12 帰宅
「ただいま」
「よぉ、遅かったじゃん」
喜美子が自宅に帰ると、玄関に智也が出迎えた。
「弘田さんは?」
「弘田さんは病院に行ったよ」
「病院って……病院に戻ったの?」
喜美子は驚いた顔で言った。
「心配すんなって。別の病院だよ。親父が手配してくれたんだ」
「もう脅かさないで」
「何だよ、今朝は彼女を追い出したがってたくせに」
「人聞きの悪いこと言わないで。あたしはただ……もういいわ。それでお父さんは?」
「親父は弘田さんを病院へ送ったら、そのまま仕事に行っちまったよ」
「そう。結局、警察沙汰にはしなかったのね」
「彼女がそれを望んでない以上、立件は無理だって親父が言ってたぜ」
「どうして?」
「被害者の弘田さんが誘拐されてないって主張したら、誘拐は成立しないだろ。誘拐そのものは未遂に終わってるわけだから」
「犯人は拳銃を持ってたわ」
「でも、発射はしてないから、それが本物とは限らないぜ。銃刀法では無理だな」
「あたしたちを脅したわ」
「それも未遂だろ。こっちは何も被害を受けてないからな。最も恐喝を立証する証拠がないから、警察が動いてくれるかどうか」
「智也、どっちの味方なのよ」
「弘田さんの味方さ」
「やな奴」
喜美子はムスッとして、二階への階段を上がっていった。
「それより、喜美子、腹減ったよ」
智也が見上げて、言った。
「カップラーメンでも食べてれば」
喜美子が階段の途中で、振り向いて言った。
「冷てぇな」
「あたしはこれから出かけるの」
「どこへ?」
「学校」
「今、学校から帰ってきたんだろ」
「日高さんと午後九時に待ち合わせしてるの」
「え、裕美と?俺も行くよ」
「何で?」
「だちだからさ」
「……」
喜美子は渋い顔をして言った。「あの子、転校生じゃなかったわ」
「転校生じゃないって?」
「正体はわからないけど、うちの学校の女子生徒の失踪事件を調べてるみたい」
「へえ」
智也が感心した様子で言った。
「何よ」
「おまえが先生に言わないなんて珍しいな。普通、そういう生徒がいたら、すぐ先生に言うだろ」
「あたしもそのつもりだったけど、生徒の失踪事件のこと、あの子、何か知ってるみたいだから」
「やっぱり俺もついて行かなきゃ駄目だな」
「なぜに」
「そんな怪しい生徒なら、おまえ一人じゃ危険だろ。大事な姉貴をむざむざ危険にさらせるか」
「単に会いたいだけでしょ。どうぞご勝手に」
喜美子はそう言うと、階段を上って自室に入っていった。




