5 取引
午前二時、横浜海浜公園に四つの影があった。三人の賊と後ろ手に手錠をされた弘田香奈子。
四人は園内の中央広場にある噴水にいた。
三人の内、一人は白髪の、赤い目を持つ少女レッド・アイ。二人目は焼却炉で喜美子たちを襲ったアンバー・アイ。三人目は病院で香奈子を誘拐した紫色の目を持つ少女モーブ・アイであった。
八十神さん……
香奈子は八十神に来てほしくないと言う気持ちと八十神に会いたいという気持ちが錯綜していた。
「もうすぐ二時だ。八十神はまだか?」
レッド・アイが周囲を見回した。
「八十神さんは来ないわ」
香奈子が言った。
「女は黙ってろ」
モーブ・アイが言った
「アンバー・アイ、その辺を捜してこい」
レッド・アイが命令口調で言った。
「まるでリーダー気取りね、レッド・アイ。クローンのくせに」
「何」
「私はあなたの指示は受けないわ」
「私も同じだ」
モーブ・アイも言った。
「人間相手に仲間を見捨てて逃げ出したおまえに意見を言う資格はない」
「むっ」
アンバー・アイは唇をきゅっと結んだ。
「私が見回ってくる。おまえたちは女を見張っていろ」
レッド・アイがそう言うと、林の方へ歩きだした。
「誰か来たわ」
アンバー・アイが言った。
遠くから一人の女性が歩いてきた。
女性はアンバー・アイたちの方に向かって歩いてくる。
「女だ。八十神じゃない」
レッド・アイが目を細めた。
「待て、あの女は」
モーブ・アイの顔つきが変わった。
「あいつだ、アクア・アイを倒したのは」
アンバー・アイが表情を変えた。
「何だと」
やがて、女性――日高裕美がアンバー・アイたちの前に来た。
「おまたせ」
「八十神はどうした?」
レッド・アイが尋ねた。
「博士は来ないわ」
「むっ、騙したのか」
「案内するわ。その前に弘田さんを解放して」
「それはできんな。八十神の居場所に案内してからだ」
「解放が先よ」
「立場がわかっていないのか。案内しなければ、この場で女を殺す」
レッド・アイが自分のそばに香奈子を引き寄せた。
「逃げて。私のことはどうなってもいいから」
香奈子が裕美に言った。
「弘田さん、博士にとってあなたは大事な人。絶対に助けます」
裕美が優しく言った。
「あなたは一体……」
「私を無視するな。本当にこの女を殺すぞ」
「何それ。脅してるつもり?量産タイプよりそちらの方たちと交渉したいわ」
「貴様っ!!」
レッド・アイが裕美に殴りかかる。
「待て!やめろ」
モーブ・アイが叫んだ。
裕美がレッド・アイのパンチを片手で受け止めた。そして、そのままレッド・アイの拳をつかむと、一気に握りつぶした。
「何者だ、おまえは」
レッド・アイは驚愕した。
「パワー・セーブ、オフ」
裕美が呟いた。すると、彼女の黒い瞳と黒い髪が青緑色に変わり、体が薄白いエネルギーの膜に包まれた。
「まさか……」
「その通り。私もあなたたちと同じサイボーグ、エメラルド・アイよ」
裕美はレッド・アイを殴った。一撃でレッド・アイの首が吹き飛ぶ。
「……」
二人の少女は転がったレッド・アイの首を見て、黙り込んだ。
「引き上げる」
「モーブ・アイ……」
「行くぞ」
二人の女はレッド・アイを残して、逃げた。
「逃げるな。命令違反だぞ」
レッド・アイの首が言った。
「もうすぐ自爆するわね。さよなら」
裕美は香奈子を連れてレッド・アイのもとから立ち去る。
「ま、待て。私を残していくな!!」
レッド・アイの叫びもむなしく、その数秒後、レッド・アイは自爆した。




