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転生ガチャ~悪役令嬢の後日譚  作者: 帆船
第四章:再生
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【稲作】

 年が明けて新年の祝賀会は大きく様変わりした。

 まず、名目上の主催者は今年七歳になる国王。後見人の王太后陛下。そして摂政の私。なんか王太后は私を見極めてやるって感じもあるけど、竜災害以来アクシオ侯爵家は父上との関係を強化してるからね。そんなにコワくない。

 実務面は宰相を筆頭に宮廷魔術師や騎士団長たちは当面変更なしで行く事にした。国王が魔法学園に入学するまでまだ八年ある。それまでに歳の近い側近候補を探す事になっている。


 父上はいつも通り参加、王都周辺のランクス侯やリーナ伯、それに数年前から参加してるアクシオ侯も参加。ここまでは今までと大きくは変わらないんだけどレクサス公が今年は完全ブッチ。新国王を認めないとでもいう態度だった。その代わりというわけでもないが、今までセルシオとレクサスに挟まれて身動きが取れなかったアリオン伯爵も参加を希望してきた。


 そしてセレス伯爵としてのクララと後見人のマリア。中村さんには申し訳ないけど国王の遊び相手になってもらおう。

 内心はともかくマリアの事を『平民あがり』などと公然と見下す人間はこの場にはいない。なにせ第二王子を作ったのはマリアの薬があってこそだとみんな知ってるからね。なんか『伝説の薬師』みたいに思われてるっぽい。あとここにいるおじさんの何人かは『ハッピーストライクLite』のお世話になってる事を私は知ってる。


 薬の供給を止められたら困る貴族ほどマリアを丁重に扱ってるのは内心見てて笑えるけど、それはそれ。今年から恒例の船盛はステア子爵に任せてるし。



「はあつかれた。田中さんって毎年あんなつかれる催しに参加してたの?」

「そうだよ。そこの酔っ払いは去年までは寝正月決め込んでたけどね」

「なんだよぅ、二人して……呑みが足りないぞ、酒持ってこーい」


 クララと二人で顔を見合わせる。


「そんな事言ってていいのかな?アレックス領の稲作、今年は再開できそうなんだけど?」


 ガシっ、と肩を捕まれる。


「そーゆー事は早くいいなさいよね。ステアの酒蔵、手直ししとかなきゃ」

「ねえクララ。これが『ダメな大人』ってヤツね」

「うん、知ってた」



 春を前に私は母校を訪れていた。目的はアレックス領の稲作。田んぼづくりに土属性と水属性の使い手が必要だった。さすがに魔道騎士団を動かすのは公私混同になるから、私は学園に話を持ち掛けた。

 対応してくれたのは当時の担当の先生と狸親父(中身はイケメンエルフ)の校長先生。子爵の小娘に比べて公爵にして摂政ともなると待遇が大きく変わるねえ。心配しなくても私は学園に文句付けるつもりなんかないのに。むしろ学園の卒業生は国の大切な宝だ。


「なるほど。そういうお話ですか」

「ええ、指導者はいますので、こちらの学生さんにとっても悪くない話だと思いますけれど」

「ちなみに、その指導者というお方は?」

「魔道騎士団の元副騎士団長、私の招聘に応じて我が領に来てくださいましたの。今はアレックス公爵家騎士団の騎士団長をお任せしてます。今回、ダンパー子爵位を新たに賜りました」

「!!!」


 そりゃビビるよね。元総騎士団長だもん。魔道騎士団が遠征先で即座に畑を作り数日後には自給できるのは割と有名になってるし、そのノウハウを一部でも得られるとなったら希望者は絶対にいるだろう、と踏んでた。


 結局、十人の志望者がアレックス領のに西側に来ていた。って言うか先生、講義はどうしたんすか??


