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転生ガチャ~悪役令嬢の後日譚  作者: 帆船
第三章:国難
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【大逆罪】

 東の竜騒ぎの対策に何か月もかかり王都に戻ってきたときにはすでに年も明けていた。今日はドーバのお店でお疲れ様会だ。でもさあ。なんで私持ちなんだろうね?


 現場で頑張ったハニャス先輩とナツヒ先輩に加えて後方から支援してくれたマリアやトーケ先輩も呼んでる。特にトーケ先輩はピラー子爵にあらかじめ根回ししてくれてたんで交渉事がスムーズに進んだ。

 その他には近衛騎士団長に宰相や筆頭宮廷魔術師までいる。ドーバのお店は、政治的な密談の場ではなく純粋に料理を楽しんでもらいたいって想いから個室はないんだけど今日ばかりは人には聞かせられない話が沢山出るだろうから申し訳ないけど貸切にしてもらった。お店で働いてるのはドーバ以下、私の信頼のおける使用人ばかりなんで口止めは忘れずに。


「しかしあの火竜は自分を『一柱』と言ったのだろう?とするとホントに龍神だったのかもしれない」

「たしかになあ。エリザベス嬢曰く『火竜の祖』と言ったそうだし」

「しかし被害も多かったですからね。無条件では喜べないですよ」

「何を言ってるんだ、エリザベス嬢。女神リザ様が龍神と交渉し、堕ちたカヅチも滅してくれなければ比べ物にならないほどの被害だったじゃないか」

「魔道騎士団は幸いにも被害はありませんでしたけど、神官騎士たちは負傷者救護で魔法を使い過ぎて何人も魔力切れを起こしたでしょう?」

「ああ、不甲斐ない事だね。みんな信仰心がまだ足りなかったって反省しきりだよ」


 騎士団の被害も大きかったんですよね?


「ナツヒ司祭以下、神官騎士たちのおかげで負傷者はいましたが殉職者は出ませんでしたから。ただ……騎士を続けられなくなった者たちはおりますね。恩給の手続きで宰相殿はしばらく忙しくなるでしょう」

「ははは。大した事ないですよ。それより大変なのはレクサス公でしょうなあ」


 そう答えたのは宰相だった。実はセルシオ公爵家は直系が全員犠牲になっていてお取り潰しになってる。だからそっちのほうが大変ではあるんだけど、みんな暗黙のうちに話題を避けてる。


「レクサス騎士団は戦功を焦ってかなりの被害が出た様子でしたね」

「よほど東の地が欲しかったのでしょう。不毛の大地に進出できれば様々な資源が眠っていそうですからな」


 例えば魔石とかかな?この世界の人たちが湯水のように消費してる魔石だけど、アレ実は太古の昔に死んだ魔物が結晶化したものらしい。鈴木さん曰く『石油や石炭みたいな化石燃料のようなモン』だそうだ。今のところ枯渇の心配はないけど、東部は不毛の大地に近い分、魔物の出没も多く、魔石採掘量も多い。


 他にも魔物素材も武器や防具になるためいい財源になるんだそうだ。


「しかし、東部に出る魔物はこれから減るでしょうからな。レクサス公も徒労に終わるでしょう」


 とは筆頭宮廷魔術師の言葉。なぜに?


「ほら。ナツヒが今回、女神リザの木像をばらまいただろう?だから魔物の出現は減ると考えられるわけさ。上手い事やりやがってこの野郎」

「こらハニャス、肩を殴るな、痛いだろうが。まあ旧セルシオ領で大量の信者を獲得できたのは否定しないよ。それに我々の信奉する女神様が龍神と盟約を結んだのだろう?不毛の大地から侵入してくる魔物は低位の知能の低いものに限られていくだろうね。当然、素材としての価値も下がる」

「しかも陛下のお慈悲でね。セルシオ領で配った分を聖都での売り上げ数から免税してくれることになった。カスミ教への実質的な報酬かな」


 なるほど。カスミ教は政治とは距離を置く事を徹底してる。今回は非常事態だから参戦したけど、恩賞はもらいたくないんだね。


 それにしてもあの大量の女神木像かあ。毎年クランクへの巡礼者が増えそうだよね。ピラーからリーナ伯のサスの街の間を『国道』でつなげば便利になるかなあ?

 そうそう。ピラーと言えば、今回設営した前線基地はそのままピラー子爵に下賜される事になったそうだ。合同討伐隊を後ろで支えてくれた功績だって。


「ああそれから。アレの父親には伝えておきましたよ。黙って説明を聞いていて最後に一言、『そうか』とだけ」


 アレとはもちろん竜人の事。あの竜人がカヅチだって知ってるのは近衛騎士団長の他には私とハニャス先輩、ナツヒ先輩だけだ。だからこんなぼかした言い方をしてくれたんだろう。『はあ』と誰かがため息を漏らす。


「そんな事よりですね。エリザベス様の『荒魂(あらみたま)』ってどうだったのか是非kwsk」


 なんでマリアがそんなに興味深々なんだよ?


「だって私はエリザベス様のオカンだもの(キリッ)」


 ついに自分から公表しちゃったよ、この人。先輩たちも『うん、知ってた』って顔しないっ!


