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エメラルド・アイ ~サイボーグ少女の復讐劇  作者: mf
第二章 サイボーグ少女
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11 図書室

 桜華高校の昼休み。

 喜美子(きみこ)は図書室で本を探していた。


「Tの二三五、Tの二三五と」

 喜美子は書棚に沿って歩きながら、本の背表紙の番号ラベルを確認していく。


「あった」

 喜美子は書棚の一番上からT二三五のラベルが貼られた本を手に取った。


「『機械医学』か。著者は八十神忠士。間違いないわ」

 喜美子は本のページを開き、著者のプロフィール欄を見た。


八十神忠士(やそがみ ただし)。八月一二日生まれ。十代でアメリカに渡り、マサチューセッツ工科大学卒業後、東京大学医学部に入学し、卒業後、医師免許を取得。三十五歳の時、世界で初めて猿の機械化手術に成功。翌年には、半身不随の患者を機械化手術によって、完全治療することに成功する。人間の機械化には、倫理上の問題から医学界に大きな議論を巻き起こした』


「弘田さんを誘拐した連中が捜している八十神忠士ってこんな偉い人だったんだ。弘田さんとはどういう関係なのかしら」


 喜美子は八十神の名前を父から聞き、図書室に調べに来たのであった。


「婚約者よ」


 喜美子の背後で声がした。


「きゃっ」

 喜美子は飛び上がって、驚いた。

 振り向くと、そこには裕美(ゆみ)が立っていた。


「ひ、日高さん、脅かさないでよ、もうっ」

 喜美子は胸を押さえた。「声をかけるなら前からにして。昨日、駅で殺されそうになって敏感になってるんだから」


 喜美子は本当に怒っていた。


「ごめんなさい」


「別に謝らなくてもいいけど。昨日はありがとね」


「いいえ」


「何か用かしら?智也なら、あたしのボディーガードをほっぽりだして、いなくなっちゃったわよ」


「弘田さん、助けたから」


「え?」


「あなたが心配してると思って」


「ほ、本当に?」


「ええ」


「よかったぁ!」

 喜美子がうれしさのあまり裕美に抱きついた。「無事なのね。怪我とかしてない?」


「大丈夫」


「そう」

 喜美子は裕美から離れた。「よかった、弘田さん、無事なんだ」


 喜美子の目には、いつのまにか涙がたまっていた。


「ありがとね、報せてくれて」

 喜美子は涙を拭いて、言った。


「どういたしまして」


「そういえば、さっき、弘田さんが八十神忠士の婚約者って言ってたけど、本当なの?」


「ええ」


「ということは、弘田さんを襲った連中というのは、八十神さんが狙いなの?」


「そうね」


「あなたは八十神さんや弘田さんとはどういう関係なの?」


「家族です」


「子供?」


「どうかしら」


「あなたって何者なの?」


「私のことより、あなたに相談があるの」


「あんたって自分中心にことを進めるわね」


「桜華高校の生徒・職員名簿、それから、校内の詳しい見取り図が欲しいの」


「そんなの手に入れて、どうするの?」


「生徒会長のあなたなら手に入れられるでしょう」


「ちょっと、一つぐらい質問に答えなさいよ」


「どれくらいで手に入れられる?」


「あたしも忙しいから、二、三日かかると思うけど」


「それじゃあ、三日後この時間にここで会いましょう」


「駄目よ」


「どうして?」


「あなたはここの生徒じゃないでしょう。毎回、毎回、黙って入ってこられたんじゃたまらないわ。こうして会ってる時にもし先生に注意されたら、あなただけじゃなくてあたしも怒られるのよ」


「何とかなるわ」


「ならない。会う場所、決めましょ」


「午後八時にあなたの家に行くわ」


「あたしの家に?場所、知ってるの?」


「住所がわかれば、直接行くわ」


「あっ、そう。まあ、いいけど」


 喜美子は鞄からシステム手帳を出し、スケジュールを書き込んだ。裕美はその手帳を喜美子の後ろからひょいと覗き込んだ。


「ほんと、忙しそうね」


「見ないでよ」


「ねえ」


「何?」


「再来週の月曜日、全校社会科見学って書いてあるけど、どこへ行くの?」


「興味あるの?」


「ちょっと」


「うちのクラスは都庁よ」


「うちのクラスってことは、他のクラスは違うの?」


「そうね。国会とか警視庁とかテレビ局とか、三クラスを一グループとして、それぞれ別の場所を回るみたい」


「桜華高校の生徒全員で社会科見学というのも珍しいわね」


「去年まではやらなかったんだけどね」


「各グループの社会科見学の行き先を全て調べてもらえる?」


「そんなの調べてどうするの?」


「私も混ざっていこうかと思って」


「本気?」


「本気」


「いいけど、そんなに調べるんだったら、こっちの頼みも聞いてくれる?」


「私にできることなら」


「弘田さんに会わせてほしいの」


「駄目」

 裕美はきっぱりと言った。


「弘田さんに直接謝りたいの。一度だけ」


「あなたはマークされてるわ。これ以上、弘田さんを危険な目に遭わせられない」


「電話でもいいわ」


「……」


「駄目なら、あたしもあなたの頼みを聞かないわ」

 喜美子は真顔で言った。


「わかった。何とかするわ。そのかわり、このことは誰にも言わないでね」



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