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エメラルド・アイ ~サイボーグ少女の復讐劇  作者: mf
第三章 野望と崩壊
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19 海上

 東京湾から四十キロ離れた海上。一隻のクルーザーが停泊していた。


 甲板には黒須と高校生ぐらいの少女がいる。


「最低の月曜日だね」


 操舵室の黒須は椅子にもたれたまま、操縦盤上の液晶モニターを見つめていた。


 モニターは学園の地下研究施設の情報を次々と表示している。


 操縦盤に備えつけられたコンピューターはクルーザーに備えつけられた衛星送受信アンテナを通じて、黒須の持つ全てのアジトのコンピューターへ自由にアクセスできるのであった。


「これで三百億円が水の泡だ。たった二匹のドブネズミのために」


 黒須は手にしたグラスに力を込めた。グラスがピシッと言う音を立てて、黒須の手の中で砕ける。床には赤い血の混じったグラス片が散らばった。


「シルバー・アイ、画面を見ていてくれ」


 黒須は椅子から立ち上がり、銀色の目を持つ少女、シルバー・アイに席を譲った。


 黒須は窓に歩み寄り、霧に包まれた海を見つめた。


「ボス……」

 シルバー・アイが声をかけた。


「どうした?」

 黒須がシルバー・アイの方を見る。


「こちらのコンピューターに何者かが侵入しています」


「何?」

 黒須がすぐさまパソコンに向かった。


「これは――」

 黒須の顔が青くなった。


 モニター画面上では、黒須のホストコンピューターのデータ・ファイルが勝手に検索され、次々と削除されるという作業が目まぐるしいスピードで行われていた。


「シルバー・アイ、介入をやめさせるんだ!」


「無理です。コンピューターがこちらからの一切のキー入力を受けつけません」


「ふざけるな」

 黒須は珍しく声を荒らげ、キーボードを打った。


 しかし、モニターには何の影響もない。


 このままでは全てのデータが……僕の資産が破壊される。


「ブレイン・アクセスを使え。それなら、コンピューターを直接制御できる」


「はっ」

 シルバー・アイがこめかみからプラグ・ケーブルを引き出し、コンピューターのデータ入出力端子に差し込んだ。


「開始します」

 シルバー・アイが目をつむり、コンピューターにアクセスを始める。


 シルバー・アイのアクセスによりデータ破壊プログラムの進行スピードが急速に落ちていった。


「そうだ、いいぞ」

 黒須の険しい表情が和らいだ。


 そして、ついにプログラムの進行が止まり、画面が正常に戻った。


「よくやった」

 黒須はシルバー・アイの肩に手を置いた。


「……」


「一体、誰がホストコンピューターにアクセスを。シルバー・アイ、すぐに調べたまえ」


「その必要はないわ、黒須博士」


「何……」


「データを破壊したのは私よ」

 シルバー・アイが黒須の方を向いた。


「おまえ……」

 黒須の手がシルバー・アイの肩から離れた。


 シルバー・アイの瞳が銀色から青緑色になっていたのである。


「まさかそんなことが……」

 黒須が後ずさった。


「この時を待っていたのよ」


 シルバー・アイの顔の骨格が内部から変わってゆく。さらに髪の毛が青緑色になり、長い髪が少し短くなる。


 一分後にはシルバー・アイは別人の顔となった。


「八十神のサイボーグ……」


「そう、エメラルド・アイよ」


「どういうことだ」


「頭のいいあなたならわかるはずよ」


「シルバー・アイの細胞構造を自分のものに変えたんだな」


「その通り。シルバー・アイが私の用意した破壊プログラムを止めている間に彼女の頭脳に侵入してね」


「なぜ僕がシルバー・アイにブレイン・アクセスを使わせるとわかった?」


「海上にいるあなたがデータを保護するために取れる手段はそれしかないからよ。人の命を何とも思わないあなたでも、データを失うのは恐いでしょ」


「大したものだ。恐れ入るよ」

 黒須は苦笑した。「だが、こんなところで呑気にしていていいのかね。君がシルバー・アイを乗っとったところで、君の本体は所詮学園の地下だ。後二、三分もすれば、大爆発だぞ」


「それで」


「逃げなければ、死ぬぞ」


「あなたが殺せるなら、死は恐くないわ」


「殺せるかな」

 黒須は素早く後ろへ下がった。


 裕美は追いかけようとするが、数歩歩いたところで、操縦盤の端子に繋がったプラグ・ケーブルの長さがいっぱいになった。


「そこまでだな。そのケーブルの長さではここまでは来れまい。ケーブルを外せば、元に戻ってしまうからな」


「……」


「おっと自爆を考えても無駄だよ。そのシルバー・アイに自爆装置は付いていない。もちろん武器もね。ふふふ、残念だったね」


 黒須は勝ち誇ったように笑った。


 黒須は操舵室のドアを開けた。


「アジトの爆破もそろそろだね。さあ、どうする?僕は一足先に逃げさせてもらうよ」


 黒須は操舵室を出ようとした。


「逃がさないわ」


 その瞬間、裕美は左上腕部の形状を槍のような形にして、それを右手で引きちぎると、黒須に向かって投げた。


「ぐあっ」

 黒須の背中を裕美の左腕が貫いた。


「こ、こんなところで僕が……」

 黒須はそう言い残して、倒れた。


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