ろうという話になり、中間ポイントで転移した。

楽しんで頂けたら評価をお願いします。

つまらなかったという方もつまらなかったという評価をお願いします。

<(_ _)>

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