8 アジト
謎の組織のアジト――
「あんたたちは本当に出来損ないね」
作戦会議室では、白衣の女がアンバー・アイとモーブ・アイを前に険しい表情で叱責した。
「八十神を捕らえられないばかりか、弘田香奈子を残して、逃げ帰るなんて、あんたたちそれでもサイボーグ?」
白衣の女――高宮あゆみは特殊警棒で肩を叩きながら、直立している二人のサイボーグのまわりを回った。
「自分の力を上回る者に対しては、交戦せず退避するようにと言う命令を受けていますから」
アンバー・アイが言った。
「なるほど。けど、八十神を捕らえるという命令もあったはずよ」
「はい。しかし、あの場所に八十神はいませんでした」
「……だったら、なぜ香奈子を置いて、逃げたの。香奈子に逃げられたら、八十神の行方を追えなくなる。常識で考えたら、それぐらいわかるでしょ」
「香奈子を連れ帰るには交戦しなければなりません。私はシステム・プログラムの退避命令を優先させました」
「何ですって」
あゆみはアンバー・アイの顔を警棒で殴りつけた。
「まあ、落ち着きたまえ。彼らの言っていることは正しい」
少し離れた場所で椅子に座り、あゆみの尋問を聞いていた男が言った。男は骨格のしっかりした少しえらの張った顔立ち。あゆみと対象をなすように眉は太く、唇は厚い。髪は短く、レイヤーがかかっている。クリーム色の背広とネクタイを着用している。
「聞けば、彼らの行く手を阻んだ女は、前にアクア・アイを倒したばかりか、レッド・アイも一発殴っただけで倒したと言うではないか。それほどの者に対してなら、彼らの退避機能が働いてもおかしくはない」
「でも、少々頭が悪すぎるわ」
「頭が悪いのではない。命令に忠実なだけだ。万一、交戦して相手にアンバー・アイたち全員を倒されてみろ、組織は大損害だ。レッド・アイの在庫はあるが、彼らの在庫は少ない。無用な戦いはさけて当然だ」
「こそこそ逃げ帰るようなサイボーグなら、作るだけ金の無駄だわ」
「そうは思わないね。むしろ、相手の女が何者かだ。アンバー・アイ、レッドアイを倒した女は、瞳と髪の色が青緑色に変わったと言ったな」
「はい」
「相手もサイボーグかもしれないねぇ……」
「八十神が組織に対抗するためにサイボーグを作ったとでも?」
「八十神は脱走時に開発中だったαⅢ型の設計図と部品を持ち出していた。もしかしたらその女は、八十神が作ったサイボーグかも知れない」
「サイボーグを作るには人間と言う素材が必要よ。しかも、生きている人間か死後一時間以内の人間でなければならないわ」
「誰かを殺したんだろう。我が組織のサイボーグは全て八十神が設計したものだ。今更、人一人殺すのをためらう奴ではあるまい」
「これからどうするの?計画の日は近いわ。八十神を殺さない限り、組織に安泰の日はないわ」
「八十神側のサイボーグの能力がわからなければ、むやみにサイボーグは使えない。彼らは計画の中心だ。アクア・アイら二体を失った今、これ以上損害は出せない」
「それじゃあ、どうするの?」
「マルス(MRSU)を使おう」
「あれを?八十神が研究途中だったものよ。まだ、実用段階じゃないわ」
「構わん。あれなら、手っ取り早く殺し屋が作れる。組織の被害も少ないしね」
男は薄気味悪く笑って、言った。




