9 再会
昼休み――
「あーっ、智也のせいで全然授業に集中できなかったわ」
喜美子は教室を出ると、食堂へ向かう友人の誘いを断って、校舎一階の購買部の前にある公衆電話へ向かった。自宅へ電話をかけるためである。
公衆電話のところへ行くと、既に先客がいた。
「あっ、前田」
電話を先にかけていたのは喜美子の友人の前田寛子であった。寛子は喜美子が一年の時のクラスメイトである。
寛子も喜美子に気づいて、電話をしながらアイ・コンタクトを送る。
数分して寛子は受話器を電話に戻した。
「久坂じゃない、何か久しぶり」
寛子が喜美子を見て、言った。
「ホント、同じ学校なのに、クラス変わっちゃうと、全然会わないものね」
「元気でやってる?」
「まあね。前田は?」
「あたしは元気よ。そういえば、智也とはまた同じクラスなんだよね。あいつ、ちゃんと学校来てる?」
「相変わらず、いいかげん。今日もサボってるし」
「智也らしいわね。去年も出席日数ぎりぎりで進級したのよね。あっ、電話、使うの?」
「うん」
「それじゃあ、今度、電話してよ。久しぶりに話したいし」
「そうだね」
「じゃあ」
「あっ、前田、ちょっと待って」
喜美子は電話の受話器を手に取ったところで、食堂へ行こうとする寛子を呼び止めた。
「何?」
「前田って確か、A組だったよね、クラス」
「そうだけど」
「転校生が入ってきたでしょ」
「転校生?」
「そう、確か名前は日高裕美って言ったかしら」
「何言ってるの。転校生なんてうちのクラスには入ってないわよ」
「え?本当に?」
「違うクラスじゃないの」
寛子は笑った。
確か智也は二年A組だって言ってたと思ったけど。
「じゃあ、行くね」
「またね」
寛子は喜美子に小さく手を振って、去っていった。
「日高裕美……彼女のこと、生徒課で調べてみようかしら」
喜美子は受話器を電話に戻し、呟いた。




