5 呼び出し
「あれ、誰もいないわ」
学校の体育館裏の倉庫まで走ってきた和美は、そこに誰もいないのを見て、呟いた。
和美は一時間目の授業終了後、先生が呼んでいると校内放送で呼び出されたのであった。
「秦野和美さんね」
突然、和美の後ろで声がした。和美は驚いて振り向く。
「誰?」
「私はアンバー・アイ。あなたを放送で呼び出したのは私よ」
和美と同じ年ぐらいの少女が言った。
「先生が呼んでいるって言うのは嘘だったのね。あなた、この学校の生徒じゃないでしょう。私、帰らせてもらうわ」
和美は帰ろうとした。
「あなたのお父さんのことなんだけど」
「父の?」
和美は足を止めた。
「あなたのお父様に余計なことはしないように忠告してほしいの」
「余計なことって?」
「お父様はよくご存じのことよ。もし忠告を聞かなかったら、あなたに殺してもらうわ」
「ちょっと何言ってるの、ふざけたこと言わないで」
和美は気味が悪くなり、その場から逃げようとした。
和美がアンバー・アイに背を向け、校舎へ向けて走りだそうとした瞬間、アンバー・アイは常人とは思えぬ俊敏な動きで、和美を背後から取り押さえた。そして、手に隠し持っていた針のついた小型装置を和美の後頭部に刺した。
「うっ」
和美がカッと目を見開き、その場に膝を落とした。
「さあ、和美さん、もう一度、ゆっくりお話しましょう」




