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転生ガチャ~悪役令嬢の後日譚  作者: 帆船
第四章:再生
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【文明開化】

 中村さんが用水路の規模見積もりや水門の強度計算をしている間に、ガラムはクララ用試作『鉄騎』に改造を施してた。

 『七速クロスレシオ』にするだの『タービン出力を上げる』だのは私にはよくわからないけど『理論上は時速二百キロ巡行が余裕』で『最大時速三百キロ』と聞いて女神の加護の刻印魔法を刻んでもらう事にした。とても七歳児が出していいスピードじゃない。

 クララはこの試作機に『アイバ』という愛称を付けた。『愛馬』かと思ったら前世での推しなんだって。なんだそりゃ?


 さらにガラムは『鉄騎』の二号機として『教習車』を作り上げた。スペックを落として、その分操作を習熟しやすくセッティングした上で、二座にして後ろは指導教官が乗る。


 ここでベグから珍しくおねだりがあって、ぜひ自分用の『鉄騎』が欲しい、と。なんでも赤兎馬についていくのが年々つらくなってきてるそうだ。中村さんの発明って事は公にできないから、騎士団への教習は私がやらなきゃと思ってたんだけどそれを代わりにベグが引き受けてくれるという。

 取り合えず適正を見る。作ったばかりの『教習車』を使って中村さんに教習してもらった。思った以上に筋がよかったらしい。なのでガラムに頼んで高性能機を一台作ってもらう事にした。



 そんな事をして過ごすうちに中村さんの用水路の規模見積もりと水門の構造計算が終わった。水門の設置はガラムの主導でステアの職人たちが行なってくれる事になってる。すでに夏になっていたが規模の見積もりができなければ用水路を作り始めるわけにもいかない。幸いにも今年は割と雨が多かったから無事に稲作が進んでる事を祈ろう。


 王都から南下して川を渡ったあたりに学生三十人が集まっていた。なんでも前回の成果を見た先生が特別課外カリキュラムとして単位を認定することにしたせいらしい。騎士団長の指導の元、幅約十メートルの水路が掘られていく。中村さんが事典で調べてくれた『見沼代用水』の江戸時代の設計を元にしたらしい。そう言えば私が小学校の社会科見学で見に行ったのコレだったよ。

 逆サイホンの原理を使った立体交差(川と立体交差する構造を『伏越』というらしい事も事典でわかった)についても事前に騎士団長に説明して作ってもらう。


 その間にガラムが主導して取水口と水門の工事が行なわれた。これも江戸時代の用水路の資料をかなり参考にしてる。


 『国道』をくぐった先にいったん大きな貯水池を作り、そこからは大河に沿って全長百二十キロの用水路を作っていく。最終的には海に流れ出すようにした。全部の用水路が掘り終わったところで取水口の水門を開く。水は順調に流れて『国道』の下をくぐり、貯水池に貯まる。そこから下流に流れ出して、春に田んぼを作った村まで安定して水が届くようになった。


 一番暑い時期には間に合わなかったけど来年からは役に立ってくれるだろう。ちなみに中村さんの見積もりでは田んぼ一万枚はまかなえるそうだ。現状はいいとこ数百枚だと思うんだけど、将来的な増産を目指して多めに見積もってくれたそうだ。実はコッソリ期待してるのがマリアでステアで日本酒造りを進めるつもり満々だった。



 ガラムが仕事を早く済ませたのはやっぱりというか『鉄騎』のほうが気になってたからのようだ。改良された『アイバ』の評価を聞いたあと、量産に取り掛かってた。最高時速百五十キロに抑えて過剰な耐久性を適正にすることで重量減とコストカットを行ない、合わせて操作もクララの試作機よりは扱いやすくしたそうだ。

 『アイバ』は性能重視過ぎて操作性がピーキーだったそうだからね。中村さんが前世でバイク乗りだったからこそ扱えてたのであって全く知識の無いひとに扱わせるのは無理があるって事らしい。


 そして私はと言うと『教習車』を使って『鉄騎』の乗り方をクララから習っていた。シフトペダルの操作とクラッチ操作が難しかったけど、一通り乗りこなせるようになった頃にガラムの量産型が出来たので乗ってみる。黒猫馬車には十分使えそうだけど、魔道騎士団は道もないところを切り開きながら進軍するんでちょっと需要とミスマッチしてる感はある。アレックス騎士団は領内の『国道』をイッキに駆け抜けて現場に急行したい時には役に立ちそう。あとは伝令だね。


 ベグの為の高性能機が完成して、彼は『八十六号』と名付けた。こらこら、なんでそこでその数字が出てくる?聞いたら、初陣から乗り継いできた馬の八十六番目だそうだ。ベグも乗り継いできた馬の数を数えてるなんて妙なところで几帳面なんだよね。コイツを最後の馬にする、って言う決意を込めたそうだ。なんだかね。


