14 姉妹
「お姉ちゃん……」
佐織はベッドに入ってからも、寝付けず姉の写真をずっと見ていた。
佐織には視聴覚室での出来事がまだ現実のものと思えなかった。
失踪中の姉が突然現れたのもさることながら、その姉が自分を殺そうとしたことも佐織にとってはショックだった。
でも、現実なんだ。
佐織は学校から出た後の裕美との会話を思い出した。
★ ★ ★
「一体、どういうことなんですか?」
「あなたに説明する必要はないわ。生きていたかったら、今の出来事は誰にもしゃべらず、家に帰ったら、中から鍵をかけて誰もいれないこと。それから、月曜日は学校へ行っては駄目よ」
「そんな、いきなりそんなこと言われても……」
「もしまた奴が現れたら、これを使いなさい」
裕美は小型のリモコンを佐織に渡した。
「これは?」
「このリモコンの赤いボタンを押せば、奴のコンピューターを一時的に狂わせる電波が出るわ」
「奴って私の姉のことですか?」
「そうよ。奴はもうあなたの姉じゃない。サイボーグなのよ」
★ ★ ★
姉がサイボーグなんてそんなSFみたいなこと……。
佐織は裕美からもらったリモコンを手にした。
両親にはまだ姉の話をしていなかった。言っても信じてもらえないというのもあるが、佐織自身もまだ信じられなかったからだ。
どこからか音がした。
その音で佐織はふっと我に返った。
照明の消えた部屋の中では、小さな物音でもはっきり聞こえる。
再び小さな音。
しかし、今度はどこから聞こえてきたか佐織にもわかった。
窓だわ。
佐織はベッドから降りた。そして、カーテンを引いて、窓を見た。
佐織の部屋は二階で、玄関側の道路に面していた。
誰かいる。
家の前に立っている人影を見て、佐織は戦慄を覚えた。
街灯に照らされたその人影の顔は、まぎれもなく佐織の姉、留美であった。
留美は顔を上げ、真直ぐ佐織を見ている。
お姉ちゃん……どうしよう。
佐織は体の震えが止まらなかった。あれだけ会いたかったはずの姉も今は恐怖であった。
留美の二つの瞳が光った。
だ、だれか……
佐織は声を上げようとした。しかし、恐怖で声が出ない。
留美は右手を上げ、その指先を佐織に向けた。
その時、佐織は留美の瞳がレーザー光となって、自分の額に当てられていることに気づいていなかった。
佐織はおぼつかない指先でリモコンのボタンを押そうとした。
その瞬間、留美の指先から発射された弾丸が窓を貫通し、佐織の額を捉えた。
佐織の手にしたリモコンが床に落ちた。
「お…ね…え」
佐織は何か言いかけたが、それ以上しゃべることも考えることもできなかった。
佐織は留美の無気味な笑みを目に焼き付けたまま、後ろに倒れた。




