3 牢獄
「どう、囚われの気分は?」
薄暗く冷たい地下牢の前に医療用の白衣を着た女が現れた。女の特徴は一重瞼で、つり上がった細い眉、鋭角的な顎を持ち、鼻は高く、ウエーブのかかった長い黒髪を腰まで垂らしていた。
女の冷たい視線は牢屋の中で両手両足に手錠をかけられ横にされている香奈子に注がれていた。
「どうしてこんなことを?」
香奈子は目線を上げ、言った。
「どうしてですって?あなたが八十神の婚約者だからよ」
女が薄い唇に冷たい笑みを浮かべて言った。
地下の牢屋の高さは一メートル七十センチほどで背の高い人間なら直立できない。広さも四畳ほどしかなく、電灯が一つだけ灯る檻のような部屋であった。
「あなた、忠士さんのこと、知ってるんですか?」
「知ってるも何も一年前まで八十神は我々の仲間だったわ」
「仲間?忠士さんは七年前に失踪しているのよ」
「そう、その七年前に八十神を誘拐したのは我が組織なのよ」
「何ですって……」
「八十神は一年前、組織のアジトから脱走するまで、あなたの命を助けることを条件に六年間、我が組織の研究員として働いていたわ」
「あなたたちが忠士さんを」
香奈子は女を睨み付けた。
「初めて恐い顔したわね。全然迫力ないけど」
女は笑った。
「私を誘拐したのは忠士さんの居場所を聞き出すためね。でも、私は知らないわよ。仮に知ってたとしても、あなたたちになんか絶対教えないわ」
「あなたに聞こうとは思ってないわ。あなたは人質だから」
「どういうこと?」
「取引は進んでいるわ。今夜、七年ぶりに再会できるかもね。最も八十神があなたに会う時、あなたは死体になっているだろうけど」
「このけだものっ!」
「何とでも言うがいいわ。我々にとってあなたは所詮、八十神を捕らえる餌に過ぎないんだから」




