10 朝の教室
翌朝。ホームルーム前の桜華高校二年D組の教室。
喜美子はいつものように登校し、自分の席で友人と楽しそうにしゃべっていた。
その一方で智也は自分の席で喜美子を恨めしそうに見ていた。
「全く学校なんて休みゃあいいのに……おかげでこの俺が一週間無遅刻だぜ。もうあいつのボディーガード、やめよっかな」
智也はぼやいた。
「よお、遅刻の帝王がどういう心境の変化だ」
友人の白川が智也の前の席に座った。
「知ってるくせに言うな」
「会えば、しょっちゅう喧嘩してるから仲悪いのかと思ってたけど、本当は相思相愛だったんだな」
「俺たちは姉弟だ」
「んなことわかってるよ。ただ、おまえがまじめに喜美子ちゃんのボディーガードをしてると思うと、おまえって結構いい奴だったんだなと思って」
「仕方ねえだろ。俺しかいねえんだから」
「だったら、俺が代わってやろっか、喜美子ちゃんのボディーガード」
「おまえが?」
智也が白川を見る。「おまえ、あいつのこと好きなのか」
「バ、バカ言うな。俺はだな、おまえのためにだな――」
白川は顔を真っ赤にして弁解していた。
「冗談だよ。単純だな」
智也は笑って、言った。
「久坂くん」
その時、同じクラスの女子生徒が久坂に声をかけてきた。
「何?」
「下駄箱のところで久坂くんを呼んできてほしいって頼まれたの」
「誰?」
「あっ、名前は訊かなかった……急用だって言ってた」
まさか、裕美?
「わかった。ありがとう」
智也は女子生徒に礼を言うと、急いで、教室を出ていった。