「フィールドワークも大切な仕事ですから……」


 この辺は魔人による瘴気災害で田んぼがすっかり荒れ果てていた。まずは騎士団長の指導の元、整地がなされる。次に畔づくり、さらに水魔法で水を張って土魔法で代掻きを行なう。シフトから呼んだ職人たちが祠を作り、中にマサラが刻印を刻んだ女神石像を設置していく。これで農薬や肥料がなくても女神像に豊作を祈願すればいい。最初は半信半疑だろうけど、信仰が篤い人の田んぼのほうが明らかに収量が多いことが分かれば信仰も増えていくだろう。


 約三十メートル四方の田んぼ一枚が『一反』に当たる。学生たちの魔法技術では一日に五枚作るのが精いっぱいだ。それでも本来の作業量からしたらとんでもないんだけど。四日かけて二十枚の田んぼを作って最初の実習は終わりになった。


 実際に田んぼを作る人に聞いたら『水が足りない』との要望があった。なるほど。米作りには水が大切、って話は聞いたことがある。うーん、いっそ用水路でも作るか?だとしたらそれも大工事になるな。


 クララに相談するためにアクセルに来た。正式にセレス伯爵になったんで最近は領地にいる事が多い。マリアはステアでも仕事があるんで、そういう時は異世界人だと知ってる誰かがついててくれる事になってる。

 とは言え、ドーバは王都のお店があるし、ミナも王都屋敷の切り盛りで忙しい。必然的にガラムたちが傍にいる事が多いね。ガラムとしても百科事典はお宝だし。


「っていうワケでさあ。クラッチの近くから用水路を引きたいんだけどね」

大河(タイガ)だからトラって名前、絶対にふざけてるよね?」


 あー、中村さんそこに触れちゃったかあ。私も鈴木さんも気づかないふりしてたのに。こういうトコいい加減だから炎上したんだよ、あのゲーム。


「それはともかく力を借りたくてね。まずどのくらいの広さの用水路を作れば下流の田んぼの水量がまかなえるのか見当がつかないのよ。

 それと川から用水路に水を引き込む所に水門を作りたいんだけど、確かものすごい力がかかるんだよね?構造計算とか設計とかしてもらってガラムに作ってもらえると助かるんだ」

「いいよ。田中さんには今まで色々と助けてもらってるし」

「あとさあ。先に『国道』作っちゃったじゃない。用水路を『国道』の下をくぐらせたいんだよね。小学校の社会科見学で川と用水路の立体交差を見て感動した事あるからできるんだと思うけど?」

「ああ、それは逆サイホンの原理だね。簡単だから今実験してみる?」


 中村さんはそういうと和紙になにやら図面を描き始めた。


「ねえガラム。悪いんだけど、これ作ってくれないかな?」

「こりゃ、元からあるコップを使ってもいいんだよな、クララの嬢ちゃん?」

「うん。この屋敷で古くなったコップを使用人からもらってくれればいいよ」

「んならワケねえや。ちょっと待っててくれ」


 小一時間で戻ってきたガラムが手にしてたのは二つのコップが下のほうでチューブでつながった謎の物体だった。

 クララは机を二つ並べるとそれぞれにコップを置いた。


「この机の間に『国道』が走ってるとするでしょ?」


 ふむふむ。


「こうして水を注ぐと……」


 片方のコップに水筒の水をザザーっと注ぐ。


「はっはあ。コイツぁすげーや。これだから異界の知識ってのはたまんないだよなー」


 片方のコップに注いだ水はチューブを通って反対側にも流れ込んでいた。


「田中さん、石油ポンプ使った事あるでしょ?」


 あのキュポキュポするやつかな?


「うん、それがサイホンの原理ってヤツで本来の水位よりも高いところを通して別の容器に水を移すの。

 で、こっちは逆に下を通すから逆サイホンの原理って言われてる」


 そう言えばあの石油ポンプ、なんで低いところから高いところに石油を通せるのか不思議だったんだよね。


「用水路の規模は、田んぼの面積が分かれば見積もれるから地図に稲作地帯を書き出してくれる?それで用水路の規模が決まれば水門にかかる力も計算できるから、任されるよ」


 ところで、とクララは言った。『こっちの仕事のが優先度高いから、まだ試作段階だけどお披露目しちゃおっか?』……

 それに対してガラムは『お、そうだな』と答えて二人して悪い笑顔をしてる。


 いったい何を見せられるんだろう?


反応があると励みになります。よろしければリアクションや感想等いただけると嬉しいです。

これからもお付き合いいただければ幸いです。

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