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エメラルド・アイ ~サイボーグ少女の復讐劇  作者: mf
第二章 サイボーグ少女
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9 密談

 都内ホテルの一室。

 窓から見えるビル群の夜景を見ながら、二人の男が話をしていた。


「まさか、君が生きていたとはな」

 警察庁長官・秦野弘幸(はたの ひろゆき)は向かいの席の男に言った。


「奴に復讐するまでは死ねません」

 向かいの席の男――八十神(やそがみ)はグラスの酒を口にして言った。


「生きていたなら、なぜこの一年、私に連絡をよこさなかった?私は君のことをずっと心配していたんだぞ」


「警察が信用できなかったからです」


「何?」


「僕は長官がよこしてくれた相沢刑事の手引きで組織のアジトから脱出することができた。しかし、僕が持ち出した資料と部品を入れたバッグの中に発信器が入っていた。そのせいで組織に発見され、相沢刑事や一人の少女が犠牲となった」


「なぜ発信器が?」


「僕の脱走計画が事前に組織に漏れていたとしか考えられませんね」


「警察の中に密告者がいると?」


「ええ。誰かは知りませんがね」

 八十神は秦野を見た。「それが証拠に翌日、警察がアジトの強制捜査を行った時には、アジトはもぬけの殻だった。全く……一年前、僕が必死の思いであなたの自宅のパソコンに電子メールを送ったのは無駄だったというわけですね」


「すまない……」


「ところで黒須和馬(くろす かずま)という男のことは調べてみましたか?」


「ああ。今から一八年前、世論を敵に回してクローン人間を生み出し、学会から追放された科学者だろう。当時、まだ二十歳だったな。だが、あの男は自宅に火を放って両親と共に自殺した。本当にその男が君を誘拐した犯人なのか?」


「もちろん」


「死体は警察が確認しているんだぞ」


「もしその死体がクローンだとしたら」


「まさか」


「黒須は人体急速成長装置も開発していた男です。短期間で自分と同じ年齢の、自分のクローンを作り出すことも可能だったはずですよ」


「しかし――」


「黒須は目的のために僕を含めた多くの科学者を誘拐し、殺人兵器の研究をさせてきた。僕もサイボーグや殺人兵士を作るために六年も研究を手伝わされました」


「信じられんな」


「黒須の目的は自分の研究を認めない学会、いいえ日本社会に対する復讐です。そのために黒須は皇居、官邸、議場、テレビ局、自衛隊基地などの主要施設の一斉制圧を企んでいますが、その計画の先兵にサイボーグ部隊を使おうとしています」


「サイボーグ部隊?SFじゃあるまいし」


「既にサイボーグの量産は可能なのですよ。僕が組織で最初に開発した|αⅠ型、通称レッド・アイはクローン技術でまず人間を作り、急速成長機で人間で言う一八歳くらいまで成長させ、その上でサイボーグ手術を行います。その後、各種戦闘用プログラムを彼の脳に流し込み、実戦訓練を施せば、忠実な兵士の出来上がりです」


「……」


「αⅠ型レベルなら僕のいた組織の施設で月に十体は作れました。彼らはある弱点を除けば、常人の十倍の力を持ち、十五倍の肉体強度を誇る最強の兵士です」


「一体、組織にはそのサイボーグが何体あるというのだ」


「僕がいた当時で三百体」


「三百体!」


「それだけではありません。組織は既に|αⅡ型も完成させています」


「αⅡ型?」


「αⅠ型が土台にクローン人間を使うのに対し、αⅡ型は人間を使います。改造手術と教育プログラムを流し込むだけでいいため、その製造は一週間とかかりません。ただし、部品の構成上、その対象となる人間には多少条件が伴いますが」


「人間を使うと簡単に言うが、誘拐など簡単にできるものではあるまい。まして、対象となる人間を選ぶのであればなおさらだ」


「ところが、簡単にわかる方法があるんですよ」


「何?」


「学校です」


「学校?」


「組織は学校を経営し、学校の生徒の中から条件にあった生徒を誘拐してサイボーグにしているんです」


「君の口ぶりだと、どこの学校かもわかっているようだな」


「ええ、私立桜華高校です」


「桜華高校……」


「今から五年前、当時経営難で廃校を余儀なくされていた宮園高校を巨額な資金で買い取り、二年の改築期間を経て、開校した新設高校です」


「どうしてその高校が組織のアジトだと?」


「サイボーグの素体を大量に手に入れるために学校のような若い人間がたくさん集められる場所は組織にとっては絶対に必要です。僕はこの一年、学校関係の新聞記事をずっとマークしていました。そして、そんな時、目に付いたのが、生徒の連続失踪で話題となっている桜華高校でした」


「その高校なら、話には聞いている」


「僕が調べた限り、失踪した生徒八人はαⅡの条件に全て合っています」


「そこの学校が組織の経営だという証拠はあるのかね」


「ありません、今のところは。ただ、誘拐された生徒たちがサイボーグとなっているのは事実ですよ。この通りね」


 八十神は写真を見せた。そこには横浜海浜公園でのアンバー・アイとモーブ・アイの姿が映っている。


「これは?」


「つい先日、撮影したものですが、この二人の少女は現在失踪中の桜華高校の生徒です」


「何だって」


「しかし、この二人がどうしてサイボーグだと?」


「写真からではサイボーグとはわかりませんがね、この二人は僕の大事な人を誘拐したんですよ」


「誘拐?」


「その話は後でしましょう。とにかく、僕は組織の拠点が桜華高校にあると睨んでいます」


「一つ、聞いていいか?」


「何です?」


「君の話はわかるんだが、黒須は研究施設やサイボーグを作る金をどこで手に入れてるんだ。彼は戸籍上は死んだ人間だ。暴力団やマフィアでもない彼が莫大な金を作るなど並大抵だはないと思うが」


「臓器売買です」


「臓器売買?」


「奴はクローン人間の臓器を売って、金を得ていたんですよ。学会を追われたとは言っても、彼の理論に注目している奴はいくらでもいる。まして、それが金もうけに繋がるとなればね」


「パトロンがいたというわけか」


「おそらく」


「これからどうするんだ。そもそも警察に協力する気がないのに、なぜ今になって私に連絡をよこした?」


「あなたには長官ではなく、僕の叔父として頼みがあるからです」


「何だね」


「ある女性を保護してもらいたいのです」


「保護?」


「僕の婚約者、いいえ、僕の妻、香奈子(かなこ)です」


「君の奥さん?」


「組織は、僕が脱走したことで計画が公に露呈するのを恐れ、僕を暗殺しようと躍起になっています。僕は組織と戦うつもりでいますが、香奈子がいては、足手まといになります」


「そうか、さっきの大事な人というのは?」


「ええ。香奈子は一度あの二人に誘拐されているんです。何とか取り戻しましたが、いつまた狙われるかわかりません」


「わかった、保護は約束する。しかし、彼女だけでなく君もだ」


「僕なら心配ありません。必ず組織を叩きつぶします」


「無茶なことを言うな。忠士、私を信用しろ。彼女も君も必ず守る。私の長官の職務を賭けてだ」


「長官の言葉はうれしいですが、僕には組織に悪魔の発明を提供し続けた責任がある。この責任は自分で取りますよ」


「忠士……」


「とにかく、明日、香奈子をここへ連れてきます。くれぐれも言っておきますが、長官、ここへ来る際は外部の人間に気づかれないようにして下さいね」

 八十神は真剣な表情で言った。



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