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6 歩道橋
歩道橋の上から、喜美子は次々と流れ行く幾つものヘッドライトの光を目で追っていた。
夜空はいつしか冷たい小雨を降らせていた。
「少しは落ち着いたか」
智也が缶コーヒーを両手に一つずつ持って、現れた。
「うん……」
喜美子はちらりと智也に視線をやって、言った。
「ほれ」
智也は手にした缶コーヒーを喜美子に軽く投げた。
喜美子は片手で受け取る。
喜美子は智也の胸でいつになく泣いたため、目のまわりは真っ赤になっていた。
喜美子は缶のプルトップを取り、熱いコーヒーを口にした。
「たった一週間なのにいろんなことがあったね」
「そうだな」
「智也が駅で追いかけた女、どうなったの?」
「見失った」
「ドジね」
「うるせえな」
「明日、学校サボっちゃおうかな」
喜美子が空を見上げて、言った。
「サボっちまえ、サボっちまえ」
「やーめた。それじゃあ、智也の同類だもんね」
「何だと。さっきは俺のこと立派だって言ったくせに」
「嘘よ」
「生徒会長が嘘ついていいのか?」
「生徒会長だってたまには嘘をつきたい時があるの」
喜美子はそう言うと、歩きだした。
「どこへ行くんだよ」
「帰るの。家へ帰って、宿題やらなきゃ」
「宿題ね。俺には関係ねえや」
智也は喜美子の背中を見つめて、呟いた。