 それからガラムが量産に取り掛かる事になったんだけど、ここで相談を受けた。


「姫さん。作るのはいいんだが、そろそろ俺一人じゃ量的にツラくなるな。シフトに生産拠点移してマサラと一緒にやりたいんだがどうだい?」


 ドワーフ職人は仕事に誇りを持っている。だからこそ『できない』事を『できる』とは絶対に言わない。そのガラムが一人ではツラいというならガラムの労力はいっぱいいっぱいなんだろう。


「マサラがいいって言うなら私はOK。ついでに『鉄騎』の生産拠点もシフトに移しちゃおうか?」

「姫さんが決めてくれ、俺は構わねぇ」

「あとさあ。秘密は守れる前提で、部品(パーツ)だけ人間の職人に作らせたらどうかな?例えばこのブレーキレバーだけとか鞍の部分なら構わないと思うんだけど」

「そうだなあ。人間の職人ってもピンキリだからなー。まあマサラのヤツが信頼できる水準の職人なら仕事的には問題ねえだろうが」


 そうして場所をシフトに移して量産が始まった。すでに数騎が完成してる。

 まあ今のところ、指導教官はベグしかできないんだけどね。


 準備ができたところで、騎士団長とハニャス先輩をシフトに呼び出した。今日は『鉄騎』のお披露目の日だ。シフトを治めるトーケ先輩やシフトから王都への黒猫馬車を動かす御者にも集まってもらった。


「これはステア子爵マリアが考案した鉄の馬で『鉄騎』と名付けました。魔石があれば餌もいらず、定期的な点検は必要ですが馬の世話とは比較にならないほど省力化できます。そして一番重要な事ですが、例の飼い葉を使った馬の全速力よりも速く走ります」


 おおっ!とどよめきが起こる。


「では実際に動くところを見てもらいましょう」


 私が視線を送ると頷いたベグが『鉄騎』を起動する。


 フンフンフンフンーーーーーーッ


 ベグは見物客の周りを何周かすると街道に出て速度を上げていった。見送る見物客たちはみんなポカンとしてるよ。小一時間経った頃にベグが戻ってきた。後ろには顔色の悪いナツヒ先輩。


「エリザベス嬢、我が女神様。酷いじゃないか!迎えに行くから待ってて欲しいとは聞いてたから待ってたけどこんな迎えが来るとは聞いてないっ」


 あはは、ごめんね。でもベグが小一時間でナツヒ先輩を連れてきた=小一時間でクランクまで往復してきた何よりの証拠を見たシフトの見物客たちは驚愕していた。


我が主(マイマスター)、これは……私のような年寄りには扱いが難しそうですなあ」


 という懸念は騎士団長から。当然想定済みなんで『教習車』がある事と、教習に当たるためベグが操作に習熟してる事を伝える。


「エリザベス嬢、これは魔道騎士団では運用が難しそうだね」

「見て分かる通り、この『鉄騎』は道路が整備されてる前提で作られてますからね。道なき道を切り開きながら進む魔道騎士団では使える場所は限定されると思ってます。例えば伝令や既存道路がある場所での輸送に限られるでしょうね」


 ハニャス先輩の疑問は私も思ってたところなんでそう伝える。


「黒猫馬車の御者たちはぜひ早めに習得するように。この『鉄騎』であれば慣れた者ならば朝出発すれば昼には王都に着けるようになるでしょう。そうすれば冷凍ではなく冷蔵で鮮魚を運べるようになります。今までの五倍でも売れるようになるでしょうね。その際には御者の賃金も引き上げる事を約束します」


 これは誇張でもなんでもなく、朝六時に水揚げして八時までに下処理すれば十時過ぎには王都に着くと見積もれる。町の住人からはドヨメキがあがった。


 ガラムとマサラが労力を全部割いてさらに人間の職人たちに一部の部品を作らせる事で、月に四台の『鉄騎』が生産可能と分かった。

 取り合えず、アレックス騎士団と魔道騎士団に各五台。黒猫馬車用に四台。それから馬が苦手で移動に時間がかかるトーケ先輩の専用機の十五台をまずは作る事にした。『教習車』は、シフト・ダンパー・ペダルの各拠点で使いまわす予定。『教習車』を増やす話もあったんだけど、現状では教えられる人間が少ないためこの案は後回しになった。


 こうしてこの世界の交通はまた一つ進化していく。流通が進化していけば国はより栄える。イケオジは見ててくれるかな。


反応があると励みになります。よろしければリアクションや感想等いただけると嬉しいです。

これからもお付き合いいただければ幸いです。

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