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エメラルド・アイ ~サイボーグ少女の復讐劇  作者: mf
第三章 野望と崩壊
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18 爆発

 並木道を抜けると草原のように広がる外人墓地に出た。


「!!!」

 八十神は目の前の異様な光景に言葉を失った。


 全ての墓の前に棺桶が置いてあったのだ。


 まさかこの棺桶、全てにサイボーグが。


「よくここがわかったわね。八十神博士」


「むっ」

 女の声に振り向くと、一つの墓のそばに三人の少女が立っていた。


 あの三人は失踪した女生徒たちだ。


「ちょうどいいわ。おまえをサイボーグたちの最初の餌食にしてあげる」

 サイボーグ少女の一人モーブ・アイがリモコンのスイッチを押した。


 棺桶の蓋が一斉に開き、中からレッド・アイが起き上がってくる。


 八十神は背中に背負った機械にケーブルで繋がった携帯用ノート型パソコンを開いた。


 サスペンド状態からオペレーティング・システムが起動する。


 八十神は右手で本体を持ちながら、左手でキーボードを入力した。

 パソコンの液晶画面には電波照射準備完了のメッセージが表示されている。


「八十神博士、これまでよ」

 モーブ・アイの言葉に八十神は顔を上げた。


 いつのまにか数百のレッド・アイが立ち上がり、銃器を手にして、八十神の方を向いている。


「残念だが、これまでなのは君たちも同じだ」


「何?」


「僕の背中の機械が何かわかるか。サイボーグの自爆用電波照射装置だ。この装置の電波をアンテナでそこにいるサイボーグどもに送ったら、どうなると思う?」


「ま、まさか」


「半径一キロ以内のサイボーグは全員自爆装置が働いて、大爆発さ」


「そんなことをすれば、おまえも死ぬぞ」


「承知の上さ」


 ★ ★ ★


「博士……」

 モニターで墓地の様子を観ていた裕美は八十神の言葉に思わず表情を曇らせた。


「そんな手があったとはね、驚きだ」

 黒須は意外にも落ち着いていた。


「これで本当にあなたの計画もおしまいよ」


「それは奴が電波照射のボタンを押せたらの話だろう」


「博士は自分の命を惜しむような人ではないわ」


「確かに。だが、恋人を死に追いやることはできるかな」


「何ですって」


「こちらにも切り札はあるということだよ」


 ★ ★ ★


「忠士さん」

 八十神がパソコンの決定キーを押そうとしたその瞬間、聞きなれた声がした。


「何?」

 八十神が声のした方を見ると、そこには死んだはずの弘田香奈子が立っていた。


「香奈子……」


「お願い、やめて」

 香奈子は八十神のもとにゆっくりと歩いてきた。


「君が……どうして」


「あなたに会いたくて生き返ったのよ」


「サイボーグか。近寄るな」


「あなたに私が殺せるの?私は七年もあなたを待ちつづけたのよ」


「……」

 香奈子は八十神のすぐ目の前に来た。


「そのパソコンを渡して。もう終わりにしましょう。これからは二人で一緒に」


「香奈子……」

 八十神は優しい目をして、言った。


「なぁに」


「僕のことを愛しているかい」


「ええ」


「僕も愛してるよ」

 八十神はパソコンを手にしたまま、香奈子を抱きしめた。


 その時、香奈子の目が光った。


「香奈子、一緒に死のう」

 香奈子が隠し持っていたナイフを八十神に突き刺した瞬間、八十神もパソコンの決定キーを押していた。


 墓地は光に包まれた。


 モニターは一瞬真っ白になったかと思うと、すぐに砂嵐のような画像になった。


「バカな……」

 黒須は椅子から立ち上がった。


「博士……」

 裕美はモニターから目を背けた。


「くそぅっ、どうなってる」

 黒須は外人墓地にいるサイボーグたちに無線で連絡を取ろうとしたが、雑音ばかりでもうつながらなかった。


「ちいぃぃ!!」

 黒須は初めて怒りに満ちた恐ろしい形相となった。


「あなたの計画は失敗したのよ。これであなたもおしまい」

 裕美は黒須に向かって拳を放った。


「!!!」


 だが、裕美のパンチは黒須の体を素通りしてしまった。


「ホログラフィー!」


「ふふふ、この僕が無防備に君の前に姿を現わすとでも思ったか。こうなれば、君もここで始末してやる。八十神のいるあの世へ行け!」


 ホログラフの黒須は手に持っていたリモコンのスイッチを押した。


〈緊急事態発生。緊急事態発生。これより五分後に施設を爆破します。施設内の人間は至急非難して下さい〉


 室内に警報と同時にアナウンスが流れた。


「僕は計画を諦めない、生きている限りな。ふははははははははは」

 黒須の高らかな笑いを残して、ホログラフは消えた。


「死ねない。奴を生かしたままでは。パワー・セーブ、オン」


 裕美はロー・パワー・モードに戻ってからコンソールに向かうと、キーボードからコンピューターを制御しようとした。しかし、コンピューターはキー入力を一切受け付けないようになっている。


 裕美はこめかみからプラグ・ケーブルを引き出すと、コンソールのデータ入力端子に差し込んだ。


 たとえホログラフでも黒須は私と会話していた。ということは黒須の端末とこのコンピューターはまだ繋がっているはず。それにかけるしかないわ。


 裕美は自分の頭脳からコンピューターにアクセスした。


 コンピューターのモニターにシステム画面が表示される。


「黒須の居場所を捜すのよ」


 コンピューターが検索を開始する。

 数十秒後、モニターにデータが表示された。


「海上か。しかも、衛星通信を使ってる。いけるわ」

 裕美の口許に笑みが浮かんだ。


〈爆破まで後四分です〉



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