 そこからはナツヒ先輩の独壇場。もうこれでもかってくらい女神様について語る、語る。しかも合間にハニャス先輩が魔術師の観点から補足を入れるんでお店に集まったみんなで大盛り上がりだった。


 筆頭宮廷魔術師が、面白い実験動物を見つけたみたいな目でこっちを見てるのがとてもコワイ。



 そんなこんなで大盛り上がりだったお疲れ様会からひと月後。ドーバから話がある、と言われた。


「店で酔った客が大声で国王弑逆の話をしておりました。ただの妄言なら良いのですが一言お知らせを、と思いまして」


 絶句したね。なぜかって?心当たりがあるからだよ。ドーバのお店は政治的な密談の場にして欲しくないからって理由で個室がない。だからってまさかオープンスペースでそんな話するやつがいるとは普通は思わないじゃん。犯罪自慢が許されるのは不良中学生までだよっ!

 でもね。そのまさかが結構いるんだよねえこの世界。おかげでドーバの店は時々諜報部門みたいな情報が入ってくる。間諜を雇う必要がないのはいいんだけどさ。ドーバには余計な負担をかけてる。


 それはそれとしてこの情報は見過ごせない。お店の入店記録からこの大馬鹿野郎の名前は分かってる。もちろん偽名の可能性もあるけど。

 そんなワケで陛下の寿命の事を知ってる近衛騎士団長に面会してことの経緯を伝える。宰相も知ってるとは思うけど一応ね。


 後日、屋敷に宰相が訪ねてきた。お店の定休日だったのは狙っての事だろう。案の定、ドーバは呼び出されてその客の特徴や同行者について根ほり葉ほり訊かれていた。後でちゃんとねぎらわないと。

 帰り際に宰相が深いため息を付いてた。こりゃなんかあるなあ。


 三か月後、大逆罪でレクサス公爵配下の準男爵が処刑された。三か月もかかったのはよほど裏付け捜査を念入りにしたためだろう。

 その処刑は断頭台のほうが百倍はマシってくらいの残虐刑だったよ。この世界じゃ割と当たり前だけど現代日本の価値観が残ってるとちょっと引く。しばらく牛肉のステーキは食べたくないね、ぶも~~♪


 この罪人、元はレクサス公爵令嬢付きだったそうだ。自分の仕える姫が王妃になって贅沢三昧を夢見てたところに王子廃嫡からの婚約破棄で王家に逆恨みしてたらしい。元王子については逆恨みでもないか。だからって国王弑逆まで考えるのはさすがに行き過ぎだったね。

 国王にかけた呪いについては解呪させたものの、すでに喰われた寿命は戻らなかったそうで、残り二~三年の余命を五~六年に延ばすのが精いっぱいだったそうだ。


 そしてレクサス公爵は旧セルシオ領に移封になった。

 事が国王弑逆の大罪だからね。場合によっては族滅もあり得る事態だった。今回は準男爵の個人的な暴走だった事やセルシオ公爵家が断絶した直後でレクサス公爵家まで取り潰してしまうと公爵家が父上だけになる事から政治的な判断でこういう決着をしたらしい。

 なんでも『自決して家督を譲る』か『移封を受け入れて旧セルシオ領の立て直しに尽力する』か選択を迫られて迷うことなく移封を選んだらしいんだけど、野心家のレクサス公の事だ。きっと不毛の大地への進出でも考えてるんだろう。残念ながらそれはできないんだけどね。


 レクサス公爵令嬢は監督不行き届きで十年間の謹慎処分、謹慎場所は父上が買って出た。また押し付けられたどうしようかと思ってたんで助かる。レクサス公爵令嬢は私の一つ年上だから今年二十五歳のはずだ。十年経つと三十五歳になる。世継ぎが厳しくなるねえ。

 なお宰相からは言外にやんわりと"レクサス公爵家に『ハッピーストライク』は渡すな"と言われてる。どうやら国王は政治的理由で取り潰しはできなかったけどかなりご立腹らしい。商人経由で『ハッピーストライクLite』は手に入るだろうけれど、レクサス公爵が新しい子どもを作るのは難しいだろうな。

 これで父上とレクサス公の立場関係も大きく変わるね。


 さて、レクサス公が移封になった直後、聖都から発信があった。


 『先の竜災害において我らが女神リザ様と龍神の間で相互不可侵の盟約が結ばれた。

 この盟約が守られる限りこの国に竜の災いは起きないであろう。

 カスミ教は龍神の治める地である不毛の大地への人の侵犯を許容しない』


 旧セルシオ領で女神木像を大量に配ったのがボディブローのように効いてるよね、コレ。彼の地の住民は女神の加護も龍神の脅威も実感してるから女神の加護を捨てる人はいないだろう。同様に龍神に喧嘩売ろうなんてのも一人もいないはず……訂正、過去に一人いたわ。


 レクサス公は王宮と教会が裏で密約を結んで梯子外しにかかったと思うだろうけど、残念ながらナツヒ先輩にそんな意図はない。

 そもそも独断専行せずにピラーの前線基地で合流してれば、あの地で女神像の布教を進めた事や私と龍神の盟約について事前に把握できてたはずだし、あんな大被害も出さなかっただろう。完全に自業自得なんだよ。



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これからもお付き合いいただければ幸いです。

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